タイではEVの販売台数が1年で7倍に急成長! BYDは98倍!
2024年3月27日~4月7日にタイで開催された第45回「バンコク・インターナショナル・モーターショー」(以下バンコクモーターショー)は、12日間で来場者数161万人という世界最大級のイベントに。現在タイ市場ではEVと中国メーカーのシェアが急増しており、会場では新規に出展したメーカーも含めて、中国、韓国、ベトナムのアジア系が目立ちました。日本で見る機会のほぼない、それらのクルマをまとめてお見せします。
タイ政府のEV優遇策で急加速し、早くも価格競争のフェーズに突入
かつてタイ市場は日本メーカーの販売シェアが9割を占める日本車王国だったが、ここ数年で風向きが変わり、2023年の日本メーカーのシェアは前年比-7.6%の77.8%となり、販売台数も約60万3000台と前年比-16.8%の落ち込みをみせている。
その分だけ大幅にシェアを伸ばしたのが、中国系メーカーを中心としたEVだ。タイはコロナショックの影響もあり景気が停滞していて、2023年の新車販売台数は前年比-8.7%の約77万6000台となった。そんな中で、EVの販売台数は前年比でおよそ7倍の約7万4000台を記録。とくに、日本でも2023年に展開をスタートしている中国BYDは、タイ上陸が2022年だったこともあり、2023年は前年比98倍(!)となる3万432台を販売している。結果として、タイの新車市場でのEV比率は1.2%から9.5%へ激増し、ICE(内燃エンジン車)やHEV(ハイブリッド車)を含めた中国メーカーのシェアは約5%から11%と急成長を遂げたのだ。
この背景には、タイ政府のEV優遇政策がある。同国内にEVの生産拠点を将来的に整備することを条件に、EV購入時に補助金を支給するとともに、輸入時の関税も最大で4割引きとする政策を採用。BYDなど中国メーカーを中心に10社以上がタイ政府と覚書を結んでいる。2022年から導入されたEVの購入補助金は1台あたり最大15万バーツ(現在のレートで約63万円)と大規模で、それが上記のような、EV販売の急増を後押ししたというわけだ。
ただし、2024年に入ってから補助金が10万バーツ(約42万円)に減額されたため、今年2月の実績ではEVの販売台数が激減してしまった。これが一時的な反動に留まるのかどうか、EV各社はタイ市場の反応を探って次なる一手を求める意味もあるのだろう、今回のバンコクモーターショーの展示にも力が入っていた。
中でも最大手のBYDは今回のバンコクモーターショーで、主力EVの「ATTO 3」の最新モデルをタイに導入すると同時に、価格を既存モデルより約2割も安く設定すると発表。ATTO 3の標準モデルで89万9900バーツ(約376万円)となる。
ちょうど中国本国でも大幅な値引き攻勢を行っているBYDとしては、EV市場の成長が「踊り場」にさしかかったタイ市場でも、いち早く価格競争力を強化するという形だ。
200万円の激安EV「ルーミン」がタイで発売
いっぽう、中国の国有自動車メーカー大手である長安汽車(CHANGAN)は2023年にタイ市場へ参入し、今年1月にタイ国内でのEV生産工場を稼働させたばかり。今回のバンコクモーターショーでは、格安EV「ルーミン(Lumin)」の投入を発表した。
ルーミンは中国本国では2022年6月に発売された3ドア4人乗りのEVで、全長3270mm×全幅1700mm×全高1590mmというコンパクトサイズのシティコミューター。一充電の航続距離は301kmとなっている。
驚くべきはその価格で、50万バーツを切る47万9000バーツ(約200万円)! 前述のBYD ATTO 3が値下げして89万9900バーツ、また長城汽車(GWM)のコンパクトEV「オーラ グッドキャット」が79万9000バーツであることを考えれば、タイにおいても破格の安さであることがお分かりいただけるだろう。
政府によるEV優遇政策が2022年にスタートしてからわずか2年でEV市場が急速に拡大し、そして補助金の減額による成長の谷間を迎えているタイは、早くも価格競争のステップに突入しつつある。中国メーカーを中心にアジア各国のメーカーが続々と参入し、さまざまな施策を試行錯誤している。東南アジアのみならず、世界のEV市場を占ういわば実験場としても、注目に値するマーケットといえる。
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2024年のバンコクモーターショーに出展した4輪の中国系ブランドは、最大手BYDを筆頭に、長安汽車(CHANGAN)、長城汽車(GWM)、NETA(合衆新能源汽車)、ZEEKR(ジーカー/吉利汽車)、そして元はイギリスのスポーツカーブランドで現在は上海汽車グループのMG、XPENG(小鵬汽車)、AION(広州汽車集団)の8つ。また、韓国勢ではヒョンデとキアも出展していたほか、ベトナムからもVinFast(ビンファスト)が出展していた。画像ギャラリーではこれらアジア系ブランド11ブースの写真をたっぷり収録しているので、じっくりご覧いただきたい。