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業界のコニサーがオススメする20代で乗っておくべき10台のクルマとは?「ロードスター」「空冷911」それとも…

1989年式ユーノス ロードスター

クラシックカーの入門編から上級編まで、若者にお勧めしたいクルマたち

昨今では、価格高騰ばかりが話題に上りがちで、若者には縁遠い感のあるクラシックカー/ヤングタイマー・クラシックではありますが、感性がフレッシュで、まだ体力もある20代のうちにこそ乗っておきたいクルマも確かに存在します。これらをステップとして、より上級カテゴリーに駆け上がるもよし。あるいは、もしも本当に気に入ってしまったなら「生涯の相棒」とするにも相応しいクルマたち10台を、筆者の嗜好と偏見まる出しでセレクトしてみました。

死ぬまでに一度は乗って損はない入門車編

生産台数が多く、しかも名車と呼ばれ愛されるクルマには、クルマが持つ魅力がたくさん詰まっている。こうしたクルマに早くから親しんでおくことは、クルマ趣味としてまず間違いのない選択である。かつてはかなり手頃に購入できていたが、昨今では価格が高騰しているのがネックではある。

ユーノス/マツダ ロードスター

「30歳までに乗っておくべきクルマ」を問われたら、現代車では現行のマツダ「ロードスター」。そして、クラシックカー(ヤングタイマー)まで範囲を広げれば、初代ユーノス ロードスターか2代目マツダ ロードスターを筆頭に挙げざるを得ないだろう。

「MG-B」など、比較的ユルめの英国製ライトウェイトスポーツカーを20世紀末のテクノロジーの性能基準で復活させるという基本コンセプトは、現代におけるヤングタイマー・クラシックとして見ても秀逸なもの。

モディファイやドレスアップの余地が残されていることも、それぞれの個性やスキル、テイストを磨くべき時期にある20歳代のエンスージアストにとっては、大切な要素と考えられる。

フォルクスワーゲン タイプ1

単一モデルとしては世界でもっとも大量に生産されたVW「タイプ1」(ビートル)だが、同時に趣味のクルマとしても長い歴史を誇る。そして、今世紀初頭の2003年まで生産されたメキシコ製でも構わないので、一度はステアリングを握っておくべきクルマの筆頭格と感じられる。

ただし、タイプ1でもほかのモデルであっても、空冷VWはよほど肌が合ってしまうと一生その世界に留まることになる可能性も高いようだが、それはそれで良きクルマ人生であるとも思われよう。

フィアット ヌォーヴァ500

言わずと知れた「チンクエチェント」ことフィアット2代目「500」は、自動車史上最もキュートなモデルのひとつでありながら、最終型でも18psの空冷2気筒499ccエンジンを、とくに初期型ではシンクロメッシュ機構を持たないギヤボックスを使いこなして走らせるという、かなり高等なスキルを要求してくる。

でも、運転しながら思わず笑ってしまうほどに愉しい。トラブルで路肩に停める羽目になってしまっても、正直なんだか愉しい。このクルマとともに過ごす、あるいは格闘する20代は、とても鮮烈な記憶として生涯残るに違いないのだ。

クラシック ミニ

BMC時代、「オースティン」および「モーリス」ブランドで販売されたMk-1やMk-2は、今や世界的なコレクターズアイテムとして認知されているが、インジェクション仕様の最終型「ローバー ミニ」だって立派なクラシックカー。自動車という乗り物の楽しさを小さな車体に凝縮したような、ミニ固有の楽しさは若いうちに経験しておきたい。

今なお、新車を作りあげることが可能なほどにパーツ供給体制も充実していることもあって、生涯の友にもなり得るミニ。ステップアップとして、より旧いミニへと乗り換えてゆく「先祖返り」型エンスーとなってしまうのも、昔から定番・王道のパターンだった。

MG-B

実用性が高くてリーズナブル、なのに本格派のブリティッシュ・スポーツカー。エンスー界の門を叩こうとしている若い人たちに、筆者がいつも第一に薦めるのが「MG-B」である。

空冷VWやミニが、良くも悪くもそれぞれのモデルの世界だけで完結できるのに対して、MG-Bはオースティン「ビッグヒーレー」やジャガーなど、同じ英国製のスポーツカーへと展望が広がるというのも、無限の可能性を持つ若きエンスーの将来のためには、とても重要な特質であろう。

それでも「トゥアラー」ことオープンモデルは、とくに初期モデルではけっこう価格も上昇している感もあるが、クローズドハッチバッククーペの「GT」は、日本ではタマ数こそ少ないものの、もし見つかればかなりリーズナブル。

ミニと同様、新品モノコックまで入手できるほどにパーツ供給状況が良好であることも、このクルマをお勧めする大きな理由である。

本物を見極める目を養うための上級編

ここから先は安価に入手できる入門編的モデルから一歩進み、一般的にはかなり高価とされるクルマ。あるいは趣味的観点からしてもかなり上級向けのクルマをセレクトした。

若いからといって「サイフが軽い」とみなすのは失礼なこと。ホンモノを見極める目を養いたいと考える20代の人たちに、以下の本格派クラシックをご紹介したい。

ポルシェ911(空冷)

自動車通と呼ばれるベテラン愛好家諸氏に「人生最後のクルマは?」と尋ねると、かなりの比率で返ってくるのが「ポルシェ911」という回答。でも、とくに空冷の911は、若くて反射神経が良好なうちに、少なくとも一度は味わっておいたほうが良いかとも思われる1台でもある。

本当はナロー時代が望ましいと言いたいところだが、930シリーズや964シリーズでも構わない。ただ、できることならば「ポルシェシンクロ」を採用していた1986年モデル以前の個体を選び、緻密かつ大胆な操作で「乗り手がクルマに合わせる」時代の空冷ポルシェを全身で体感してほしいと思うのだ。

ホンダS600/S800

日本人の若きエンスージアスト候補生が味わっておくべき国産クラシックカーとして、もっともお勧めしたいのが「ホンダ・エス」。開祖「S500」は入手が極めて困難だが、比較的見つけやすい「S600」も「S800」もそれぞれ別の個性を持ち、それぞれが魅力的。とくに極上のエンジンフィールは、筆者の拙い表現力では到底説明できない。

60年前、欧州のエンスージアストを初めて瞠目させた国産車を、日本の若きエンスーにはぜひお薦めしたいのだ。

アルピーヌ ルノーA110

先般AMWの「旧車ソムリエ」コーナーにおいて、素晴らしいA110-1600Sを取材させていただいた際にオーナーさんから伺ったのは、まだ30代になったばかりのころに入手して以来、34年間も大切に愛用してきた……というお話。スポーツカー史上まれに見る傑作と、それだけの長い時を重ねることができていることが、堪らなく羨ましかったのだ。

もちろんアルピーヌ ルノーA110は、この時代のスポーツカーとしては出色の出来。クルマと一体となってコーナーを駆け抜ける感触は、若いうちに体験しておいたほうが良い気がする。

フェラーリ308GTB/GTS/ディーノ308GT4

対象となる20代はごく少ないと思われるが「いずれはクラシック・スーパーカーの世界に足を踏み入れたい」と考える若い人もいるかもしれない。そんな野心家な若きエンスーにお勧めしたいのは、キャブレター時代のV8フェラーリである。

「308GTB/GTS」はやや高価だけど、4座席のディーノ/フェラーリ「308GT4」ならば若干リーズナブル。購入後のサービス体制もランボルギーニや、同じフェラーリのV12モデルよりは若干とっつきやすい。にもかかわらず、ホンモノのクラシック・スーパーカーにして、真正のクラシック・スポーツカーでもあることには太鼓判を押したい。

ステアリングやクラッチなどはかなり重めのセットで、大胆かつ繊細な操作が要求される。でも、重くて渋いスロットルを踏み込んで4基のキャブレターに巧くガソリンを送り込み、最上の吹け上がり感が味わえるようになったころには、ランボルギーニ「ミウラ」やフェラーリ「デイトナ」だって乗りこなせるスキルを得ていることだろう。

オースティン セブン

自身が大の戦前車好きである筆者にとって、じつは丸1世紀も前に誕生したこのモデルこそが「10選」の大本命。

「クラッシュボックス」と呼ばれ、シフトアップ&ダウンの双方でダブルクラッチを要求する完全ノンシンクロのトランスミッションも、エンジン始動時の点火時期や燃圧の調整なども、すべて上級のヴィンテージカーたちとまったく変わらない。

セブンを運転できるようになったなら、W.O.時代のベントレーでもブガッティでも操ることができる。また、このクルマで油まみれの「オイリーボーイ」となったころには、エンジンのオーバーホールを自宅のリビングで済ますくらいの整備スキルも、きっと身に付けていることだろう。

大丈夫。100年前のセブンであっても、パーツに関する心配は無用なのだ。

武田公実ノミカタ

内燃機関を搭載した自動車の行く末さえも不透明になってしまっているこのご時世で、しかもこれからクラシックカーの世界の門を叩こうなどという奇特な20歳代が、果たして存在するか否かは意見の分かれるところだろう。

でも、真にクラシックカーに憧れる若者がいるなら、ほんの少しの勇気を出して、階段を上ってみてほしいと切に願う。本当に好きになれたならば、クラシックカーは生涯にわたって続けられる大人の趣味なのだ。

まずは最初の愛車とともにさまざまなイベントなどに参加し、同好の士を見つける。あるいは、自動車趣味の指針となるメンテナンス工場と知り合うにも、まずはとっかかりとなる愛車があった方が望ましい。それは間違いのない、真理と思われるのである。

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