発売から14年経過していても値落ち幅が少なかった
2024年1月25〜26日、RMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいてテスラ「ロードスター スポーツ」が出品されました。いまや世界最大のEVメーカーとなったテスラの最初期モデルはいま、価値あるクルマなのでしょうか。
テスラのファーストモデルはスポーツカーだった
アメリカのテスラ社といえば、そのニューモデル戦略や販売台数が常に大きな話題として伝えられるEVメーカーだ。現在では中国のBYD社とEVの販売台数を競う立場にあるが、先日発表された2023年の世界販売実績によれば、テスラはトータルで180万8581台のモデルを納車。これはそもそも2023年の目標としていた180万台を超える数字で、2022年比ではプラス38%という結果になる。
そのテスラが、最初に市場へと送り出したモデルを覚えている人はどれだけいるだろうか。それは2008年3月にデリバリーが開始されたオープン・スポーツの「ロードスター」で、アメリカの著名人や、アーリー・アダプターと呼ばれる、常に技術やサービスの新しさに注目する人々に大きな影響を与えた。
なぜならそれはコンパクトで軽快なイメージを持つ、しかしながらこれまで慣れ親しんだエンジンではなく、エレクトリック・モーターを動力源とするクリーンなイメージを持つモデルだったからだ。
そのような事情もあり、テスラ ロードスターには発売前から多くの話題が集中し、9万8000ドル(当時のレートで約1000万円)という価格にもかかわらず、そのオーダーリストには多くの名前が連なった。2009年にはヨーロッパへの輸出も始まり、また2010年には右ハンドル仕様の生産もスタート。テスラはここに至りロードスターを全世界で販売する体制を整えたのだった。
テスラ ロードスターのシャシーは、ロータス エリーゼのそれをベースとしたもので、エレクトリック・モーターはミッドに搭載され、最高出力で292ps、最大トルクでは370Nmを発揮する。
バッテリーはモバイル機器向けに開発された18650規格のリチウムイオン・バッテリーを、車体後方におよそ53kWh分搭載しており、それだけで重量は約450kgにも達した。だがその運動性能は十分に魅力的で、0−96km/hを4秒以下でこなし、さらに2009年に発表された高性能版のロードスター・ スポーツでは、その加速性能は3.7秒にまで短縮されている。
ちなみにテスラでは、結果的に約2450台のロードスターが生産され、それはテスラというブランドの市場での認知と、その後に誕生したセダンやSUVなどの販売にも大いに貢献した。
バッテリー交換が前提でも予想落札価格の中間で落札
そのテスラ ロードスターが、RMサザビーズ社の新年を飾る恒例のアリゾナ・オークションに出品された。じっさいに出品されたのは2010年モデルのロードスター スポーツだが、同社はこれに4万〜6万ドル(邦貨換算約590〜882万円)のエスティメートを提示。これはこのモデルのバッテリーがすでに動作しなくなっているためで、もう一度その走りを楽しむためには、6831個の18650規格のリチウムイオン・バッテリーを交換しなければならない事情があるところに最大の理由がある。
そのほかのコンディションは、ホイールにわずかな摩耗が見られる以外は全体的に良好な状態が外観では保たれており、また内装もテスラのエンブレムをあしらったレッドのシートインサートが特徴的なブラックのインテリアが魅力的だ。
はたしてバッテリー交換が前提となる、テスラ「ロードスター スポーツ」に落札者は現れるのか。自動車の歴史を変えたともいえるその功績はやはり大きかったのだろう。走行距離が3500マイル(約5632km)だったこともあり、4万9280ドル(同720万円)で、見事に落札された。デリバリーから約14年、バッテリー交換が必要なことを考えれば、その値落ちは非常に小さなものだったといえそうだ。