5速MTが設定されていた
アンフィニ「MS-6」は、マツダ「クロノス」の派生モデルとして登場。スタイリングは、フォード「テルスター」の5ドアハッチバックにクロノスのフロントマスクを組み合わせたものでした。個性的なスタイリングは、いま見ると魅力的にも見えます。絶滅危惧車となっている同モデルの魅力に迫ってみましょう。
欧州では1997年まで販売
1989年にスタートしたマツダ5チャンネル体制は、「ユーノス ロードスター」のような名車を生み出した一方で、「カペラ」の後継車種として登場した「クロノス」と、それをベースとした派生車種たちは日本国内では惨憺たる販売となり、マツダの経営が傾くことになってしまったと言われている。そんなクロノス派生車の中でも、日本国内と海外で大きく評価が異なったのが、日本国内では「アンフィニ MS-6」として販売された5ドアハッチバック車だ。
1991年11月から販売が開始されたMS-6は、車名の通りアンフィニ店専売車種としてリリースされていた。じつは前月に登場していた日本フォード扱いのフォード「テルスター」の5ドアハッチバックモデルにクロノスのフロントマスクを組み合わせたものとなっている。
搭載されるパワートレインはクロノスと同じくV型6気筒の1.8Lと2Lの2種類で、どちらのエンジンにも4速ATのほか、5速MTが設定されていたのは当時を感じさせるエピソードと言えるだろう。ちなみに車名につけられた「MS」とは、Megalo=大いなる+Spirit=想いの頭文字を採ったもので、アンフィニ店のラインアップに並んだMSシリーズへ込められた想いが強かったことを感じさせてくれる。
ただ日本国内ではそもそも5ドアハッチバックの需要が低かったことに加え、クロノスよりも全高の低いクーペスタイルとなっていたことで後席のヘッドクリアランスが不足気味という声もあった。そもそもクロノス派生の兄弟車種が多すぎたため没個性となってしまい、販売面では苦戦を強いられることとなってしまう。
メーカーとしてもデビュー4カ月後の1992年3月には直列4気筒2Lエンジンを搭載した4WDモデルや、1993年2月にはマツダ独自のプレッシャーウェーブスーパーチャージャーディーゼルを搭載したモデルを追加するなど、バリエーションの拡充を図ったが販売面は好転せず、1994年6月に早々に生産を終了してしまった。
一方、日本国外ではカペラ時代と同じく「マツダ 626」の車名で販売。クロノスを「626セダン」、MS-6を「626ハッチバック」として販売しており、もともと5ドアハッチバックがポピュラーであった欧州では堅調な販売をマークし、1997年まで販売が続けられていた。
その後、1997年に登場した新型カペラにも輸出仕様には5ドアハッチバック仕様が設定。その後継車種として2002年に登場した「アテンザ」では再び日本仕様に5ドアハッチバックが復活したが、主力モデルになることは叶わず、3代目アテンザでは再び消滅の憂き目にあっている。