ついに1980万円で2018年式ポルシェ911GT3のオーナーに!
トラベル系コンテンツディレクターとして糊口をしのぐ筆者が、齢60を前にしてドライブ旅行やスポーツ走行にも挑戦したいという想いから、憧れだった羽根付き「ポルシェ911」の購入を決意。経済的にも体力的にも限界にきている(?)アラカンのシニアにポルシェは翼を授けるのか? ようやく納車を迎え、いよいよ羽根付きポルシェライフスタートと思いきや、いきなりの悲劇が襲う……。いったい何が?
待ちに待った納車の日。ルンルンのおっさんに悲劇が襲う
納車は心から待ち遠しいものだ。無事ローンの手続きを終え、ホッとしてから約半月後。ようやく納車日が確定した。取りに行くつもりだったが、担当氏が持ってきてくれるという。思えば、買うのだ! と心に決めてから迷走すること約2年。そしてついにその日が来たのだ。目の前に現れた真っ黒なGT3。その姿はとてもセクシーで眩しかった。
担当氏から2個のキーと車検証、そして「ご購入ありがとうございました。おめでとうございます」の言葉とともにキンキラキンのスパークリングワインも渡された。少なくともローンが通り晴れて乗れるようになったことは、たしかにめでたい出来事だからありがたく頂戴することに。高級なディーラーなどでは花束贈呈などイベントがあると聞くが、これまでそんな世界とは縁もなく、こうした経験は初めてだった。シャンパーニュではないのが少々残念だったが(笑)、素直にうれしかったし、GT3を目の前にして気分はすっかりアゲアゲ、ルンルンであった。
ところが、そんなめでたい雰囲気の中で悲劇は起きた。
GT3に乗り込みマンションの地下駐車場に入れようとした時のことだ。ゆっくりと地下駐車場へと向かうスロープを下ったところ、ズザッという音ともに、ムニュとした感触が体に伝わってきたのだ。慌ててドアを開けフロントに回ると、なんと通路の平坦部にフロントリップがペシャリと接触してるではないか! それも擦っている状態ならまだしも、ほんの少しリップがめくれあがっているっ! 慌ててシフトをリバースに戻し、ズザッとまた音を立て、地上へと引き返した。
急いで状態を確認する。リップ底部はすでにガリガリ状態なので気にはしてないが、フロントスポイラー部が気になった。薄い素材のフロントセクションであったことが幸いしたのか、ともかくチリのズレなどはなく見た目は問題ないようだった。しかし、このままでは駐車できないではないかっ! やっと納車となったというのに、なんたる様……(涙)。
「入るだろう」という己の甘い認識に嘆く
言い訳をすると、駐車可能かをしっかり確認しなかったことにはいくつかの理由がある。購入決定する前に、そもそも住んでいるマンションに駐車場の空きがあるのかを確認せねばと管理人さんの元へ出向いた時のことだった。
「もうすぐ1台空きますよ。クルマはポルシェ? そういえばここは以前もポルシェでしたねぇ。黄色いやつ」という管理人さん。「ほら」と見せてくれた区画の工事中の写真の中に写っていたのは、なんと991前期GT3だった。この時、「へー991GT3がいたのか」→「ならここに入れるのね」と頭の中で自動変換したであろうことがまずひとつ。しかし、この時、GT3にはフロントアクスルリフトシステム(フロントリフター)というオプションがあることすっかり忘れていたのだった。きっとそのGT3には装備されていたと思われる。
加えて、この地下駐車場には明らかに車高の低いクルマが出入りしていることだった。そのクルマは987「ケイマンR」、そして見るからにシャコタン仕様のアバルト「595コンペティツィオーネ」だ。ケイマンRのオーナーには以前に話しかけたことがあって「満タンだと上りも下りもちょっと擦ります」と言っていた。それらの話や姿からシャコタンでも問題なしと勝手に思い込んでいたのだ。
いや、本当のところ、購入に浮かれて完全に車高(最低地上高)のことは、頭になかったというべきか。免許更新で毎回「だろう運転ではなく、かもしれない運転で」とあれだけ言われてきているのに、「入るだろう」と勝手に思い込んでいたオレ、アホすぎる。
フロントリフターが装着されていない個体のため、あちこちで擦ることは覚悟していたのだが、まさかの「自分の駐車場に入らない」である。スロープの勾配と傾斜角を図ってみると勾配は約19.5%、角度は約11°と最近のマンション等のスロープよりも比較的きつめな印象。ちなみにケイマンRの最低地上高は10cm。991GT3は法定基準スレスレの9cmだが、フロントリップ先端部は10cmほど。それもあって大丈夫かなと思っていたのだが、本当に甘かった。GT3はリップが前方に伸びている。さらに突き刺さりやすいことをこの時改めて思い知らされた。
待ちに待った納車日だというのに引き返すGT3……
恥ずかしいやら悲しいやら。どうあがいてもムリ。どうする? と思わず声を漏らしていた筆者の様子を心配そうに見ていた担当氏は「解決するまでウチで預りますよ。乗りたい時に来ていただければ出しますから」と優しく声をかけてくれた。いまはそうするしかない。ありがたいと思いながらも泣く泣くキーを渡し、納車から30分もたたないうちにGT3は引き返していった。手もとにはキンキラキンのスパークリングワインだけが残ったのだった。
さて、解決策はあるのか? 考えられるのは以下の3つだ。
【1】入庫できる駐車場を探す
【2】純正フロントリフターを取り付ける(40mmアップ)
【3】アフターマーケットのフロントリフターを取り付ける(60~70mmアップ)
【1】は、屋内保管やスロープの傾斜といった諸条件に合致する駐車場はそう簡単に見つかりそうにない。時間もかかるしランニングコスト面でもあとあとシビれそう。ベストな解決策は【2】と【3】のフロントリフターの装着だろう。
そこで【2】の純正モノを模索するべく、すぐさまポルシェセンターに電話してみた。ところが、サービスにつなげてもらうも「メーカー装着のオプションなので、後付けはできません」との回答が。「サスペンションやリフターの修理交換もあるのでは? なんとかできませんか?」と食い下がるも「いや、当方ではすみませんが対応できません」とバッサリ。海外のケースなども調べてみたが、たしかに純正品の後付けという情報は見つからなかった。
残るは【3】だ。ポルシェ用の社外フロントリフターといえば、ロベルタ、そしてドイツのサスペンションメーカーであるKW、最近はTECHARTもノーズリフトをリリースしている。991GT3用で適合があったのはロベルタ。KW(HLSリフティングシステム)では991GT3用の該当はなしだった(997GT3やGT3以外の991モデルなら適合はある)。TECHARTはまだ取付実績は日本ではないようである。となるとそう、フェラーリなどスーパーカーオーナーからも支持されているロベルタがよさそうであった。
純正よりもメリットは大きい!? ロベルタ製フロントリフター装着を決意
なかば消去法のようになっていたものの、調べていくうちに純正を凌駕するロベルタの性能に次第に惹かれていた。まずそのリフトアップ量だ。純正の40mmに対し、991後期GT3用「ロベルタリフターシステム・エレクトリック(電磁式)」の場合、70mmというリフトの高さを誇っている。すなわち最低地上高は10cmから17cmになるわけだ。
これだけ上がれば十分だ。スピードバンプやスロープ化されていない歩道に面したガソリンスタンドやコンビニ等の駐車場への進入や退出も心配ない。しかも、そのリフトアップのスピードが速いのだ。991時代の純正は油圧式でこれまで出会ったポルシェの場合だと上がり切るまで3~4秒かかる印象だったが、一方ロベルタはエア式でほぼ1秒程度。このスピードもありがたい。ちなみに下げ時間もロベルタは速い。ボタンを押せばプシューという音ともに元に戻る。なお、純正もロベルタもいずれも50km/hに達すると自動的に車高が下がる仕組みを持つ。
でも、さらにロベルタには魅力があるのだった。というのも、もしサスペンションをアフターマーケットの高性能サスに変えたい場合、純正リフターでは構造上取り付けができないのだが(マンタイレーシングのKWサスペンションなど一部は対応しているものもある)、ロベルタ製ならさまざまなサスペンションに対応できるのだ。これは足まわりをさらに仕上げたい向きには大いにメリットあるだろう。もちろんPASMといった、メーカー純正電子制御サスペンションにも問題なく対応している。
それに素材に高強度ジェラルミンなどを使用するほかメンテンスプログラムに10年の保証も付帯するなど、安心度も高い。ただ、お値段がかなり高そうなのである。取付工賃込で純正オプションの倍近くするらしい。くわーっ、予想外のイタイ出費になること必至。またしても大丈夫かオレ?
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ロベルタのリフターってもはやスーパーカーオーナー必須アイテム。定番の感ありますよね。装着したほうがおっさんの身のためだと思いますが、この際、思い切ってダカール仕様にするとか?(笑)
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