ジープジャンボリー会場に訪れた最古のジープ
2023年9月に富士山麓のスタックランドファームオフロードコースで開催された「ジープジャンボリー」には、古くはウィリス「MB型」から三菱ジープ、そして最新のジープ「ラングラー」まで、個性的なジープと魅力たっぷりのオーナーが集まった。今回は、会場に集まった全てのジープの基本となったモデル、ウィリス社製「MB」を紹介しよう。
ラジエターグリルのスリットは9本
会場内ではおそらく最も古い車両となるであろう1944年式のウィリスMB型。多くのジープが縦7本スリットのグリルとなるが、MB型は9本スリットとなる独特のフロントフェイスが特徴となる。オーナーの藤田さんにお話を聞いてみた。
「この車両を入手してちょうど4年くらいになります。車検証によると1985年に日本に輸入されたようです。私が入手した時に外装は一度リペイントしていますが、もともとそれほど程度は悪くありませんでした」
そう語るとおり、約80年前の車両とは思えないほど状態はよく、各部の装備もしっかりと残っている。外観で大きな特徴となっているのが、フロントのタンデムヒッチトーバーを装着しているという点。さらに多くの車両が外している幌を装備している点も見逃せない。
戦中の軍用車ということで、日本の公道を走行するための最低限の灯火類を追加しているが、基本的にはオリジナルの姿を色濃く残している。
「意外と普通に走りますよ! 高速走行はダメですけど」
エンジンはサイドバルブの2.2Lで、通称GO DEVILと呼ばれる。現代のレベルでは決してパワフルではないが、壊れにくく、乗りやすいパワーユニットとしてCJシリーズにも継続して使用された名機だ。このMBもオリジナルの2.2L GO DEVILを搭載しているが、ヘッドのみ後の年式のものに交換されているそうだ。組み合わせるトランスミッションは副変速機付きの3速マニュアルで、トランスファーレバーを含めて運転席には3本のシフトレバーが並ぶ。
ちなみに約80年前の車両だが、藤田さんいわく普通に走るそう。ただしギア比の関係で高速走行はかなりつらいそうだ。
独特の軍用装備も残る、まさに走る歴史資料
クルマに残る当事モノの軍用装備もMB独特のディテールとして興味深い。まずは通常のヘッドライトやテールランプと並んで装備されるBO(ブラックアウト)ライトシステム(管制灯火)もしっかりと残っている。このBOライトは、戦場での夜間移動の際に敵に見つからないための最低限の灯火で、切り替えスイッチで通常灯火とBOライトを切り替えられる仕組みとなっている。
そのほか、車体にはスコップや斧、ガソリン携行缶のホルダー、さらにハンドルの奥には小銃を固定するガンホルダーなど、さまざまな軍用装備を固定できるようになっている。こうした装備も含めて、藤田さんのウィリスMBは数多くの歴史的事実を現代に伝える貴重な車両なのだ。