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素敵なリバー・リゾートに潜むスカンクの罠!? 「ルート66」から寄り道してラフリンの街へ【ルート66旅_50】

ウォーター・タクシーに乗ってみた。最短距離を移動するのではなく、わざわざ対岸まで近寄ってラフリンの全景を楽しませてくれる

ひとりの男がたった1代で築いたカジノとリゾートの街

広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。イリノイ州シカゴから西に向かい、アリゾナとカリフォルニアの州境へ近づいてきました。今回はちょっとルート66を北に外れて、ネバダ州の最南端にあるラフリンの街へ寄り道してみます。

最後のカリフォルニア州へ入る前にリバー・リゾートのラフリンで休息を

ブラック・マウンテンの険しい山道とロバが闊歩するオートマンを通過して、グランド・キャニオンを刻んだコロラド川を渡ればカリフォルニア州に入る。すぐに壮大な景色を堪能できるモハヴェ砂漠に突入するのもいいが、時間に余裕があれば少しだけ進路を北に向けてみるのもいいだろう。

目的地はアリゾナとカリフォルニアの州境から約50km、コンパクトなカジノの街として知られるラフリンだ。カジノと聞いて最初に思い浮かぶのはラスベガスだが、ラフリンは同じネバダ州の最南端というロケーション。とはいえカジノを併設したホテルは10軒ほどと規模は小さく、よくも悪くもラスベガスほどの賑やかさとは無縁といっていい。そのせいか宿泊している人の年齢層も高めで、喧騒が苦手な私にとっては落ち着く街だ。

もうひとつラフリンを気に入っている理由は、ほとんどのホテルが川沿いに建っていること。リバー・ビューの部屋からゆったりと流れるコロラド川を見下ろしつつ、音楽を聴いたりコーヒーを飲んだりする時間は至福というほかない。

川沿いのホテルはすべて歩行者専用道路で繋がっており、それぞれのホテルに立ち寄りながら散歩するのも一興。アメリカは狂犬病の清浄国じゃないため野生の哺乳類に触るのはNGだが、この道を歩くとネコやアライグマやスカンクなど、やけに多くの動物と出会う。

スカンクには絶対に近寄らないこと!

余談だが珍しいからといって、絶対に刺激しちゃいけないのはスカンク。彼らが身を守るために放つ臭いは想像を絶するレベルで、5m離れた相手に分泌液を命中させることが可能なうえ、風向きしだいで悪臭が2km先まで達することがあるとか。私もアメリカに行き始めてまだ間もないころ、運転中に車内がとんでもない臭いで満たされ、何ごとかとビックリして急停止したことがある。

しかし車内に何か変なモノがあるはずもなく、外に出てみても悪臭はひどくなるばかりだ。早くその場から立ち去ろうとクルマを走らせると、数十mほど先に轢かれたと思われるスカンクが……。アレより酷い臭いは人生で一度も嗅いだことがないので、見つけても絶対に刺激せず遠巻きに見るだけにしておこう。

ウォーター・タクシーに乗ってみよう

スカンクのせいで話がだいぶ逸れてしまったが、ホテル同士を移動する手段はもうひとつある。それは小さなボートで夜まで運行しているウォーター・タクシー。各ホテルの前に設けた桟橋から予約なしで乗船でき、私が最後に行った2019年で片道4ドルだったと思う。単なる移動手段というよりも対岸のアリゾナ州に近いところからホテル群や、透明度が高くゆったりした流れの川底にいる魚たちを眺める観光のひとつだ。

最後に、この街を作り上げた人物、ドナルド・ジョン・ラフリンを紹介したい。ミネソタ州で生まれた彼は1950年代にラスベガスへ移住し、カジノ経営を主体とするビジネスで大きな富を築いたという。あるとき自家用機で現在のラフリン上空を飛んでいた最中に、リゾート地としての可能性に目を付け小さなモーテルを購入。以降も次々にビジネスを成功させ、町の名前に自身の姓である「ラフリン」を冠し、近隣の橋や空港の建設および拡張にも多大な資金援助を行って街の発展に貢献する。なおドナルド・ジョン・ラフリンは2023年10月22日、自分が作り上げたラフリンで92歳の天寿を全うした。

ひとりの男がたった1代で築いたカジノとリゾートの街。本来の目的であるルート66から外れはするものの、壮大なアメリカン・ドリームを肌で感じられる場所だ。長く過酷なモハヴェ砂漠を越える前に立ち寄る価値は大いにある。

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