今後の推移に注目
2023年11月4日、RMサザビーズのロンドンオークションにおいてフェラーリ「550マラネロ」と「550バルケッタ」が出品された。現在のオークション市場での評価が如何ほどなのか、同車について振り返りながらお伝えしよう。
21世紀を見据えたスポーツ志向の12気筒ベルリネッタ
フェラーリはそれまでのBB世代、そしてテスタロッサ世代へと受け継がれてきた、V型12気筒エンジンをリアミッドシップするという基本設計を、23年ぶりに再びフロントエンジンに回帰しようと決断。その結果フェラーリが550マラネロというニューモデルを発表したのは1996年のことである。
オフィシャル・デビューの舞台として選ばれたのは、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットだった。車名に掲げられる550の数字は、そのフロントに搭載されるV型12気筒エンジンが5.5Lの排気量を持つことを表し、それに続くマラネロは、もちろんフェラーリの本拠地であるマラネロの地をオマージュしたものである。
フェラーリが550マラネロの発表会で語ったコンセプトは実にシンプルなものだった。パフォーマンスに関しては一切の妥協をしない。550マラネロはフェラーリが考える21世紀を見据えたスポーツ志向の12気筒ベルリネッタにほかならない。そのエキサイティングなスタイリングとパフォーマンスは、必ずやカスタマーを満足させるだろう。
デザインはエアロダイナミクスなどの諸条件を高いレベルでクリアしたうえで、同時にフェラーリの伝統をも感じる魅力的なものとした。スタイリングを担当したピニンファリーナにとっても、それはとても難しい要求であったに違いない。
開発のために投じられた風洞実験はじつに4800時間にもおよび、結果0.33というCd値を得ることに成功。485psを誇ったV型12気筒エンジンは、その基本的なスペックは456GTのそれと変わらなかったが、各部のチューニングはさらに進み、実質的には456GTのそれとはまったく別のものとなった。
フェラーリのロードカーでは、1964年にデビューした275GTBで初採用された、トランスミッションをリアに配置するトランスアクスル方式が継承され、最適な前後重量配分を実現しているのもこの550マラネロでは当然のエンジニアリングだった。
320km/hの最高速、4.4秒の0−100km/h加速は、いずれもミッドシップ時代の最終作、F512Mを超える数字だ。さらにフィオラノ・サーキットのラップタイムは、同様の比較で3.2秒も短縮することに成功したというのだから、550マラネロへのフルモデルチェンジが、いかに成功裏に終わったのかには異論を唱える余地はない。
バルケッタは48台のみ作られた右ハンドル
今回RMオークションのロンドン・オークションに出品されたモデルは、2000年モデルの550マラネロと、2001年モデルの550バルケッタ ピニンファリーナ。両車の違いはもちろんそのボディ形状にあり、後者はバルケッタの名が物語るように、簡素な布製のソフトトップが装備されるのみ。
しかもそれは110km/hまでの使用しか保証されないものだった。当初444台の限定車として販売される予定だった550バルケッタ ピニンファリーナは、日本で縁起が悪い数字である等々の理由から、最終的には448台のプロダクションモデルと12台のプロトタイプが生産されるにとどまっている。
今回出品された550バルケッタは、その中で48台のみが生産された右ハンドル仕様である。2000年モデルの550マラネロには12万~17万ポンド(邦貨換算約2184万円~3094万円)、そして2001年モデルの550バルケッタ ピニンファリーナには28万~35万ポンド(同5096万円~6370万円)という予想落札価格を提示したRMサザビーズ。実際の落札価格は前者が10万9250ポンド(同1990万円)、後者は30万8750ポンド(同5620万円)という結果でオークションは終了した。
550マラネロの全生産台数はフェラーリの記録によれば、1996年から2001年にかけて3083台。右ハンドル仕様はこのうち457台を数えるが、その人気はこれからどう推移していくのだろうか。フェラーリのファンとしては非常に気になるところだろう。