開発最終段階の新型マカンの走りを体感!
電動化を進めるポルシェのBEV第2弾として登場予定の新型「マカン」。海外ではスクープ記事が出るなど話題ですが、ついに新型に関するワークショップがポルシェの生産拠点であるライプツィヒ工場で開催されました。開発テストも最終段階をむかえた新型の今をお伝えします。
新型BEVは現行内燃機関モデルと併売
ポルシェはいま2030年までに80%超の市販車を内燃機関から電気自動車(BEV)へとスイッチしていく電動化戦略を進めている。2019年にBEV第1弾となる「タイカン」が登場。そしてBEVの第2弾が2024年に登場予定の新型マカンだ。
マカンはご存知のとおり、「カイエン」と並ぶポルシェのトップセラーモデル。2014年の市場導入以来、2015年から2022年の間に、マカンは6度トップの座を獲得。これまで世界中で80万台以上が販売されてきた。2023年1月から9月までのデータをみても前年同期比で15%増加の約6万8000台を販売している。マカンの購入者の約80%はポルシェの新規顧客であるという。
これほどの人気車種を新型ではBEVへスイッチするという。それは早計なのではないと心配になるが、そこはさすがのポルシェ。現行の内燃エンジンモデルも併売することで、顧客に選択を委ねるという。そう考えれば、人気車種であるマカンをあえてBEVにするという戦略にも合点がいく。
ポルシェは電気自動車の開発に関してはアウディと共同開発を進めてきた。この数年はタイカンとアウディ「e-tron GT」が採用する「J1」プラットフォームに続く、BEV用プラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」の開発が進められていた。
そして、ようやく2024年にこのPPEをもとに、アウディは「Q6 e-tron」を、ポルシェは新型マカンを市販化するという流れだ。これまでにも海外ではスクープ記事などが出ていたが、開発テストも最終段階にさしせまった2023年10月下旬、ポルシェの生産拠点であるドイツのライプツィヒ工場にて、新型ポルシェ マカンに関するワークショップが報道陣向けに開催された。
インテリアはタイカンからの流れをくむ最新デザイン
ワークショップの場で披露された新型マカンは、ボディは黒一色でまだエンブレム類などは一切装着されておらず、リアまわりは偽装されたいわゆるプロトタイプカーだった。フロントバンパーの形状が丸みを帯びている現行型に比べて、シャープなデザインになっていることがわかる。ボンネット左右のフェンダーの膨らみも立体的で、まるでスポーツモデルのようだ。ルーフからリアにかけてのラインは明らかに傾斜が低く、クーペスタイルがより一層強調されている。おそらくラゲッジスペースを多少犠牲にしてでも、このスタイリングを選んだということだろう。
インテリアはタイカン、そして新型カイエンの流れをくんだものになった。メーターパネルは12.6インチのフルデジタルの自立型カーブディスプレイを配置。ギアセレクターも同様にステアリングの脇に移設されている。インパネの中央には10.9インチタッチディスプレイを、そしてオプションで助手席にも10.9インチディスプレイを装着することが可能となった。拡張現実(AR)機能付きヘッドアップディスプレイや「ヘイ ポルシェ」で起動する音声アシスタントシステムなど、最新世代のインフォテインメントシステムを搭載している。
パワートレインはタイカンと同様に800Vのアーキテクチャーと永久磁石式同期電動モーター(PSM)を採用する。導入当初はエントリーモデルと最上級モデル(おそらくターボ)が投入される予定だ。最上級モデルのシステム出力は最大約450kW(約600ps)、最大トルクは1000Nm以上。駆動方式は全輪駆動で前後重量比は48:52とややリアよりに。トランスミッションはタイカンが2速なのに対して1速に。これによりコンパクト化が図られた。
床下には総容量100kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTPモードによる一充電あたりの航続距離は500km以上に到達。前世代よりも約30%エネルギー密度を高めたバッテリーは、タイカンのものに比べても冷却能力が向上しており、最大270kWの充電能力を実現する。欧州の急速充電ステーションを利用すれば、22分以内にバッテリーを10%から80%まで充電することができるという。
オフロードも得意な「ポルシェ流ホットハッチ」
今回のワークショップでは、ライプツィヒ工場の敷地内にある「ポルシェ エクスペリエンスセンター」で助手席での同乗走行が許可された。ステアリングを握るのはポルシェのヴァイザッハ開発センターからやってきた本物のテストドライバーだった。
まずは全長約6kmのオフロードコースに進入する。ところどころに大きな穴や水たまりのあるダートコースを、まるでラリーカーのようにスライドさせながら走る。足まわりからは大きな突き上げなどなく、凸凹をとてもしなやかにクリアしていく。あとで覗き込んでみたところ、最上級モデルに設定される新設計のエアサスペンション装着車だった。
コースの途中には15ものテストモジュールがあるのだが、現行型マカンでは登れないという勾配約40°の急斜面もなんなく登りきった。そして水深50cm、長さ100mもある川のセクションにもためらいなく侵入し、水しぶきをあげながら渡りきるという、本格オフロードSUV並みの性能を備えていた。
全長約3.7kmのサーキットでは、さらに本領発揮だった。スポーツプラスモードにするやいなや、全開加速の後ハードブレーキでコーナーへとターンイン、そしてドリフトへの姿勢コントロールと、想像していた以上のダイナミック性能を披露。SUVというよりはポルシェ流ホットハッチなのだと思った。SUVであれ、電気自動車であれ、ポルシェがつくるのはスポーツカーなのだという矜持を感じるものだった。すでに日本国内でもテストが始まっているようで、先日、東名高速を走る偽装したマカンを目撃した。新型の登場を楽しみに待ちたい。