最終モデルは国産FRスポーツの傑作車だった
日産「スカイライン」といえば「GT-R」と連想されるほど、GT-Rはスカイラインを語るうえで欠かせない存在となっています。しかし、そのスカイラインもベースグレードがあるからこそ高性能化できたという過程があります。GT-Rばかり取り上げられる今だからこそ、あらためて評価されてもいい3台のベース車両スカイラインの魅力とは?
「スカイライン」GT-Rの強みはセダンベースであること
R32、R33、R34の型式を聞くと、第2世代のスカイラインGT-Rのことを頭に浮かべてしまうだろうが、第2世代GT-Rはセダンがベースだ。歴代スカイラインGT-Rは、セダンベースの高性能車というのがアイデンティティで、その手法はハコスカの頃から変わらない。じつはそれが「スカイライン」GT-Rの強みでもある。
ベースがセダンだから懐が広く、限界が高いうえにエッジがフラット。だからドイツ・ニュルブルクリンクでも速く、速いのに乗りやすい。そんなGT-Rが出来上がったのも、ベースのセダン、そしてクーペがあったからこそ。そういう意味で、R32の「GTS-tタイプM」、R33の「GTS25t」、R34の「25GTターボ」の直6 FRターボの3台はもっと評価されていいと思う。あらためて、この3台を振り返ってみよう。
スカイラインGTS-tタイプM(R32)
1989年に登場した、R32のスカイラインGTS-tタイプMはなんといってもハンドリングがよかった。
1980年代の後半、日産社内で「1990年にシャシー性能が世界一と評価されるクルマを作る」ことを目標に「901活動」がはじまるが、その対象車種に選ばれたのが、R32「スカイライン」、Z32「フェアレディZ」、P10「プリメーラ」、「インフィニティQ45」だった。
とくにR32スカイラインのメイン車種、FRの2LターボのタイプMは、当時ハンドリング性能世界一といわれたポルシェ「944ターボ」を具体的な走りの目標に据え、運転する楽しさと奥深さを追求。操縦性もしっかりしていて乗りやすく、国産FRスポーツのなかでは、ユーノス「ロードスター」と並んでピカイチの存在だった。
スカイラインGTS25t(R33)
R32 GTS-tタイプMは、とてもよくできたシャシー性能を持っていたが、2LターボのRB20は少しアンダーパワー(215ps)だった……。
それに対し、R33スカイラインGTS25tは、500cc排気量アップのRB25ターボを搭載。このRB25ターボはただ排気量が増えただけでなく、可変バルブタイミングのNVCSが備わっていたので、中低速トルクがすごく出るようになり、ドライバビリティが一気に向上!「リニアチャージコンセプト」という応答性重視のターボエンジンは圧縮比も高めで、レスポンスの良さが際立っていた。
しかしボディはR33 GT-Rほど補強が徹底されておらず、少し切れ味が鈍くなってしまったのは残念なところ……。
スカイライン25GTターボ(R34)
FRスカイラインの完成形といってもいいクルマがR34のスカイライン25GTターボだ。R33で進化したエンジンに、劇的によくなったボディを与えられ、本当に楽しいFRスポーツに仕上がっていた。操縦性もよく、コントロールの幅が広がり、スピードも速く、乗りやすい楽しいクルマだった。GT-Rの陰に隠れてしまって目立たないかもしれないが、国産FRスポーツの傑作車と呼んで間違いない1台だ。
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今となってはコンディションのいい個体は限られているだろうが、可能であればいつまでも手元に置いておきたいFRのスカイライン。もしも欲しいと思っているなら早めの行動をしたほうがであることは間違いない。