落札価格は標準モデルと変わらない?
2024年3月8日、RMサザビーズがドバイで開催したオークションにおいてロールス・ロイス「シルバー スペクター シューティングブレーク」が出品されました。2017年にドイツに輸出されたのち、改造が始まった同車は、2500時間以上を費やし18カ月後に完成しました。現在までの走行距離は1万7965km。このシューティングブレークを手に入れる機会は、2度とないでしょう。
トータルで7台の生産が計画された?
いかにも中東のドバイで開催されたオークションらしい1台といえるのが、2015年式のロールス・ロイス「シルバー スペクター シューティングブレーク」だ。もちろんこのモデルはロールス・ロイス自身が製作したものではない。実際にロールス・ロイスの「レイス」をベースに、ボディの後半を特注ボディに変更し、リアにハッチゲートを設けた、いわゆるシューティングブレークのスタイルを生み出したのは、創業が1968年とすでに50年以上の歴史を誇る、ベルギーのコーチビルダー、キャラット・デュシャトレ。
彼らが素材とするのは、ロールス・ロイスやベントレー、あるいはメルセデス・ベンツ、そしてマイバッハなどのハイエンド・ブランドだが、2000年代を迎えてからはレンジローバーやレクサスでも独自のロングホイールベースモデルを最高級の装備を採用して生み出すなど、その活動はさらに積極的なものになりつつある。ちなみにここで紹介するロールス・ロイス「シルバー スペクター シューティングブレーク」は、同社のプランではトータルで7台の生産が計画されていたが、そのすべてがオーナーのもとへ届けられたのかどうかは不明である。RMサザビーズは、結局ワンオフ・モデルになったと解説するが……。
フェラーリの「550マラネロ」をベースとした「ブレッド・バン・オマージュ」や、レンジローバーの「アドヴェンタム・クーペ」などの作品を手がけたオランダのデザイン・スタジオ、ニールス・ファン・ロワ・デザインがスタイリング。レイスをベースとするシューティングブレークのスタイルは、そもそもの細長いボディの機能性とあいまって、クーペのようなすらりとしたプロポーションでまとめられている。
デザイナーのファン・ロワは、このモデルをさりげなく1930年代のシューティングブレークの全盛期にリンクさせつつ、イギリスのクラシックな自動車アイコンの象徴的な、ソフトでクリーミーなビジュアル・キューを埋め込むことを意図してデザインしたと語った。ボディワークの新しいセクションはAピラーから伸びており、シルバー スペクターにさらにスポーティなプロポーションを与えている。
ルーフは軽量で強靭なカーボンファイバー複合材の大きなピースから手作業で作られており、その結果ユニークなルーフラインのシルエットが生み出された。後方に向かってスムーズに流れるルーフラインはそのままフルサイズのテールゲートに続き、ここから広々としたトランクルームへとアクセスすることができる。
2015年に生産後、ロールス・ロイスによって所有され、その後2017年にドイツに輸出された後に改造が始まったこのシルバー スペクターは、それからキャラット・デュシャトレの技術者が2500時間以上を費やして、また30万ユーロを超える費用をかけ、18カ月後に完成した。現在までの走行距離は1万7965km。このシューティングブレークを手に入れる機会は、おそらくはもう訪れることはないだろう。
それを強く意識したのだろう、RMサザビーズはエスティメート(推定落札価格)を27万5000ドル〜32万5000ドル(邦貨換算約4097万5000円〜4842万5000円)に設定。落札価格は28万625ドル(邦貨換算約4125万円)と、日本でベースとなったレイスが販売されていた時の標準モデルのプライスとほぼ等しくなった。フロントに690psの6.6L V型12気筒エンジンを搭載する、まさに最強のシューティングブレーク。その価値はこれからどう変わっていくだろうか。