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10年目にして一新! マツダ「ロードスター」は事実上のモデルチェンジ!? ドライビングファンは現代版ロータス「エラン」でした

車両の旋回挙動を安定させる新開発のアシンメトリックLSDをS以外のMTモデルに装着

10年目にして電子プラットフォームを刷新

登場から10年目にして、電子プラットフォームを刷新したマツダ「ロードスター」。ヘッドライトのデザイン変更を筆頭に、モダンな大型モニターを採用、さらにはアシンメトリックLSDの新搭載(上級グレード)や電動パワーステアリングのシステム変更など、さまざまな改良が行われました。それにより、さらに「ロードスター」らしい走りの楽しさを高めています。

異例のマイナーチェンジに踏み切った

「NDロードスター」がデビューしてから早10年が経とうとしている。スポーツモデルの長寿化が珍しくない昨今、10年のモデルライフと聞いて昔ほど“長い!”とは思わなくなった。とはいえ、先代「NCロードスター」がちょうど10年間作られたものだから、NDにも“そろそろ感”が漂っていたのは事実。特別仕様車「990S」の登場などは、半ばファイナルバージョン的な受け止められ方をしたものだった。

ところが2023年、マイナーチェンジと呼んでも差し支えないほど大きな改良を受けたから皆驚いた。このタイミングでの大変更は異例のことだといっていい。要するにマツダはNDロードスターをもうしばらく造ると宣言したに等しい。次世代(NEになる? 暗示的だなぁ〜)はまだまだ先だよ、と。

おそらく次世代では環境性能への要求も待ったなしとなる。今モデルチェンジするとなれば、大きめのバッテリーと電気モーターを積むとか、安全装備を充実させるなど、何にしても重量増は避けられない。けれども、ロードスターの命は軽さだ。とても苦しい決断を迫られる。ならば軽さで成功したNDの魅力を損なわない範囲でなんとか作り続け、(エンジンなりバッテリーなりの)技術的なブレークスルーを可能な限り待とうではないか。そのために異例のマイナーチェンジに踏み切ったというわけだ。

運転支援やハッキング防止といった電子面での最新レギュレーションに適合させようと、電子プラットフォームをそっくり入れ替えている。これが今回のマイナーチェンジ最大のポイント。

これまでの常識で言えばプラットフォーム変更を伴えば立派なフルモデルチェンジであった。今や物理的なプラットフォームと同様に重要な位置付けとなった電子プラットフォームをそっくり入れ替えるとなれば、事実上のモデルチェンジに等しい。マツダも随分と思い切ったもの。

思い切りついでに、これまで我慢していたことも一気に採り入れたようだ。“そろそろ換えてみない?”という声も多かったというヘッドライトのデザイン変更を筆頭に、モダンな大型モニターを採用、さらにはアシンメトリックLSDの新搭載(上級グレード)や電動パワーステアリングのシステム変更(モーターや取り付け位置)は上級グレードのダイナミクス向上に大きく寄与している。

重量増も公道で体感できないレベル

とはいえ、苦渋の選択も見え隠れする。買う側の反応が気になるポイントとしては、なんといっても車両価格の上昇だろう。グレードによって6〜8%も上昇してしまった。ずっとロードスターを買うか買わないか悩んできた筆者などは、思わずカーセンサーを検索して中古車相場を再チェックしたものだ。もちろん、これまで以上に安く感じてしまう。

さらに残念なことには、1t切りで話題となった特別グレードの「990S」がラインアップ落ちした。新たな装備増で1t切りが難しくなったらしい。ならばいっそ、ということでインテリア(センタートンネル付近など)の見栄え質感を上げてきた。嬉しいけれど、なんだかちょっと気が緩んだ気も? お菓子の山を前にちょっとだけと思いつつ気がつけばいっぱい摘んでしまった子ども、のような感じさえ漂う。

990Sがなくなってしまった、とはいうものの、それでも車重1tちょいのライトウェイトスポーツカーであることに変わりはない。LSD装備ナシのベーシックグレード「S」で1010kg。正直いって20kgの違いなどメタボなドライバーにとっては公道で体感できるような差ではない。そんなことよりも3ペダルとシフトレバーを駆使して操れば、相も変わらず意のままに動いてくれる=ドライビングファンに満ちたオープンカーであったことが大事。これはもうスポーツカーのお手本だ。現代版ロータス「エラン」だと思う。

オープンデフの魅力は今なお十分。けれども新登場の「S レザーパッケージ Vセレクション」も気になるところだ。重量だってまだ1030kg。新しいLSDも入ったことだし、ベースグレードより65万円も高くなるもののその価値は十分あるだろう。

吸気音もドライバーの脳を心地よく刺激

新LSDのおかげで、ワインディングロードではとにかくコーナリングが安定していた。コーナーの不安感とはつまり自分の感覚とずれて車体が動いているように感じることから生まれる。荷重の移動などを自らコントロールできないためで、テクニックの問題でもあるし、車体の重量バランスなども大いに関係する。

そこをなんとかクルマ側で抑えてくれる。重たくて高価な電子制御システムを使うことなく、だ。視線が安定して、ハンドルの操作にも余裕が生まれた。加えて、電動パワーステアリングのフィールもまたいっそう素直でなめらか。オープンデフのスッピンコーナリングもいいけれど、薄化粧もまた素晴らしい。

ロングドライブでも軽量ながら安定した走りに感心する。RFはもちろん、ソフトトップでも長距離を無難にこなす。さりとて大きなクルマをドライブしているような大船感があるわけじゃない。短距離走からマラソンまでオールマイティな筋肉に包まれている、とでも言おうか。一体感があって長距離でも疲れない、そんな理想的なスポーツカーといえよう。

吸気音もドライバーの脳を心地よく刺激してくれた。RSグレードに標準のインダクション・サウンドエンハンサーのおかげだ。RS以外の新型ロードスターを買うなら絶対選んでおくべきディーラーオプションである。

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