ヤングタイマー世代のフランス車にずっと乗り続ける
「フレンチブルーミーティング」に代わり、2023年10月に車山高原で初開催となったフランス車のイベント「アロンフランセ車山」。降りしきる雨にも負けず、さまざまな年式やメーカーのフランス車たちがたくさん集まった。そんな中、ときおり激しくなる雨をどのクルマよりも弾いている漆黒のボディのプジョー「309」が佇む。バンパーにある赤いモールで「GTi」ということが判断できる。
免許取得後、初めて買ったのが309
このピカピカの1989年式プジョー309 GTiのオーナーは、東京都から参加の“Scud309”さん。まだ免許取得前だった頃に同級生の購入したプジョー「205 GTi」の助手席を体験し、その身軽なコーナリングに感激したそうだ。そこで自分の手に届くプジョーを探したところ309 GTiに出会い、手に入れた。
やがてメンテナンスなどで出入りするようになったフランス車専門店「オートポワルージュ」で知り合った同好の仲間たちと、参加していたフレンチブルーミーティングの展示もクラブ名義だといいよね、というような会話から、2002年に309のワンメイククラブ「Saint Marc(サンマルク)」が誕生。そして、309乗りの先輩方を差し置いて、Scud309さんが初代の会長を任命されたのだった。
「お前まだ大学生だから時間あるだろ? それが僕が会長になった理由ですよ」
と笑うが、それから21年を経た現在も、プジョー309のオーナーズクラブ会長として、クラブメンバーとの定期的なツーリングや、すでに入手困難になっている部品の調達方法、修理などの情報共有など、積極的に活動を続けている。
フランスで開催の309ミーティングにも参加
そんなScud309さん、この日乗ってきた309はなんと自身にとって5台目の309だという。
「維持するのにちょっと出費がかさみすぎるから、別の個体を買った方が安くつくな、といった事情もありましたし、まだその頃は買い替えできるタマ数があったというのも、5台を乗り継いだ理由でしょうか」
現在は愛車をなるべく純正に準拠した仕様にしているというScud309さんだが、3台目の309ではプジョー・スポールのキットを組み込むなどして、コンペティションシーンでも活躍した309の片鱗を積極的に取り込み、サーキットを走って存分に楽しんだそうだ。
また、フランス本国で行われた309のアニバーサリーミーティングへも参加するなど、309への愛情は一途だ。
「25周年と30周年のミーティングは309のアニバーサリーということで、フランス全土それぞれの地域のクラブのナショナルミーティングという形で、プジョー・ミュージアムのあるアルザス地方での開催でした。もちろんフランスの方も博物館とセットで楽しむ魂胆だったんでしょうね」
部品取り車も確保してまだまだ乗り続けていく
ところで、日本の街中であまり見ることのなくなった309。1985年から1993年までの生産で、最終モデルでもすでに30年が経過している。オーナーたちやパーツ供給など、309を取り巻く状況はどうなのだろうか。
「維持疲れって言うのでしょうか、少し休んでいる仲間たちも増えてきましたが所有はしています(笑)。消耗品はサードパーティのものがありますし、まだ維持は可能です。他のクルマも同じだと思いますが、外装などは入手が困難ですね。じつは部品取り用として、4台目の309はナンバーを返してからもストックしています」
「この5台目はちょうど所有して10年目で、ヘッドは自分でオーバーホールしたりしながら、約6万km乗っています。309には免許取得からずっと乗ってきていますし、日本全国訪れました。私にとって、いつもそこにあるものなんですよ。そうだ! いつか通りたいと思っている国道309号線は、まだ行ったことがなかったな」
これからもScud309さんと309 GTiの蜜月は続いていくようだ。