近年の相場を考えると妥当な金額
2025年2月4日〜5日にRMサザビーズがフランス・パリで開催したオークションにおいて、ポルシェ「911 ターボ」が出品されました。出品車は、1977年の1月21日にラインオフし、ドイツ国内において新車で納車。ボディカラーは、デリバリー時のものと同様のグランプリ・ホワイトを採用したモデルでした。
ポルシェが世界で初めて市販スポーツカーにターボエンジンを搭載
スーパーカーの世界においては、大排気量のマルチシリンダー・エンジンこそが絶対的な条件だとする定説に、まさに反旗を翻すかの如く登場したのが、1973年のIAA(フランクフルトショー)でプロトタイプが登場し、そして翌1974年のパリサロンでプロダクションモデルが正式に発表されたのがポルシェ 911ターボだった。ポルシェとして、これまでとはまったく異なるテクニックとなるターボというシステムを用いて、強大なパワーを生み出すことに成功した911ターボ。その誕生はまさに衝撃的な話題にほかならなかった。
実際に1975年モデルから発売された911ターボのリアに搭載されたエンジンは、3L仕様の水平対向6気筒ターボ。KKK製のターボを装備し、0.8barの最大過給圧を設定することで得られた最高出力は260ps。今回RMサザビーズがパリオークションに出品したモデルは1977年式。この1977年の8月にはさらに搭載エンジンは3.3Lへと排気量拡大され、新たに空冷式のインタークーラーを備えるなど、さらにチューニングが進められた、いわゆる後期型へと911ターボはマイナーチェンジされることになる。
外装色は過去に1度再塗装済み
出品車は3Lエンジンを搭載する前期型。RMサザビーズの調べによれば、1975年から1977年までに生産された3L仕様の911ターボは2819台。競合他社にとって、それが大きな脅威を感じる数字であったことは想像するに難くない。ちなみにこの2819台のうち、別名Kシリーズと呼ばれる1997年モデルは1703台である。
RMサザビーズが13万~18万ユーロ(邦貨換算約2080~2880万円)の予想落札価格を提示した出品車には、1977年の1月21日にラインオフし、ドイツ国内において新車で納車された記録が残る。ボディカラーは、デリバリー時のものと同様のグランプリ・ホワイトだが、過去に1度再塗装が施されたと考えられている。
クラッシック・ポルシェの世界に足を踏み入れる最適な1台
2015年6月には現在の所有者であるキュレーテッド・コレクションに、この911ターボは加わることになるが、車両に付属するサービスブックには、新車時から2000年代まで定期的に行われていたメインディーラーによるサービスの記録が、詳細に残されている。もちろんシャシーやエンジン等々のナンバーマッチングはポルシェに残された記録によって確認済み。これからクラッシック・ポルシェの世界に足を踏み入れていきたいと考えるエンスージアストには、この1977年式911ターボは、素晴らしいエントリー・ポイントとなることは間違いないだろう。
よりワイドなデザインが採用されたリアフェンダーや、独特な造形のリアスポイラーなど、オプティカルな面でも魅力の多い911ターボ。ちなみに後期型ではさらにリアスポイラーが大型化されるなど、その外観での印象はよりグラマラスなものになるが、911ファンの間では初期型のデザインを好むものもまた多いのも事実。
前でも触れた後期型の3.3Lエンジンは300psの最高出力を発揮し、前期型では4速だったMTも5速へと進化しているが、総合的にどちらをコレクターズアイテムとしてより魅力的に考えるのかは落札者の考え次第。パリ・オークションでは最終的に、13万2250ユーロ(邦貨換算約2118万円)まで入札が進み、それが落札価格となったが、近年のクラッシック911の人気を考えれば、これは十分に納得できる数字であったとレポートしてもよいのではないだろうか。
スーパーカーの世界に大きな変革をもたらした、ポルシェ911ターボ。現在にまで続くその歴史の始まりを所有できることには、やはり大きな魅力がありそうだ。