カレラGTを上回る史上最強のロードゴーイングカー
2024年5月10日、RMサザビーズがモナコで開催したオークションに、2011年モデルのポルシェ「911 GT2 RS」が出品されました。911シリーズで最強のモデルとして知られている「GT2 RS」は、997型では、500台限定で生産されました。そのうちの287台はさらなる軽量化をした仕様となっており、出品車もその1台でした。
軽量化に徹したポルシェ911の最強モデル
ポルシェが、997型の「911 GT2」をリリースしたのは2007年秋のことだった。GT2としては57台のロードカーが製作された993型、そして同じく1287台を生産した996型911に続くもので、すでに911シリーズで最強のモデルという認識は、カスタマーの間で十分に定着していた。
その進化型として2007年に誕生した「911 GT2 RS」が、開発時に最も重視したのは、リアに搭載される3.6Lの水平対向6気筒ツインターボエンジンのパワースペックだけではなく、ベースの911 GT2からどれだけの軽量化を図ることが可能なのかというストイックな挑戦にもあった。
実際にポルシェが911 GT2 RSで得ることができたGT2比のパワー&トルクのアドバンテージは、最高出力では50ps、最大トルクでは20Nm。実際の数値は620ps、700Nmという数字になる。
一方の車重は同様の比較で70kg軽量化され1370kgを達成。この数字を実現するには、ベースの「911ターボ」から全輪駆動のシステムを廃止。バネ下は、チタン製のエキゾーストシステムや、現在ではお馴染みのオプション装備となったPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)を標準採用。
さらにフロントフードをアルミニウムからカーボンコンポジッド素材に変更したほか、サイドとリアのウインドウを樹脂製にしている。サスペンションでもより軽量なスプリングの採用を行うなど広範囲に及ぶ策が施されているのだ。軽量なセンターロック式ホイールや、インテリアで見られる軽量カーペットなども、911 GT2 RSの証である。
ポルシェが911 GT2 RSに与えた開発コードは「927」。これは当時日産の「GT-R」が持っていた、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでのラップタイムを意識したもので、のちにポルシェは911 GT2 RSで、7分18秒にまでタイムを短縮することに成功したと主張した。ちなみに911 GT2 RSは、ベースのGT2がホモロゲーション用にわずか20台の生産に留まったのに対して、こちらは500台の限定生産だった。
出品車はイタリアに納入されたワンオーナー車
今回RMサザビーズのモナコ・オークションに出品された911 GT2 RSは、イタリアに納車された2011年モデルで、かつワンオーナー車。キャララホワイトのボディカラーに(フロントフードは前で触れたとおりカーボン製となる)、ブラックをメインとしたインテリアカラー、リアワイパーとサンルーフのデリート・オプション(レス・オプション)、軽量リチウムイオン・バッテリーなど、この時代の911 GT2 RSの中で同様の仕様を採用したモデルは、じつに287台にも及ぶ。
参考までに出品者が現在までに走行した距離は、わずかに2万9959km。997世代のプラットフォームを究極の形に進化させた911 GT2 RSは、マニュアルトランスミッションを搭載した史上最強のロードゴーイングカー(カレラGTさえ上回る)と評することもでき、当然のことながら市場での評価は非常に高い。
その強烈なパフォーマンスと軽量性、そしてマニュアルトランスミッションの組み合わせで、ファンの間からはしばしば「ウィドウメイカー(未亡人製造機)」とさえ呼ばれることも多い997型911 GT2 RS。最高速は330km/h、0-100km/h加速は3.5秒というこのモデルへの注目度はやはりモナコ・オークションでも高かったが、RMサザビーズが31万5000ユーロ(邦貨換算約5470万円)~35万ユーロ(邦貨換算約6080万円)というエスティメート(推定落札価格)を提示したのに対して、落札価格は29万1875ユーロ(邦貨換算約4930万円)に留まった。人気が高騰するのは、まだまだこれからと見るのが妥当なのだろうか。