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メルセデス・ベンツの本革の最高品質は「2歳の南ドイツ産の雄牛」だった! こだわりのシート生地3種類を解説します

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz AG/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

メルセデスが独自開発した人工皮革「MB-TEX」とは

本革シートは天然素材を丁寧に加工する必要があるので、どうしても高価になる。その欠点を補うのは人工皮革と呼ばれる素材で、アルカンターラがお馴染みである。人工だけあって化学的に作られた生地となり、アルカンターラは東レが開発したことでも有名。バックスキンのような触り心地のものが多く、耐久性も高く、比較的安価に抑えることができるメリットがある。

さて、かつてメルセデス・ベンツは1960年代初頭から、独自に開発した合成皮革を製造し、「MB-TEX」という呼称でシートやインテリアに標準的な素材としてオプションで長年設定していた。それは革によく似ており、本革と間違われる事がよくあったが、はるかに耐久性があり、ひび割れや摩耗がなく持続性も良かった。

メルセデス・ベンツではMB-TEXをフェイクとも本革とも呼んでいなく、本革に見えて本革でもなく、しかも耐久性抜群という、クルマのインテリアとしてはちょっと例を見ない質感を持った素材だった。

ドイツ本国ではタクシー用車両に多数使用された。メルセデス・ベンツは信頼性が高く、同時に高品質でもあるのでタクシー用インテリアでも手を抜くことはない。そこで採用したのがこのMB-TEXである。

日本では代表的なモデルとして、メルセデス・ベンツの「Eクラス」(W124/1984年~1996年)、「190E」(W201/1982年~1993年)までのシートやインテリアにこのMB-TEXが布より数万円高でオプション設定されていた。したがって、顧客がこのMB-TEXを選択するとメーカーの受注生産となり、納期は数カ月待ち。

それほど待ってまで乗る理由は明白である。このMB-TEXは合成皮革だから、タクシーで酷使されても強い耐久性も持ち合わせ、手入れも非常に楽(ビニールクリーナー)。ペットボトルの水等がこぼれても、水拭き一発でサッと綺麗に。またペットの毛の掃除も楽である。

特に、サーフィン等マリンスポーツを趣味にしている「W124ステーションワゴン」オーナーには、海から上がってすぐ濡れたままでも気にせず乗り込めるので重宝された。本革シートと比較すると、多少厚くゴワゴワ感があったが、とにかく丈夫だったので、リプレイス需要が少なく、W124(1984年~1996年)あたりで早くも生産終了となった。当時のW124のMB-TEXカラーサンプルは10色用意されオプションで選択可能であった。

最近のメルセデス・ベンツのインテリアには「レザーARTICO」(登録商標)と呼ばれる人工皮革を用いている。これも言わなければ分からないだけの質感を持ち合わせている素材である。

* * *

本革というのは天然素材で本来限りのあるものである。そう考えると、量産品であるクルマのシートには布や人工皮革のほうが適しているかもしれないといえる。

クルマのシートは車内で大きな面積を占める部分で、直接身体を預けることになる重要な場所でもある。見た目だけで簡単に判断するのでなく、筆者としては今回紹介した各シート生地の特徴や長所・短所にも注目し、自分の家族に合ったタイプを選ぶようにしていただきたいと思う。

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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