今からでも間に合う! クルマをいたわる走り方
人間と同じようにクルマも冷え切った状態で元気よく動き出すと、負担がかかってしまいます。暖機運転と聞けば、エンジンだけを気にする人が多いですが、じつはクルマ全体にウォームアップが必要となります。あらためて暖気走行についてお伝えします。
水温計が落ち着くまではスムーズなドライビングを心がける
東洋医学では「冷えは万病の元」といわれているが、じつはクルマにとっても同じことがあてはまる。クルマの各パーツは、暖まった状態でクリアランス等が最適化されるよう設計されているため、クルマを大事にしている人は、暖機運転をきちんと行い、「エンジンの水温や油温が温まるのを待って走り出す」という人もいるだろう。しかしこの考え方はあまり正しいとは言い難い。というのも、冬場に暖機が必要な箇所はエンジンだけではないからだ。
わかりやすいのはトランスミッション。MT車で真冬の早朝走り出すと、最初はギアが渋く、シフトが入りにくいのがわかる。これはミッションオイルが冷えており、まだ粘性が高くなっているからだ。しばらく走り続けると、ミッションオイルの油温も上昇し、いつもどおりのシフトフィールが戻ってくるが、ミッションオイルは走り出す前に5分間暖機運転をしようが、10分間暖機運転をしようがほとんど温まってこない(ATにも同じことはいえる)。
そして暖機を必要としている部品はまだまだある。
デフもそうだが、タイヤやブレーキ、ハブベアリング、触媒、マフラー、ダンパーのオイル、各部のブッシュ、グリスなどもあてはまる。
いわばクルマ全体が暖まらないと、クルマのウォームアップは終わらないわけで、アイドリング状態でエンジンだけを暖めて、そのあとはいきなりブーンと元気よく走り出すのが、一番クルマにダメージを与え、いろいろなリスクを高める行為になってしまう……。
実際、外気温が0℃ぐらいの寒さが厳しい冬の朝、走り出してすぐにポーンと強いブレーキを踏んでみると、ビックリするほど早いタイミングでABSが作動する。
夏用タイヤは外気が7℃以上にならないと本来の性能を発揮しないように設計されているが、それにしても外気も路面も冷え冷えで、タイヤのゴムが冷え切り、内圧も上がっていないときのグリップの低さは、誰もが「えっ!」と驚くレベルとなる。
エンジンだけ特別扱いしたりせず、タイヤやトランスミッション、その他の部品も平等に暖機してあげるのが、正しいクルマ好きのあり方だ。
もっともその方法は何も難しいものではなく、エンジンをかけたらすぐに走り出して、15分ぐらいは優しく、おとなしく走るだけ。
メーターパネルの水温警告灯の青いランプが消えるまでは、ゆっくりスムーズなドライビングを心がけるのが、クルマにとって一番優しい接し方だ。
つまり、暖機運転ではなく「暖機走行」をしてやろうということ。長いアイドリングは地球にも優しくないし、ご近所にも音や匂いでご迷惑をおかけするはず……。今シーズンから、優しい「暖機走行」で、これまで以上にクルマを労るようにしていこう。