セダンタイプのBEV、フォルクスワーゲンID.7に試乗
フォルクスワーゲン(以下VW)の電動化戦略は成功するだろうか。その答えを占うニューモデルが誕生した。聞き慣れたVW車でたとえるのならば、「パサート」クラスのボディサイズを持つBEV、「ID.7」がそれである。プラットフォームはもちろん、これまでに登場したID.シリーズと同様、VWグループのBEV専用プラットフォーム「MEB」。最初にその姿を見たときの第一印象から、ボディのエアロダイナミクスが優秀であることは十分に予想できたが、実際に空気抵抗を表すCd値は0.23というから、その第一印象は確かだった。
パサートよりひと回り大きなボディに伸びやかなシルエット
ID.7のボディサイズは、全長4961mm×全幅1862mm×全高1538mm。先ほどID.7はパサート・クラスと書いたが、実際にスペックを正確に比較してみると、ID.7の方がいずれの方向にもひと回り大きいことに気づく。もちろん2172kgの車重はパサートのそれを大きく超える。広い居住空間でラグジュアリー性を高めながら、いかに満足できる走りを実現できているのかが、ID.7の実質的な評価といえそうだ。まずは外観のディテールをもう一度確認する。
フロントを先進的なスタイルにまとめたID.7のボディデザインは、前後に流れるような筋肉質なラインを基調とするものだ。フロントマスクの特徴は大きくクローズしたグリルとボンネットの立体的なデザイン、そしてデイタイム・ランニングライトとターンシグナル用の細いLEDヘッドライトによって特徴づけられたもの。オプションでは最新のIQ.LIGHT LEDマトリックス・ヘッドランプを装備することも可能となっている。
伸びやかなシルエットも、ID.7のスタイルの見どころのひとつ。とくに印象的なのはボディサイドの前後を貫くショルダーラインで、それがボディの側面に力強く、そしてポジティブな緊張感を生み出している。ホイールベースは2971mm。したがって前後オーバーハングの短さも強調され、扱いやすさをイメージさせているのがわかる。リアの水平LEDストリップも、いかにも最新のBEVらしい演出で好感が持てるが、こちらもさらにオプションではアニメーション・ブレーキライトと、ダイナミックターン・シグナルを備えた3Dテールライトクラスターも用意されるという。
室内スペースの広さと余裕は特筆もの
外観をひと通りチェックした後で、キャビンに身を委ねてみることにする。まず感じるのは1列目、2列目の両シートとも、じつに広々としたスペースが得られていることで、とくに後席のフットスペースは驚くほどのもの。これが他のID.シリーズより車高が低く、さらにはフロア下にバッテリーを搭載するモデルの居住スペースなのか。迷うことなくパッセンジャーを迎え入れることができる広さ、そして余裕がそこにはあった。
またその後方のラゲッジルームは、通常時には535L、1列目の助手席までを収納すると最大の1586L分の荷物を、大きな開口面積を持つリアゲートから積み込めるというから、これもこのクラスならではの大きな魅力といえる。シートの座り心地、ステアリングホイールの太さや感触も、自分が日頃からVW車に乗っているからなのか、自然なものに感じられた。
ナチュラルな、ガソリンエンジン車に近いドライブフィール
それでは実際の走りはどうか。残念ながら試乗が実現したドイツは、すでにスタッドレスタイヤの装着義務期間に入っており、コーナリングなどその真の実力を体験するというわけにはいかなかった。だが、286psの最高出力と545Nmの最大トルクを発揮する、リアに搭載されるエレクトリックモーターが演出する加速感は決して物足りなさを感じさせるものではなく、比較的ナチュラルな、ガソリンエンジン車に近いフィールを感じさせてくれたのが印象的だった。
参考までに今回試乗したID.7 Proバージョンが搭載するバッテリー容量は77kWh。0-100km/h加速は6.5秒、最高速は180km/h、また航続距離は603~621kmと発表されている。ブレーキは回生機能を持つが、強めの回生が入るBレンジでも、実際の制動力はさほど大きなものではなかった。
ステアリングやサスペンションの動きを含め、VWはどうやらこのID.7をBEVとしての違和感をできるだけ抱かせないモデルとして開発してきたようだ。乗り心地や操縦性には、そう確信させるだけのポジティブなフィーリングがつねに表れていた。