リトラ車が集う2ショップが合同で開催
アラフィフから上の世代、とくに1970年代のスーパーカーブームをリアルに体験した方々にとって、「リトラクタブルヘッドライト」は当時の最先端であり、最も憧れたカーデザインのひとつであろう。そんな「リトラ車」だけが集まった「リトラジャム(リトラクタブルカージャンボリー)」が、2023年9月17日に福岡県朝倉市にある、あまぎ水の文化村で開催された。今では生産されることがなくなった「リトラ」の魅力を、改めて実感する素敵なイベントだった。
速さとカッコよさをイメージさせる当時の最先端
世代によってリトラクタブルヘッドライトに対するイメージは異なるのではないだろうか? 1967年に日本車として初めてリトラを採用したのは、トヨタ「2000GT」。そして、第1次スーパーカーブームの立役者であったランボルギーニ「カウンタック」やフェラーリ「BB」で、リトラクタブルヘッドライトはスーパーカーの代名詞のような存在になる。
その後、1978年にはマツダ「サバンナRX-7」(初代SA22)にも採用されたことで、リトラは速さとかっこ良さのシンボルとして、一般人が買いやすい市販車でも確立した。時代の流れとともに、各車のスポーツカーに採用されつつ、1988年にはトヨタ「カローラII」(2代目)に「リトラ・SR-i」というそのままの名称のグレードが新設。これにより、リトラは市民権を得た。しかし、その後の技術の進化や各国の法規制の変化とともに、前時代的システムへと退化。その結果、国産車では1991年12月発売のマツダ「RX-7」(3代目FD、生産終了は2002年8月)、外国車では1997年発売のシボレー「コルベット」(5代目C5、生産終了は2004年)を最後に、この世から消滅した。
若いユーザーには速さよりも可愛らしさで人気
今回の「リトラジャム(リトラクタブルカージャンボリー)」は、福岡県北九州市にあるお店、カラーコンセプトとTプロジェクトの2社が主導となり企画された。カラーコンセプトは、80〜90年代のネオクラシック系ホンダ車を中心に扱う専門店。Tプロジェクトは、NA型ユーノス「ロードスター」を得意としつつ、さまざまなドレスアップ&チューニングを手がけるプロショップだ。
カラーコンセプト代表の古賀さんによれば、「旧車や車種別ではなく、他のカテゴライズで面白いイベントができないものかと、数年前から構想していました」と、以前よりこのアイデアを模索していたそう。偶然にも、どちらのお店にもリトラ車に乗るユーザーがたくさんいる。しかも、どちらのお客さん達も20代から50代と、ユーザーの幅広さも重要だった。それが今回のイベントの参加者にも反映されており、当時を知る世代から、ネットや雑誌の中でしか見たことはないけれど憧れていたという若手まで集まったのが、印象的だった。
ちなみに、リアルタイムではリトラに触れていない世代の女性たちにその魅力を尋ねてみたところ、多く聞かれたのが「可愛い!」という言葉。おじさんにとっては、速さや未来的なカッコよさの象徴だったものが、時代が経過したことでそのイメージは大きく変化している、ということもお伝えしておこう。
東は東京、西は長崎から、多彩なリトラ車が大集合!
イベント当日、とくに搬入時間帯の朝は、天候急変による土砂降りで幕を開けた。参加者の一部にはオープンカーの方々もおり、さらには旧車&雨天では可能な限り走行したくない、というユーザーがいるのも当たり前。天候回復まで道中でゆっくり休憩するのも、こういった車両ならではの出来事だったろう。
こうして会場に集まったのは、事前エントリーで申し込んでいた50台。最も遠い参加者は、東京から自走来場という猛者もいた。今回集合した車両は、ホンダ「プレリュード」(2代目/3代目)、ユーノス ロードスター(初代)をはじめ、トヨタ車では「MR2」(初代/2代目)、「スプリンタートレノ」(4代目)、「スープラ」(初代)、「セリカXX」など。日産車では「フェアレディZ」(3代目)、ホンダ車では、「CR-X」(初代)、「NSX」(初代前期)、マツダ車は「RX-7」(2代目/3代目)、「ファミリア アスティナ」などが集結した。
このイベントは、そもそも台数を集めることを目的としていない。
「ユーザーがメインとなって、1日みんなで楽しんでいただくことが目的です。私達はそれをしっかりと、裏方として支えるの役目なんです」
と、カラーコンセプトの古賀さんは語る。この1日は、「リトラ好きがみんなで楽しむための交流会」であり、会場を埋め尽くしていた和気あいあいとした雰囲気が、とても素敵だった。リトラジャムは、まだ始まったばかり。将来的には、このスタイルのままで西日本最大級のリトラオンリーイベントになることを、参加者も主催者も強く願っているのだ。
主催スタッフたちは、今回の参加者の笑顔を見て、手ごたえを充分に感じ取った様子。次回開催については未定だが、「継続開催に向けての意欲はあります!」とのことだったので、これからの動向に注目していきたい。