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かつてのアルフィスタが最新「トナーレ」に乗ってみたら…紛れもないアルファ ロメオの走りに「1台ください」と言ってみたくなりました

「ふーん、トナーレってこういう乗り味なんだ」と、まんざらでもない表情で後席に乗車していた

ステアリングを切り込むとアルファ ロメオらしさが感じられた

モータージャーナリストの島崎七生人さんが年末年始にかけてアルファ ロメオ「トナーレ プラグインハイブリッドQ4ヴェローチェ」をインポーターの休暇中に借り出しました。実際に自分の生活の中で乗って試した印象をお届けします。

元アルフィスタはSUVの「トナーレ」をどう感じ取る?

個人的な話で恐縮だが、何を隠そう筆者はかつてアルファ ロメオのV6エンジン搭載車に5台乗り継いだことがあった。終盤の頃の164(最小回転半径の大きさに手を焼き8カ月で手放した)を皮切りに、GTVの最初の2Lターボ(タペットがイッたり、シフトノブが抜けたりした)、スタイルと走りに一目惚れした156の6速MT(走行中にクラッチレリーズがパスン!とイッた)、そして166×2台(ATをリビルド品に乗せ替えたり、運転席のパワーウインドウスイッチが何度かイッたりといろいろあったが惚れ込んで2台乗り継いだ)がその内訳。( )内にトピックのごく一部を記したが、こう見えてもいずれも新車で、大小のトラブルのほとんどは新車保証で面倒を見てもらいながら乗り切っていた。

自身の車歴ではドイツ(5台)、イギリス(3台)、日本(4台)などの各ブランドにも乗ってきたが、アルファ ロメオに乗ると、もうそのスイートな世界観が染みつき、ほかのクルマに乗れないカラダになってしまった(注:現在はイタリア車繋がりで2気筒のフィアット500)。

現役のアルフィスタだった頃には、同名のムックがネ○パブリッシングから発刊されていて、最終版のvol.14まで何かしら手伝っていたし、同じ編集部のR○sso誌の取材で乗ったネプチューングレーの166を気に入り同色の166(ともう1台はシルバー)に自分で乗ることにしたり……と、今思えば、公私共にもうアルファ ロメオにドップリなのだった。

思い返せば近年なら155、164、145、さらに156、147、GT、GTV、スパイダーの頃のアルファ ロメオには華があり、ブランドそのものの存在が魅力的だったように思う。156など「アウディやBMWから乗り換えのお客様も随分おられます」と当時のセールス氏から聞いたこともあった。

その後、159やブレラの世代から、その次のミトやジュリエッタ、さらに現行のジュリア……。今でも見かけると“ほぼ”ショーモデルのスタイルに見入ってしまうブレラは別格だが、それ以外の車種には自分が乗っていた頃のアルファ ロメオに対し今ひとつ燃えないというか冷めて眺めている自分がいる……というのが筆者の素の気持ちだ。

ところで本稿の主題は「トナーレ」である。ご承知のとおり、トナーレはステルヴィオに次いで登場した最新のアルファ ロメオのSUVだ。今はランボルギーニもマセラティもロータスもポルシェもセンチュリーも(!)SUVを用意する時代だから、アルファ ロメオからSUVが登場しても世の中の人は誰も不思議には思わない、のだろう。

だが、あの傑作V6エンジンのクォォォォ……の鼓動としなやかな足さばき、それと走るオブジェと言っても過言ではないスタイルをかつて存分に味わった身としては「アルファ ロメオのSUVってどうなの!?」の思いは少なからずあった。

バッテリー残量がある限り、積極的にEV走行をする

で、試乗車貸し出しの予定にようやく余裕が出来たとのことで、先の年末年始にかけてトナーレを借り出し、実際に自分の生活の中で乗って試してみた。

すると、なるほど、と思った。試乗車はプラグインハイブリッドのQ4ヴェローチェで、まず前提として新車の車両価格が740万円と十分に高価格車だということ。なのであれこれ思いのままに自分で手を加えるというよりも、吊るしでそのまま乗るほうがスマートだ。装備、仕様は十分だし、幸いにも全幅1835mmと扱いやすいボディサイズだから涼しい顔をして乗っていられる。

類型的なSUVのスタイルを大きく外していない外観は、息を飲むほどの個性は薄い。けれど前後の灯体に特徴を持たせる(クルマのオン/オフでメーターにも動画で描写される)などしているところが粋。試乗車はヴェズヴィオグレーと呼ぶダークグレーで、筆者の自宅の隣近所にも同系色のSUVのレクサス、マツダのCX系×2台が生息しており、一見するとどれも似た風だが、アルファ ロメオのグレーは光の加減で黄色が浮かび上がったりと、凝った色調であることが発見できた。

インテリアは“ふた山”のメーターフードがスポーティで156(や1960年代の各車)を思い起こさせる。同様に12.3インチデジタルクラスターメーターをアナログ表示にした際の放射線状の向きに数字を並べたクラシックな盤面になるのも心憎い。それとドライバーズシートが上出来で、身体をキチンと支えてくれ、長距離でも途中1度も姿勢を直さずに座っていられた。今やステアリングが上を向いていたりせず、ペダル類も(フットレストを含め)気がつけばごく自然なリーチなのは、かつてのアルファ ロメオを思うと感慨深い。

今回は日常使いということで、わが家の愛犬のシュン(柴犬:2歳)と家内を乗せ、ドッグランや買い物へも出かけた。かれこれ20年近く前、独身だった頃にはアルファ ロメオに犬を乗せてドライブするなど想像もしなかったこと。だが、筆者がアルファ ロメオ・ファンだと知ってか知らずか「ふーん、トナーレってこういう乗り味なんだ」と、まんざらでもない表情で後席に乗車していた(ように見えた)。

試乗車は「Q4」だが、現代のそれは後輪を適宜モーター(128ps/25.5kgm)で駆動する方式の電子制御4WD。パワートレインは1331ccの4気筒ターボ(180ps/27.5kgm)で、トランスミッションは6速ATの組み合わせだ。動力性能ではもちろん不満はなくマナーも自然で、バッテリー残量がある限り、積極的にEV走行も実行してくれる。

ただし標準のドライブモード切り換えでは、あえて最高の“d”を選び、このモードでのみ切り換え可能な足をソフトにし直接的なショックを緩和すると、クルマの加減速の感覚が掴みやすく、かつ乗り味が穏やかにできるためシュン(犬)を乗せている場合には運転がしやすかった。

コーナーにさしかかり、ステアリング上の切れ角で言うと90度から180度にかけてのスウーッ! としなやかに気持ちよくクルマが向きを変える様は、「おお、アルファ ロメオだ」と思わせられる場面のひとつ。もしも今「1台ください」と言える立場にあるなら悪くない選択肢だ、と思った。

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