見どころ満載のターボGPと耐久レースに注目
まもなく開幕する2024年の東北660シリーズは軽自動車によるレースです。今シーズンも合計5つのカテゴリーが設けられ、その先陣を切るのが3月24日(日)の「ターボGP」と「耐久レース」。2023年12月3日に福島県のエビスサーキット西コースで行われた最終戦を振り返りつつ、今年の有望ドライバーや注目チームにフォーカスします。
戦闘力を高めたHA36アルトなどが大暴れの予感
新規格NAのスプリントレースを起源とする東北660シリーズだが、このふたつは過給器が付いたクルマでも旧規格でも参加できる。改造できる範囲も「東北660選手権」やスズキ「アルト」のワンメイクである「HA36カップ」より広いため、チューニングを楽しみたい人にも最適なカテゴリーなのだ。
まずは東北660ターボGPから。参戦するマシンが異なる、各クラスは下記のとおりだ。
1クラス:100ps以上のタービン交換車両(MT/AT/CVT/AGSを問わず)
2クラス:100ps以下のタービン交換車車両(MT/AT/CVT/AGSを問わず)
3クラス:純正タービン車両(MTのみ)
4クラス:AT/CVT/AGSのノーマルタービン車両
1クラスは常勝の880号車 金澤延行選手を脅かす、強力なライバルが鮮烈な復活を飾った。以前からスポット参戦していた256号車 齋藤博文選手がマシンを大幅にリニューアルした。HA23アルトをフルコン制御するばかりかアンチラグシステムまで搭載。練習走行から金澤選手に僅差で食らい付き、決勝では一時的にオーバーテイクも果たしている。パイピング抜けで順位こそ落としたものの、今季の活躍が楽しみな1台といえるだろう。
もうひとつのトピックは3クラス。開幕戦からスズキ「カプチーノ」を持ち込んでいる89号車 松山雄大選手が、同クラスはおろか1クラスに肉薄するタイムを連発した。車両規定どおりタービンは純正だが、ECUはパルスポーツにて書き換えを行い、練習/予選/決勝と他を寄せ付けない速さで圧勝。新規格に比べて軽量なことは大きなアドバンテージに違いないが、電子制御どころかABSもなくシャシーも数世代前になるマシンで、この成績はドライバーの優れた技量を抜きにはあり得ないはずだ。今シーズンは2クラスなのか1クラスなのか、上位クラスでも台風の目になってくれそう。
なお2クラスの勝者は802号車 舟山 康選手、4クラスは707号車 兵頭孝之選手だった。車種ごとのワンメイクが成立したHA36クラスは、555号車 山口吉明選手、81号車 大内たかひろ選手のラルグ水戸がワンツーで最終戦を締めくくった。今季も同一型式が5台に達すればワンメイククラスを設けることになっており、同じクルマ同士でバトルしたい人は仲間を誘って参加してみてはいかがだろうか。
耐久レースはマシンがバラエティ豊かに
いっぽう200分の決勝を争う東北660耐久レースは、各クラスを合計すると25チームがエントリーした。各クラスは下記の通り。
1クラス:過給器あり(新規格と旧規格混走)、市販ハイグリップラジアル装着可、タービン交換可
2クラス:過給器あり(新規格と旧規格混走)、市販ハイグリップラジアル装着可、タービン交換不可
3クラス:過給器なし(新規格のみ)、市販セカンドグレードのラジアルまで、改造範囲は東北660選手権3クラスと同等
4クラス:過給器なし(新規格と旧規格混走)、市販ハイグリップラジアル装着可、3クラス以上の改造、2クラスや旧規格なども可
※Sタイヤは全クラス装着不可
トピックは、不成立になることが多かった2クラスに、ダイハツ「コペン」とスズキ「アルトワークス」の3台が参加したこと。初代モデルのL880Kコペンは中古車の価格が安いうえ、純正タービン限定なのでコストを抑えられるのだろうか。燃費を考えると総合優勝は難しいかもしれないが、382号車 SEIWA Aチームが125周を走り切りクラス1位を獲得した。
なお今シーズンはHA36アルトワークスの参戦が決まっており、燃費で大きなアドバンテージを有するだけに台風の目になりそうである。最大の激戦区である3クラスは、60号車 黒エッセがポールポジション、2番手は東北660選手権のドライバーが集う540号車 Moty’s MKGレーシング、3番手は34号車 海鮮市場 長崎港&Garage34という予選結果からのスタートに。
決勝は60号車 黒エッセがトラブルで長時間のピット作業となり、惜しくもトップ争いからの離脱を余儀なくされてしまう。最終的には淡々と走り続けた540号車 Moty’s MKGレーシングが130ラップで優勝を飾り、2位は燃費にも優れるHA36アルトの311号車 チームARYイトマン アルトが129ラップ、3位は127ラップで同じHA36ながらAGSの363号車 ジジイでも走れるアルトだった。NAも徐々にHA36アルトが増えており、今後10年は主役を張りそうな予感がする。
学生クラスは山形大学の382号車 極貧!ぐる凹愚民が予選2番手から逆転しての優勝を飾り、秋田大学の957号車 PON-52 エッセはポールからポジションを落とすも2位に踏みとどまる。なお3位の725号車 イケダフォーミュラ アルトは125ラップで同一周回という大接戦だった。
ちなみに今季はレギュレーションがひとつ追加され、OBや部外者のドライバーが1名のみに制限される。助っ人に頼るだけでは上位は望めず、チーム全体の底上げが必須だろう。
改造範囲が広く新旧規格を問わないNAの4クラスは、かつて東北660選手権でもチャンピオンに輝いた、760号車 ナローテックヨコハマ耐久アルトが優勝した。2位は東北660選手権の常連がタッグを組んだ829号車 チーム関東 ARYが1周差で、3位は非MTRECのホンダ「トゥデイ」である84号車 巻渕自動車 ルバード トゥデイが同一周回。車種がバラバラなのも4クラスの面白さだ。
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2024年もターボGPはスポーツランドSUGOを含め全4戦、耐久レースはリンクサーキットを加えた全3戦で開催される。参戦を考えている人や雰囲気を知りたい人は、当日に併催される練習会にエントリーするか、エビスサーキット東コースへ見学に行ってみてはいかがだろうか。