ブリヂストンのモータースポーツへの挑戦
ブリヂストンは、2023年12月15日に「『極限への挑戦』次のステージへ」と題し、モータースポーツ60周年の活動総括と、今後に向けたサステナブルなグローバルモータースポーツ活動について発表した。詳細をお伝えしよう。
モータースポーツへの情熱と原点
1963年の第1回 日本グランプリ以来、ブリヂストンがモータースポーツ活動を開始してから60周年を迎えた。その節目となる本年に掲げたのは、「Passion to Turn the World(世界を変えていく情熱)」という新たなメッセージだ。60年にわたって培われてきたモータースポーツにかけるブリヂストンの情熱は、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動においてさらに進化していくという決意の表れである。
ブリヂストンはモータースポーツを開発の「原点」に据えている。その理念は、これまでの60年も、そしてこれからも変わることはない。レースを「走る実験室」として、「極限への挑戦」のなかで技術を磨いてきたのがブリヂストンなのだ。そしてそれは、これまでのブリヂストンの製品やレースでの結果が証明している。レースで磨き上げられた技術を市販タイヤへと繋げ、進化を遂げてきたブリヂストンの情熱は、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動という新時代においても、決して変わることはないのだ。
新しい時代の新しいブランド
変わらないものがあるいっぽうで、時代はEVへとシフトしていき変革期を迎えている。そこで、ブリヂストンは次のステージに向けて「EV時代の新たなプレミアム」として、商品設計基盤技術「ENLITEN」を打ち出した。
ENLITENは、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動をコアとしながら、「極限へ挑戦」していくなかでサステナブルなプレミアムブランドの構築を目指していく。要するに、これまでのブリヂストンのポテンザやレグノといったブランドと同じEVのブランドでありながら、新たな技術開発の基盤としてこれらのブランドに技術提供し、ともに進化していく「商品設計基盤技術」であるということなのだ。
また、サステナブルなソリューションカンパニーとして、ブリヂストンは今後、再生資源・再生可能資源比率65%以上への挑戦を表明している。さらに、生産・物流のカーボンニュートラル化に加え、タイヤを原材料に「戻す」ケミカルリサイクルの実現にも挑戦していく。これらブリヂストンの掲げる未来戦略にも注目していきたい。
FIA世界選手権への復帰
先に「走る実験室」と述べたとおり、このENLITENはABB FIA Formula E世界選手権において2026~2027シーズンからの単独タイヤサプライヤーに選定されており、すでにその道筋は整っているのだ。そしてこれは、ブリヂストンにおけるFIA世界選手権への約15年ぶりの復帰ということになる。また、FIA ECO RALLY CUPにおいては2023年から欧州6カ国6レースをサポートし、ENLITEN搭載のTURANZA6およびAZ/6装着車がモナコ大会、イタリア大会にて優勝という結果を残している。2024年からはさらにサポートを拡大していく。
今後、ブリヂストンの情熱がレースの世界で発揮され、さらに輝かしい結果を残してくれるのを見るのが楽しみだ。
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ところで、ブリヂストンのFIA復帰と聞いて誰しも興味を持ったのはF1への復帰ということではないだろうか。ブリヂストンはF1で1997年から2010年までの14年間で175勝という戦歴を支えたタイヤメーカーであり、当然「それ」は誰しもが期待するところだろう。しかしブリヂストン グローバルCEOの石橋秀一氏は、あくまでフォーミュラEがブリヂストンの考えるサステナブルなグローバルモータースポーツ活動の強化に合致したが故のタイヤサプライであって、F1への復帰について明言することは残念ながらなかった。
しかし、ブリヂストンの目指すサステナブルなグローバルモータースポーツ活動と、F1が目指すモータースポーツは、同じ未来に向かって進んでいるのであって、その両者の未来が交わる可能性まで否定するものではなかったということだけはお伝えしておこう。