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ボルボは「安全から環境」へ! 新型BEV「EX30」はゴミからできている!?【Key’s note】

ボルボEX30

小型BEVとして注目を集めているボルボEX30

生産から廃棄までを含めて環境に優しいボルボ

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ゴミをかき集めて作ったボルボEX30」です。そう聞くと眉間にシワが寄ってしまいそうですが、とてもサステナブルな取り組みなのです。

各所に用いた再生材料を活かしたデザインを採用

「ゴミをかき集めて作った新型ボルボEX30」

こんな刺激的な書き出しをすると、ボルボはコストを抑えたクルマを高額で販売するのかと誤解されそうですが、あながち誤りとは言い切れません。

ニューモデルの「EX30」は、ボルボ初の純粋なBEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)です。これまでもボルボはBEVを生産販売してきましたが、それは内燃機関を搭載するハイブリッド車からエンジンを取り除き、大容量のバッテリーに置き換えた派生モデルでした。その意味でEX30は内燃機関の搭載をまったく考慮していません。ガソリンを一滴も注ぐ必要のない純粋なBEVとして開発されたボルボ初のBEV専用車なのです。

同時にEX30は、ボルボのラインアップの中で最もコンパクトなモデルになります。全長は約4.2mですから、ライバルで言うならばレクサス「LBX」あたりでしょうか。豊富なSUVラインアップを展開するボルボの末っ子のようなイメージですね。

というように、EX30はボルボにとって新たな扉を開く重要なモデルになります。ボルボは2030年までに完全なBEVのみを販売するようになると宣言しています。それまでに残された時間は6年しかありません。矢継ぎ早のBEV化が欠かせない。これから次々とBEVモテルを投入していくその流れの中の、最初の1台なのですから力の入れようも驚くばかりです。

なぜボルボがBEV化を急ぐのか……。それは電気自動車を販売することが最終ゴールではなく、カーボンニュートラル、地球上の二酸化炭素を減らすことが目的なのです。BEV化はあくまで手段でしかありません。

ですからボルボは、ライフサイクルを通じて二酸化炭素を削減するための野心的な計画を進めています。BEV化によって走行中に一切のCO2を排出させないことはもちろん、生産工程でのCO2排出を抑えることに加えて、クルマとしての人生を全うし、スクラップになるまでを通じて環境に貢献しようとしているのです。そのひとつが、廃棄物の再生利用です。

ボルボのダッシュボードは、亜麻で織られています。大地で生育する植物です。いわば草。草ですから繊維質です。その繊維は柔らかいのが特徴です。古くから衣類などの素材に使用されてきました。それをダッシュボードの素材として織り込んでいるのです。

しかも、それを隠そうともせず、明らかに草を織り込んだことがわかるようにデザインとして取り入れています、その潔さにブランドとしての自信がうかがえます。

廃棄された塩ビ製の窓枠やロールシャッター、あるいは廃棄プラスチックを粉砕して練り込んでもいます。練り込んだ亜麻同様に隠そうとはせず、冬の空にキラキラと輝く星のような模様を描いています。

粉砕した廃棄プラスチックと聞かされれば、たしかにペットボトルのキャップの一部に見えなくもないのですが、聞かされなければ塗料を練り込んだかのようにオシャレに見えますね。デニムを連想させる装飾も個性的です。ジーンズの製造時に排出される二次廃棄物を再生し、リサイクルデニムの繊維を50%も使用しています。

ちなみに、EX30のインテリアには、スイッチやボタンといった物理スイッチが極力省略されています。それゆえ、操作性にやや難があるのですが、それすらも廃棄処理のしやすさを考慮してのこと。プラスチックのスイッチや配線ケーブルが少なければ、それだけライフサイクルでのカーボンニュートラルに貢献するというわけです。

廃棄物を再利用しつつ生産し、走行中には一切のCO2排出を控える。最終的に廃棄される時にも可能な限り二酸化炭素の排出を抑える。ボルボはEX30を廃棄物を再利用しながら生産することで、ライフサイクルの環境貢献度を高めたのです。

これまで「安全なボルボ」としてブランドイメージを確立してきましたが、これからは「環境のボルボ」として認知されそうですね。

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