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まるで「One-77」の弟分! アストンマーティン「ヴァンテージ」は155馬力もアップするマイナーチェンジで「汗臭さ」がなくなった!?

アストンマーティン ヴァンテージ:大幅な改良を受けた4L V8ツインターボと、最終減速比を上げるなど再調整したZF製8速ATの組み合わせで、最高速度325km/h、0-100km/h加速3.5秒

スペインのサーキットでヴァンテージを試乗

アストンマーティンの2シーターFRスポーツ「ヴァンテージ」がマイナーチェンジを行い、内外装を大胆に変更し、パワートレインとシャシーの性能が向上しました。ブランドイメージ向上の鍵を握る主力モデルを、自動車ライターの西川 淳氏がスペインで試してきました。

ドライバーとの一体感を重視するスポーツカー

マクラーレンの性能とロールス・ロイスの豪華さを足して2で割る。アストンマーティンの狙うポジションは英国ブランドらしいの二極の統合、つまりパフォーマンスとラグジュアリーを高いレベルで両立することにある。

すでにプロダクトにおいてはその成果が出始めている。例えば「DB12」ではスタティックなクオリティを大幅に引き上げると同時にパフォーマンスも驚くほど進化した。「DBX707」もインテリアの見栄えや質感を上げてきた。さらに2024年はあと2種類のラインアップが揃い踏みとなる。まずは今回の主役、マイナーチェンジした「ヴァンテージ」と、そしてフラッグシップモデルの登場が予定されている。なかでもフラッグシップモデルには過日発表された新開発V12型ツインターボユニットが積まれる予定だ。

新型ヴァンテージはDBXと並ぶ販売の主力モデルである。言い換えればブランドイメージ向上の鍵を握る量販車だ。マイナーチェンジの手法は「DB11」から「DB12」と同じ。フロントマスクとインテリアを大胆に変え、パワートレインとシャシーの性能を大きく引き上げた。DB12はGT寄りのスーパーツアラーだったが、ヴァンテージはドライバーとの一体感を重視するスポーツカーを志している。

従来のヴァンテージより大幅にパワーアップ

基本的にDB12と同じメルセデスAMG製V8ユニットを積むが、モデルのキャラに合わせてセッティングされている。それでも最高出力665ps/最大トルク800Nmと従来のヴァンテージより大幅にアップ。組み合わされる8速ATも変速時間を速めるなどスポーツカーらしさの演出にこだわった。ボディやシャシーの改良にも抜かりはない。ボディ剛性アップやトレッド拡大、新たなEデフ採用、最新シャシー制御導入などなど多岐に及んでいる。

スペインのセビリア郊外にあるサーキットのピット。超高級ブランドを目指すアストンマーティンらしく、ピットとは思えないほどラグジュアリーな雰囲気だ。そこでマイナーチェンジ版の実車を初めて見た。

従来型に比べ4割近く面積を広げた凸グリルを新たなマスクデザインが抱えている。30mmも広げられたワイドスタンスと相まって、ぱっと見には限定モデル「One-77」の弟分のようだ。これなら日本人好みの地味なシルバーでも迫力が出そう。

乗り込んでみれば外観のワイルドさとは裏腹にラグジュアリーな仕立てのインテリアだ。ダッシュボードまわりはDB12とおなじような機能の配置で、嬉しいことに物理スイッチを可能な限り残しつつ、全体としては非常にモダンに仕上がっている。着座位置も下がったようだ。

「汗臭さ」がなくなり洗練された走りに

まずは空いた山間部のカントリーロードを走りまわる。第一印象は随分と洗練されたな、だった。以前のヴァンテージにあった汗臭さがない。インテリアの見栄えや質感のみならずライドコンフォートによっても乗り味の洗練さが強調されている。デフォルトのドライブモードはスポーツ。明らかにボディは強くなっており、それゆえシャシーもしなやかによく踏ん張ってくれる。コーナリングの軌跡がつねに思い通りで、曲がりやすさ、とくにアクセルオフでのノーズの向きの変化がFRらしく、しかも自然で楽しい。

ドライブモードをスポーツ+にセットして攻め込むと、途端にスパルタンになった。フラットではない公道の路面ではリアアクスルの動きにつねに神経を尖らさなければならない。もはや一般道で目を三角にして走る時代ではないのだ。脈拍を上げない程度の領域でマシンとの対話を楽しむ方が心地よいというもの。

その限りにおいてドライバーはクルマからの制御を恩着せがましいと思うことなく、あたかも自分の技量のうちで走らせているという感覚に浸ることができる。それこそが新たなドライバー・エンゲージメントのあり方というものだろう。

真の一体感はサーキットで味わうことになった。まずはドライブモードをスポーツ+にし、シャシー制御も効かせて、変速もオートマチックで走らせる。かなり高い速度域(ストレートでは250km/h)で走り続けると、トルコンオートマチックの制御やカーボンセラミックブレーキの制動性に若干の不満が出るものの、総じて楽しいFRスポーツカーに終始した。

サーキット走行において重宝したのが、ESPの介入レベルを調整する機能(アダプティブ・トラクション・コントロール、8段階で1が最小)だ。いろいろと試してみた結果、真ん中あたりの5を使い、ある程度リアの滑りを許してコーナーを脱出した方が、例えばタイトヴェントの立ち上がりでのリアアクスルの上下動も抑え込まれ、気持ちよく走らせることができた。

さらに付け加えるならば、ワインディングロードでもサーキットでもV8エンジンはつねに力強くヴァンテージの前進を支えている。吸排気サウンドにも工夫が凝らされて、課題であった官能性の表現も随分と上手くなっていた。このあたりもまたDB12と同じ進化の度合いを見せたといっていい。

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