ギリギリ手の届く範疇だった純白のR32
日産を代表するスポーツカー「GT-R」を得意とするチューニングショップには、個性的なオーナーと愛車が訪れます。三重県にある「CREWCH(クルウチ)」もそのひとつ。同店に通うオーナーたちのなかから、3年前、19歳で1992年式のR32型「スカイラインGT-R」を購入した金原陽嗣さんを紹介します。中古車市場相場が高騰するGT-Rを若くして手に入れた理由とは一体?
両親から心配されるも反対はされず
2002年生まれの金原さんが、最初の愛車として選んだ1992年式のBNR32。学生時代にクルマ好きとなり、高校を卒業したらスポーツカーを買うぞ、と決めていた。自分よりも10歳年上のクルマを購入できたのも、間違いなく兄が先鞭をつけてくれたおかげだという。
「最初は懐具合と相談して、ホンダのS2000をターゲットにしていたのですが、中古車情報サイトを見ると、もう少し頑張れば形が好みだったR32 GT-Rが買えることがわかって方向転換しました。買うときには親から『なんでこんな古いクルマ買うの?』『お金はどうするの?』とは言われましたが、反対されなかったのは兄がマツダRX-7に乗っていて、免疫がついていたからでしょうね」
予算は随分と背伸びをした。それでも購入可能なGT-Rは極上車とはいかず、ダッシュボードやモール類などのところどころに経年劣化が見てとれたが、直しながら乗り続けていくことを前提にクルウチの久留内社長と相談しながら車両を選んだ。ボディ、前席シートのコンディションのよさ、グループAレース参戦ベース車として500台限定で販売されたGT-R NISMO用のエアロパーツが組み込まれていたのも決め手となった。
これから楽しもうというときにエンジンブロー
ただ、購入時で車歴は29年。各部を点検してからの納車とはなったが、残念ながらエンジンブローに見舞われてしまう。結局、車両価格にプラスしてさらに200万円を捻出するはめとなったが、
「いずれはオーバーホールを覚悟していましたので、リフレッシュができたと思って納得しています。作業と同時にBNR34用タービンと東名ポンカムを装着し、フルコンのLINKでマネージメントするなどファインチューンを実施。さらに冷却系や足まわりも見直して、一生添い遂げていく覚悟もできました。もちろん、セキュリティも付けましたよ」
と金原さん。想定外の出費も重なり、毎月の支払いという負担は大きいが、エンジンと足まわりを見直したことで、機関周辺やフットワーク系の不安はひとまず解消。これからは見えるところで気になる内装関係に手を加えていくそう。すでにシフトブーツやサイドブレーキブーツはロブソンレザー製に交換済みで、いずれは浮きが目立つダッシュボードを中古の良品に交換するか、本革で張り替えを予定。時間を掛けてひとつひとつ健康な状態にしていくとのことだ。
「何をやるにもお金は必要ですし、維持するための修理にもお金はかかります。けれど、所有する満足度はピカイチですし、自分の好きな仕様を目指して、あれやりたい、これやりたいと考えている時間が本当に楽しい。それが仕事に打ち込むモチベーションにもなっています。お金をかけてしまったので簡単に降りられないのもありますが、それ以上に降りたくないという気持ちが強いです」
R32のどこが好きではなく、すべてが好みだと語る。夢と希望がある限り、愛車とのGT-Rライフは人の繋がりを含めて楽しいことが待っている。お金はなくても心を豊かにしてくれる。GT-Rとはそういうクルマなのだ。