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世界一過酷な24時間レースが史上最短の7時間に…ニュルブルクリンクは今年も波乱の展開でした【Key’s note】

ピットロードで待機

翌日、レース再開に備えてグリッドに整列

世界一過酷なレースは今年も波乱の展開

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「2024年のニュルブルクリンク24時間レース」についてです。世界一過酷と言われる耐久レースに地元ドイツのチームとタッグを組んで参戦した木下さん。今年は天候に悩まされ、翻弄されたレースでした。決勝日に起こった波乱の展開とは?

荒れた路面だけではなく天候もころころと変わる

2024年のニュルブルクリンク24時間が終了。今年も僕はトーヨータイヤを履くリングレーシング(ドイツ)のチームから参戦したのですが、とんでもない結末を迎えてしまいました。

ニュルブルクリンクはルクセンブルクやベルギーに近いドイツの中西部に位置しています。アイフェル地方の小高い丘へ、へばりつくようにレイアウトされています。GPコースと北コースを合わせて1周約25kmという途方もなく長いレーシングコースの、そのほとんどは森の中なのです。ですから、天候の変化に悩まされることも少なくありません。

「24時間に四季がある」

そう囁かれることもあるほどに、爽やかな青空が広がっていたと思っていたら、突然黒い雲がサーキットを覆い、コースをウエットコンディションに陥れることも少なくありません。

10年ほど前になりますが、乾いた路面用のドライタイヤで走行していたレーシングマシンを、突然襲ってきた「雹」が多重クラッシュに追い込んだこともありました。というほど、天候の変化が激しいのです。

ですから、この世界一過激なレースと囁かれるニュルブルクリンク24時間で勝利するには、目まぐるしく変化する環境に対応する能力が求められます。

そもそもコース幅は狭く、コースオフエリアもミニマムです。路面は荒れていて、なおかつ高速コーナーばかりであり、そのほとんどがブラインドです。一度ドライビングミスをすれば即ガードレールの餌食になります。そんなサバイバルコースの天候が不純なのですから、極めて完走率が低いのです。

2024年のレースも予想通り天候に翻弄され、予選日から空の色は目まぐるしく表情を変えました。晴れ用のスリックタイヤで走行を開始した途端に雨が降り始める。ドシャ降りの雨の中を走行していたのに、青空が一気に路面を乾かす。そんなことが繰り返されたのです。

スタート直後の雨で怒涛のスタートとなったが……

スタートドライバーを仰せつかった僕は、決勝スタートに備えてスリックタイヤでグリッドに整列したのですが、スタート前セレモニーの最中にポツポツと雨が降りはじめました。1周のフォーメーションラップを走行中に雨脚は強まり、スタートラインを横切る前に緊急ピットイン、ウエットタイヤで猛追を開始することになったのです。

というような天候に翻弄されたレースなのですが、ついには濃霧が発生。わずか7時間を走行した時点で走行中断に。結局はそのまま24時間が過ぎてしまいました。「世界一過激な24時間レース」は、「史上最短の24時間レース」になってしまったのです。

天候不順はニュルブルクリンク名物でもありますが、それにしても濃霧で7時間レースになってしまうとは……。世界一過酷というのは健在ですね。これもニュルブルクリンクの名声を高めることになったのですから驚きです。

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