5月中には車両をアメリカに送りマシンを仕上げる
2024年6月23日、標高4302mの山を誰が一番早く駆け上がることができるかを競う「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」の決勝がスタートします。この競技に、日本から日産「パルサーGTI-R」を持ち込み参加することがわかりました。ドライバーの神子 力選手は33年ぶり3度目の挑戦です。
日本からは2台のヤングタイマー車両が参加
標高4302mの山を誰が一番速く駆け上がることができるかを競う「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(通称パイクスピーク)」は1916年に初開催。以後世界大戦などで開催中止の年もあったが、2022年には無事に100回目の記念大会を開催している。同じアメリカで開催されているインディアナポリス500マイルレース(通称インディ500)に次ぐ、世界で2番目に長い歴史を持つレースである。
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの舞台は、アメリカ・コロラド州にあるパイクスピーク。ロッキー山脈の南端に位置するこの山に設けられているパイクスピーク・ハイウェイという観光道路で、毎年アメリカ独立記念日の直前、6月末に開催されているレースである。
スタート地点が標高2862m、ゴール地点はパイクスピークの頂上(標高1万4115フィート=4302m)で、約20km区間の1本道(コーナーは156個ある)を1台ずつアタックするのだ。ちなみにヒルクライム・レースが開催される日曜日のみ、このハイウェイ全線が封鎖されて、レースが行われるが、それ以外はこの競技区間を通しでタイムアタックする機会は一切ない。レースウィークでも、練習走行はその競技区間を3つに分けて、それぞれ1/3ずつの練習しか行うことができない。
富士山よりも高い標高なので夏の開催であるにもかかわらず、頂上付近では降雪ということもたびたびある。そして何よりも頂上付近は空気も薄いことからエンジン(内燃機関)出力は低下し、ドライバーへの身体の負担も大きい。以前は完全に舗装されていなかったのでダートコースのような印象が強いが、2012年には全面舗装となり、現在ではスリックタイヤでのアタックも可能。2輪部門は死亡事故が続出したため、現在は4輪部門のみの開催となる。その最速記録は、ロマン・デュマが2018年にフォルクスワーゲン「I.D.R パイクスピーク」(電気自動車)で出した7分57秒148である。
その102回大会には現時点で68名がエントリーリストに名を連ねており、日本からは2名が参戦する。そのひとりは八木敏史選手の「スターレット」(No.831 1990年式トヨタ スターレットGT)で、すでにロサンゼルスに向けて船積みし、まもなく日本を離れることとなる。そして、ここで紹介するのは、日本から参戦するもう1台、神子 力選手の「パルサー」(No.33 1991年式日産パルサーGTI-R)である。
エンジンは急遽調達中
神子選手は、長年「サムライスピード」のプロデューサーとしてパイクスピークへの挑戦に携わってきている。これまで「サムライスピード」では、奴田原文雄選手および大井貴之選手を起用して挑戦を続けてきたわけだが、今回は神子選手自身が33年ぶり3度目の挑戦をすることとなった。その相棒に選んだのが、1991年及び1992年にパイクスピークに参戦した日産パルサーGTI-Rである。
もちろん、当時の個体はすでに無くなっており、今回の参戦に向け、新たに1991年式日産パルサーGTI-Rを入手。しかし手元にやってきた車両は、「Squirrel nest(リスの巣)と呼びたい」というほど車両の各所からクルミが出てきたという。保管場所が森の近くだったのが原因のようだ。
それでもボディ側は順調にロールケージや安全タンクのインストールなどの作業が進んでいたが、エンジンは開けてみたらとても使えるものではないということが発覚。新たなエンジンを探し出し、現在その新たなSR20DET型エンジンを調達中だという。5月中には車両をアメリカに送り、現地でカラーリングなどを施して、パイクスピークの「パイクスピーク・オープン」クラスに臨むとしている。
今回のパイクスピークには、最速記録を持つロマン・デュマがフォード「F150」のEVで参戦する。ほかにもヒョンデからは、山の男として4年連続で最速タイムを記録している2023年の覇者ロビン・シュート。3度の「山の男」として殿堂入りを果たし、今回がパイクスピークへ30回目の挑戦となるポール・ダレンバックも参加予定だ。さらに、WRCにヒョンデから参戦しているダニ・ソルドも加えて参戦するなど、ニュースが盛りだくさんである。
パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム第102回大会の公式スケジュールは、2024年6月17日(月)に公開車検、18日(火)から4日間の練習走行および予選セッションが行われ、21日(金)の夕方にはファンフェスタが開催される。そして休息日を挟み、23日(日)現地時間朝7時半からパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの決勝がスタートする。