ジャンプはなだらかになったものの……
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「プラッツガルテン」です。ドイツ ニュルブルクリンで通称スモールジャンプと呼ばれていた路面が改修されました。早速走行してきた木下さんの感想をお届けします。
例年以上に過激なレースが繰り広げられた
2025年のニュルブルクリンク耐久シリーズがついに幕を開けました。不肖ながら、私は今年もトーヨータイヤ with リングレーシングの一員として参戦の機会を得ることができました。そして、例年どおり、いや例年以上に過激なレースが繰り広げられたのです。
ニュルブルクリンクといえば、世界屈指の難コース。勇敢なる挑戦者たちが“グリーンヘル”ことノルドシュライフェ(北コース)に果敢に挑みます。しかし、そんな猛者たちをあざ笑うかのように、コース自体が牙をむくのがこのサーキットの恐ろしさ。2025年も例に漏れず、クラッシュが多発し、レースは何度も赤旗中断。混乱の渦に包まれました。
その要因のひとつが、オフシーズン中に施されたコース改修にあります。25.3kmという超ロングコースの中でも特に名高いトラップ、「プラッツガルテン」にメスが入りました。このセクションは、まるで滝壺へと落ちるような急勾配のS字を抜けた先にジャンプスポットが待ち構えている、スリリング極まりない区間。マシンは浮き、そして着地とともに「ガシャン!」と激しい衝撃が襲います。しかも、着地した瞬間にはすでに次の右高速コーナーへの進入が始まっていなければならない。
つまり、「飛んで、曲がる」が一連の動作の中に組み込まれているのです。
安全になったはずのプラッツガルテンに魔物が!?
今回の改修では、このジャンプを“なだらか”にすることが目的でした。その試みは一応成功。これまでのようにマシンが豪快に飛ぶことはなくなり、ふわりと浮く程度に。しかし、この“優しさ”こそがニュルブルクリンクの巧妙な罠だったのです。
ジャンプの衝撃が和らいだことで、ドライバーたちはつい油断。より速度を上げる者が続出しました。しかし、その先にはこれまでと変わらぬ右高速コーナーが待ち構えています。さらに、改修されたとはいえ路面はまだレース用アスファルトが馴染んでおらず、オイルの染み出しでグリップも低め。結果、安全になったはずのプラッツガルテンには魔物が潜み、大クラッシュが頻発するという皮肉な展開を迎えました。
こうして、2025年もニュルブルクリンクはその過激さを存分に見せつけてくれました。そして、まだシーズンは始まったばかり。これからも、この「地獄の舞台」は新たなドラマを記録していくことでしょう。