CGかと思わせる華麗な運転技術で注目を集めた2代目いすゞ「ジェミニ」
軽快なワルツのリズムに乗って、2台のクルマが一糸乱れぬ華麗なドライビングでパリ市街を縦横無尽に駆け抜ける。“街の遊撃手”というキャッチコピーとともに、CGではない実車による衝撃的な映像こそ、2代目いすゞ「ジェミニ」を象徴するCMでした。後輪駆動だった初代から前輪駆動に変更され、当初「FFジェミニ」とも呼ばれた2代目を、新車購入から37年も所有し続けるオーナー、柘植智さんに話を聞きました。
欧州車のようなスタイリングに一目惚れ
柘植さんの愛車は、1988年式のいすゞ「ジェミニZZハンドリング・バイ・ロータス」だ。“街の遊撃手”という言葉とともに衝撃的なCMが流れてから、3年が経過した頃のことだった。
「街中で、この型のハッチバックのイルムシャーを見かけたのが、興味を持つきっかけでした。日本車なのに欧州車のような雰囲気に一目惚れし、絶対に買おうと思ったのです」
しかし、その当時、イルムシャーの新車販売は終了しており、1500ccのインタークーラーターボを搭載したイルムシャーは、中古車でも大人気だった時代。そんな矢先、排気量1600ccのDOHCエンジンを搭載したハンドリング・バイ・ロータスが発売されると知り、迷うことなく注文したのが現在のこの愛車だ。それから37年、柘植さんは浮気することなく、ずっとこの「ジェミニ」を所有し続けている。
カスタムで自分のスタイルを楽しむ
購入後、少しずつモディファイを進める中で、最初に目指していたのはドイツ車のようなスポーティ感だった。ホイールはディッシュ系、外装はロータスF1チームのJPSカラー。当時、多くの人が憧れたあの雰囲気である。しかし、ランチア「デルタ インテグラーレ」が登場した際、次なるステップへのアイデアが降りてきた。デルタ インテグラーレとジェミニは、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインを担当したという共通点もあり、そこから現在のスタイルを追求していった。
「エンジンはノーマルですが、CPUは当時のN1レース用に開発された専用品を使っています。外装は、ジェミニ専門のチューニングショップ、スピードガレージG5製のオーバーフェンダーや各種カーボンパーツを装着しています。ドアミラーやリアスポイラーは、デルタ インテグラーレ用の社外品を使っていますが、ハッチの傾斜が同じなので、ブラケットも含めてデルタ用が流用できました」
なお、オーバーフェンダーは4ドア用のベースに2ドア用に流用。ボディのアールに合わせて形状を変更し、リアバンパーステー部も継ぎ足すなど、自身の愛車のハッチバックにしっかりと合うように製作されている。
内外装、リアフォグなどにもこだわりあり
柘植さんの愛車には、ほかにもさまざまなカスタムが施されている。「ジェミニ」でこれほどまでにカスタムを追求したオーナーは、非常に貴重だろう。
例えば、リアハッチにはワンオフでカーボンが貼りつけられ、ほかのカーボンパーツはMRC製を使用。ドアノブはカーボン転写で製作され、ルーフアンテナは純正を取り外してパテ埋めし、マツダ純正用が流用されている。サスペンションは、フロントに車高調、リアは社外バネに変更し、乗り心地と車高のバランスを整えている。
さらに、トラック用のリアフォグを加工して流用し、F1風のリアフラッシャーフォグを装着。内装では、メーターパネルを純正配置のままカーボンで製作し、メーター類はスタック製に変更。追加メーターは大森製、ハンドルはランチアが当時使用していた製品の復刻品。ペダルとシートはスパルコで、基本的にイタリアのブランドで統一されている。
さらに、エンジンスタータースイッチも追加。ロールバーもジェミニ専用品を装着し、オーディオ類も、ウーファー、スピーカーなどをJBやアルパイン、ボーズなどに変更と、とても濃いカスタムが施されているのだ。
「今は普段使いはせずに、完全にイベント用になっていますね。そのため、通常はカバーをかけて車庫保管しています。でも、頻繁に乗ってあげないと調子を崩しやすいので、走る機会はできるだけ増やしたいと思います」
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