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バリモノBMW E36「M3」が720万円! 実走6万キロのヤングタイマーでも市場価格は落ち着きはじめた!?

4万3700スイスフラン(邦貨換算約720万円)で落札されたBMW M3クーペ(C)Courtesy of RM Sotheby's

内外装ともにグッドコンディションの個体

2023年9月15日、RMサザビーズがスイス・サンモリッツで開催したオークションにおいてBMW「M3クーペ」が出品された。今回はいくらで落札されたのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。

なめらかに回っていくエンジンフィールが気持ちいい!

4気筒エンジンを搭載した初代のM3が生産を終了した1990年以降、「3シリーズ」はE36型へと進化していたがM3というモデルは存在していなかった。しかし1992年になって、そのE36型をベースとしたM3が発表された。それがE36 M3である。発売は1993年だ。

搭載されたエンジンは、S50B30型、直列6気筒3.0Lだった。スタイリングはドアミラーなどに細かい差異はあるものの、ベースとなっているE36クーペとほぼ同じで、はっきりと違いがわかるE30型と比較した場合に、今度のM3はおとなしい、と当時はいわれていた。トランスミッションは5速MT。日本での販売価格は700万円強だったように記憶している。

このE36 M3、実際に乗ったことは何度もあるが、非常に気持ちのいいクルマだった。クルマ全体のバランスという意味でいうと、同じ3シリーズクーペの318iSのほうが優れていて、下り坂のコーナリングではこちらのほうが楽しい、と思えるものがあったし、4気筒エンジンの吹け上がりの鋭さもあいまって、全力で走っているというフィールが強く感じられていた。

しかしM3のほうは、なめらかに回っていくエンジンフィールと、カムに乗ったところからの伸びのよさは、ほかでは味わえないものだった。フロントは318iSと比べれば重いのだが、だからといって曲がらないというわけではなく、しっかり減速して荷重を残しつつ頭を入れれば、あとは回転馬力で前へと進んでいける。見た目は派手ではないが、楽しさにあふれたクルマだった。一般的には、低中回転でのトルクが足りない、といわれることが多かったようだ。

実際、そういうインプレッションを聞いたことも多い。そのためか1995年になってBMWはエンジンをS50B32型、つまり3.2Lへと変更した。同時にトランスミッションを5速から6速へと変更。さらにはシングルクラッチ式のセミオートマであるSMGも同時に採用している。

3.2LとなったM3が、M3Cと呼ばれるもの。たしかに3.0LのM3Bは、渋滞しているときなどは若干の扱いづらさがないわけではない。しかしそれはほかの大排気量車と比べれば、という話だし、と感じていた人も多かったのだが、北米などの大市場では弱点としてあげられていたのであろう。この3.2L化によってたしかに乗りやすさは格段の向上を見せている。ただ、吹け上がりの鋭さという部分が若干スポイルされていたように感じられたのも事実。クランクが重くなるというのはこういうことなのか、と勉強させられたモデルでもあった。

ヤングタイマー世代の価格高騰が落ち着いてきている

今回スイス・サンモリッツで開催されたRMサザビーズオークションに出品されたのは、3.0LのM3Bである。内外装ともに非常に状態は良く、走行距離も6万1000km強と非常に少ない。さらにこれまでの整備状況も記録に残されていて、直近では2020年7月に、現在のオーナーの居住地であるノルウェーで3万クローネ(約41万円)をかけて、燃料ホースなど劣化した部品の交換などをおこなっている。

そんな1993年式、ごく初期のE36 M3のエスティメート(推定落札価格)は5〜7万スイスフラン(邦貨換算約830〜1150万円)というものだったのだが、実際の落札価格は4万3700スイスフラン(約720万円)だった。エスティメートよりも低いというのは、オークションマスターの見立て以上に、ヤングタイマー車の価格高騰が落ち着いてきている、ということなのだろう。もちろん、一時期は、といっても20年ほど前のことだが、そのころなら300万円代でそこそこ状態のいい個体を購入できた、ということを考えると、この700万円強というプライスは高いと感じるかもしれない。

しかしすでに個体数が減っていることや、このクルマの状態がいい、ということをあわせて考えた場合には、妥当といえるはずだ。実際に走らせたときの実力はまだまだ一級品であるE36 M3。手に入れたオーナーが走りを楽しむのか、あるいは保管していくのかはわからないが、いずれにしても大事にしていってもらいたいものだ。

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