乗る前に点検をするだけで事前に防げることも
タイヤはクルマの部品の中で唯一路面と接しています。走行中の路面の衝撃を吸収したり、走る・止まる・曲がるというクルマの基本性能に影響してくる部品ですが、地面と接している部分だけに、いろいろなトラブルに見舞われる可能性もあります。今回はタイヤに関する「傷」について解説します。
残りの溝があれば大丈夫というわけではない
つねに地面と接しているタイヤには、摩耗やパンクの他にもさまざまなトラブルが発生することがある。とくに各種の傷は見落とすとバーストなどにつながることにもなるので、定期的な点検が重要になるわけだが、そうしたタイヤの傷にはいくつか種類があるので、その主なものを確認しておこう。
ピンチカット
ピンチカットとは、タイヤ側面やサイドウォールの一部にできる瘤(こぶ)、盛り上がったような変形のこと。縁石にタイヤを擦ったときや、縁石に強く乗り上げた際の衝撃などでタイヤ内部のカーカスコードが切れてしまったために起こる現象。空気圧の不足や過積載、タイヤの製品不良(初期不良)でも起きることがある。そのまま走り続けるとバーストを起こす危険性が高いが、修理は不可能なので、発見したら即タイヤ交換を行うようにしよう。
テアー
テアーとは溝部の亀裂のこと。空気圧不足、過荷重、過度の高速走行などが原因とされるが、経年劣化、オゾン、紫外線などの影響も大きい。このテアーも見つけたらタイヤの寿命だと思って早期に交換を考えよう。
チッピング
トレッド部分が、チップ状にゴム剥離やゴム欠けを起こす現象のこと。砂利道など悪路での走行や過積載などが主な原因。経年劣化によるゴムの硬化も疑われるが、乗用車では割と稀になってきたトラブル。
クラック
サイドウォールのゴム表面のひび割れのこと。経年劣化あるいはオゾン・紫外線が主な原因。細かいひび割れで、タイヤ内部のコードにクラックが達しなければ、一応継続使用は可能だが、クラックがタイヤ内部のコードに達している場合は要交換。クラックの深さはユーザーでは判断しにくいので、タイヤ専門店で一度チェックを受けること。
そして、クラックが入る=古いタイヤともいえるので、4〜5年以上使用しているタイヤでクラックを見つけたら、迷わず新品タイヤに交換してしまうのが得策だ。その他、コード切れ(CBU)やトレッドセパレーション(トレッド剥離)など大きな損傷も、少なからず報告されている。
これらはパンクしたまま一定の距離以上を走ってしまった場合やその修理不良の可能性もあるが、空気圧不足や外傷が原因であることも多い。
タイヤはゴムと繊維からなる有機物で、正しく使用していても4〜5年で寿命を迎える消耗品。とくに空気圧不足などシビアな使用状況が続くと、もっと寿命は短くなるので、日頃の点検と定期的な空気圧調整は欠かせない。
傷はなくともタイヤはナマモノ、賞味期限があります
またエコタイヤなどは、耐摩耗性に優れていて、溝の減りは少なくても、経年劣化によるゴムの硬化は避けがたく、残り溝があってもクラックなど上記の損傷が発生していることがあるので、溝よりも使用年数で交換時期をジャッジした方が安心だ。
タイヤはナマモノ、鮮度が命なので、サイドウォールの4桁の数字の刻印(凹型)をチェックし、製造時期を把握しておくことも肝要だ(4桁の数字のアタマの2桁が製造週・下2桁が製造年。例えば「0524」なら、2024年/第5週の製造)。