フェラーリ・ファンなら一度ならずとも必見の博物館を紹介
世界の自動車博物館を巡ることをライフワークとしている原田 了氏。今回2024年初夏の旅では北欧とイギリスに引き続き、モナコとスイスの自動車博物館を取材することができました。どんなクルマと出会えたのかお伝えしていきます。
再びの手違いから搭乗不能かも? の危機を乗り越える
イギリスでの博物館取材を終え、ヒースロー空港を午前7時発のルフトハンザ便で出発しフランクフルトに向かいます。ヒースローまでの往復に関しては日本航空(JAL)便で、コペンハーゲンで共同運航となる英国航空(BA)のチェックインカウンターでトラブルがあったのですが、今回はルフトハンザ(LH)でオンライン予約したLH便だったからトラブルもなくチェックイン。スムーズにフランクフルトまでの旅を楽しみました。ところが……。
フランクフルトでの入国審査でミニトラブル。入国審査官から帰りのチケットの提示を求められたのですが、ヒースローではパスポート・チェックインだったものですから帰りのチケットを確認する手はずをすっかり忘れており、スマホを相手に悪戦苦闘。入国審査官も、しばらくは提示を求め続けていましたが、そのうち我慢できなくなったのか(?)パスポートに入国スタンプを押しながら「行っていいよ」と。ちょっと馬鹿にされた気がしたのは気のせいか……。
レンタカーにフィアット パンダを予約していたのに……
で、もうひとつのハプニングはレンタカー。一番安いクラスということでフィアットの「パンダ」を予定していたら、何と2クラス(?)も上になるシュコダ「オクタヴィア」のステーションワゴンが用意されていたのです。クラスが上がっても料金は変わらないから、普段なら「ラッキー!」となるのですが、せっかくならオペルのコルサを用意してほしかった、というのが実感。
ただし最新モデルゆえのハプニングもあって、シガーソケットがないために持参したカーナビが使用できません。サブのスマホに入れたプリペイドSIMも不調で、メインのスマホでドコモの「世界そのままギガ」を使用し、Googleマップで対処することに。しかしこのGoogleマップ。頼もしいことでは右に並ぶものがありません。なにせ日本語で案内してくれるのですから英語が苦手なエトランゼにはピッタリです。
事前に連絡するも取材不可な博物館も……
というわけで博物館です。当初の計画ではドイツからフランス、モナコ、イタリア、スイス、ドイツと大旅行をしながら興味深い博物館を巡る予定にしていましたが、そのうちいくつかは取材不可能となりました。事前に広報さん宛てにメールを送っていたのですが、うまく担当者に(こちらの真意が)届いていなくてメーカー系の3カ所は、ドイツを出発する前日に電話連絡がついたものの、親切に「明日ならいいよ」と言われてもねぇ。
そしてもう1カ所はフランスの自動車博物館ガイドに乗っていた博物館で、マトラの「MS670」やベアトリス・ローラのF1GPカー、それに数多くのWRCラリーカーが収蔵されているようで、大変気になっていたのですが、博物館名で検索して訪ねて行くと別荘地の一角に辿り着き、一度市街地まで戻り今度は住所を検索して訪ねて行くとさっきの別荘地に辿り着くありさま。この別荘地にあるかも、と思いつつも、どうやら休館したようだと判断し南フランスの避暑地を後にモナコに向かったのでした。
大公の愛したクルマたちに感動しスイスの新しい博物館に感激
モナコではレーニエ大公の愛したクルマたちを収蔵展示している博物館、S.A.S.ビンテージカー・コレクション(Collection de Voitures Anciennes de S.A.S.)を訪ねて行きました。山々をトンネルで貫く高速道路からモナコの市街地に降り立つと、そこはもう別世界。憧れていた「モナコGPの舞台」に東洋からのエトランゼが降り立ったのです。
博物館は、モナコGPでトンネルを抜けたF1GPカーが、海沿いを駆けて最終コーナーの手前、折り返しとなるラスカス・コーナーの手前、海沿いのコースとホームストレートに挟まれたエリアにありました。エントランスから改札を抜けて順路に従って階段を降りると、そこにはフェラーリ「365GTB4」、いわゆるデイトナ・クーペとポルシェ「908」が並んで入館者を出迎えてくれました。
基本的にこのフロアは旧車でもロードカーが専門で、ロールス・ロイスやパッカード、キャデラックにドライエなどのビンテージカーと、ランボルギーニやフェラーリ、マセラティなどの「スーパーカー」、そしてDBやサンビーム、チシタリアなどのライトウェイトスポーツまで、レーニエ大公が愛したクルマたちが勢揃い。このラインアップを見るだけで大公のクルマに対する愛情が感じられ大満足。
フロアエンドの階段で地下1階から1階に戻ると、そこはもうF1GPマシンが集うGPワールド。現在はフェラーリに特化した企画展でも開催しているのか1950年のフェラーリ「125」から近年のモデルまでが大集合。とくに大好きだった1970年代の「312」シリーズに再会できて嬉しかった。フェラーリ・ファンなら一度ならずとも必見です。
モナコからはふたたびフランスを経てイタリアへと、高速道路で約340kmを一気に走り、ミラノで夕食をとり宿泊地のロカリタ・カルケラへ。コモ湖のほとりだと思いきやどんどんと湖から離れて山中に。スマホのGoogleマップからは「右方向です。その先3km道なりです」「左方向です。その先5km道なりです」と何度も何度も繰り返され、結局40kmほど山間に入ったホテルに到着。施設も翌日の朝食にも大満足して次の目的地、スイスはローマンスホルンの博物館、オートバウ・アドベンチャーワールド(autobau erlebniswelt)を目指します。
きっちり見ていくと1日がかりになるほどの展示車両
イタリアとスイスの国境であるスプルガ峠を越えてスイスに入ります。その先、つづら折りの峠道を下って行くのですが、今から40年前にオベ・アンダーソンがトヨタ「スターレット」のCMで走り話題になった「悪魔の梯子段」を思わせるようなワインディングで大いに楽しませてもらいました。もっとも観光客も少なくなかったので安楽運転で、シュコダ オクタヴィアの快適性も堪能できました。
途中、思っていた以上に時間を食ってしまいオートバウ・アドベンチャーワールドに到着したのは午後2時過ぎになりました。急いで撮影を始めたのですが、その収蔵展示車両の多さに驚きました。120台余りを撮り終えたところで館内の証明が落とされてタイムアウト。レーシングマシンからロードカーまで見応えのあるラインアップで、きっちり見ていくと1日がかりになりそうです。個人的には1970年代から1980年代の「マーチF2」やスポーツカーレース用のマーチが数多く展示されていたのがとても印象的でした。
トヨタ2000GTやスバル ドミンゴにも会えた!
翌日訪れたのはエミール・フレイ・クラシックス(Emil Frey Classics)とスイス交通博物館(Swiss Museum of Transport and Communication)。前者は個人博物館で今回が初の訪問でしたが、後者はスイス交通博物館財団が運営する公的博物館で2010年に訪れて以来14年ぶり2度目の訪問となりました。
エミール・フレイ・クラシックスは、朝の7時半からカフェがオープンし、ミュージアムは10時に開館するとのことでしたが、7時過ぎに現地に到着しオープン少し前にカフェでコーヒーを飲み、取材させてほしいとお願いしたところ8時過ぎから特別に取材撮影させていただくことになりました。
早速、カフェと同じフロアのクルマを撮影し、いよいよ展示館の撮影に入りました。展示館は3フロアで構成されていて収蔵車両も十分な台数となっていました。レーシングカーの展示は数少なく、純粋なレーシングカーとしては唯一、トヨタ・エンジンを搭載したシェブロン「B34」が展示されていました。トヨタ・エンジンを搭載したF2ということで、これからちょっと調べてみようと思います。またベストコンディションのトヨタ「2000GT」やスバル「ドミンゴ」も好印象でした。
見たかったモデルが不在だったスイス交通博物館
続いて訪れたスイス交通博物館ですが14年前と同じくがっかりしてしまいました。これはクルマ関連の展示が限られていることと、壁一面にクルマを展示して、その中から1台ずつ選んで1階中央のステージに運んでくるというもの。イベントとして楽しむ入館者もいるとは思いますが、クルマそのものを見てみたいと思うファンにとっては物足りないと思います。14年前にも同じようにレポートしたのですが、今回も同様です。
さらに今回、もっとがっかりしたのは見たかったモデルが不在だったこと。じつはスイスの自動車メーカーとして知られるモンテヴェルディは、本拠を構えていたバーゼルでプライベート博物館を運営していました。しかし、こちらが廃館となり、その収蔵モデルが、このスイス交通博物館に移管されたとの情報があり、無理やり今回のスケジュールに組み込んでいたのですが、壁面の、モンテヴェルディの車名を書き込んだケージは全て車両不在。
また車両3~4台が展示されていたであろうモンテヴェルディの特設スペースも「もぬけの殻」となっていました。インフォメーションで確認してもモンテヴェルディの不在理由が分からず不満は増すばかり。本当に残念な訪問となりました。
次回は必ず訪れたい博物館
ドイツでの滞在最終日にはドイツトヨタとオペルのワークス・コレクションを取材するつもりでいましたが、メールを送っただけではこちらの意向が伝わっていなかったようで、電話連絡してやっと意向が伝わったようです。でも滞在最終日に「明日なら……」と言われても叶うはずもなく、泣く泣くフランクフルト周辺で1日を過ごし、翌日早朝のBA便でフランクフルトからロンドンに移動。夜のJAL便で帰国の途につきました。次回は、7月から8月にかけてのアメリカ取材旅日記をお送りしたいと思っています。