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あなたの街でも走ってる? 小型バス界の隠れた名車、日野「ポンチョ」とは…丸目ランプはダイハツ「ムーヴカスタム」の流用でした

日野自動車 ポンチョ:ユニバーサルデザインを全面的に取り入れている

キーワードは「ポンと乗ってチョこっと行く」

都市部から山間部まで、とくに狭隘路の多い地区で活躍する日野自動車の小型バス「ポンチョ」をご存じですか? ポンチョは「ポンと乗ってチョこっと行く」をキーワードとして、「誰もが気軽に乗れる」をコンセプトに開発された小型バスです。見た目の愛らしさも相まって、バスという公共交通機関でありながら、親しみやすいデザインの車両になっています。

ユニバーサルデザインの指標をもとにスタイリング

日野自動車「ポンチョ」のエクステリアで目を惹く愛らしい丸形のヘッドライトは、なんとダイハツ2代目L900系「ムーヴカスタム」から流用し、コスト低減を図るなど斬新さも特徴のひとつだ。

多くの人がバスといえば全長11m前後の大型バスを思い浮かべるだろうが、ポンチョはロングボディでも全長7mと短め。ショートボディに至っては全長6.3mとバスとしては驚きの小ささが特徴だ。全幅も2080mmとなっており、長さと幅に関してはマイクロバスのサイズとなっている。

日野ポンチョがもっとも活躍しているのが、地域に密着したコミュニティバスの用途だ。定員は30人程度で乗降時の運賃収受を考慮した場合、ドアが車体中央にあるマイクロバスよりも運転席に近い場所にドアのあるポンチョは扱いやすい。

路線使用を前提としている設計のポンチョは、ユニバーサルデザインを全面的に取り入れている。たとえばフロアの80%を低床フラットフロアにし、高齢化やバリアフリー社会にも最適な構造となっているのも人気の秘密だ。乗降用扉は前後とも(前扉のみのモデルもあり)にアウタースライド方式で、戸袋スペースなどで室内空間を犠牲にしない工夫もされている。

初代ポンチョは半国産だった

過去には、日野自動車から「リエッセ」というポンチョとほぼ同サイズの小型バスが販売されており、ポンチョ同様コミュニティバスの用途で活躍していた。リエッセはトップドアにリアエンジンを搭載するバスの王道レイアウトながら、車体の構造上ノンステップ仕様が設定されていなかった。現在では、その座をポンチョに譲っている。

現行型ポンチョは2006年に発売を開始した2代目だが、初代モデルはシャシーとエンジンがPSA・プジョーシトロエン製でボディが日野自動車製という半国産の車両であった。フロントエンジンは前輪駆動で、当然ボンネットを有するエクステリアは大きなミニバンといったイメージだったが、フルフラットのノンステップ構造は現行モデルに通じる仕様だ。

すべてを日野自動車、いすゞ自動車の合弁企業であるジェイ・バスが製造する純国産の2代目は、リアエンジン化と車体の四隅にタイヤを配置することで、前述の広大なフラットスペースを実現した。ただしこれにより同サイズのリエッセと比べ居住空間が向上したものの、ホイールベースの拡大により最小回転半径はロングボディで7.7mと約2m大きくなってしまった。こうしたこともあり、2010年頃まではリエッセも併売されていたが、排ガス規制へ対応してないこともあり生産中止となった。

地域によってはリエッセで通行できた路線がポンチョでは曲がり切れず、マイクロバスへ転換したりルートを変更した事業者もあったそうだ。それでも、ポンチョは徹底的に前後のオーバーハングを切り詰めるなど狭隘道路での扱いやすさも極力犠牲にしない構造となっている。

ライバル不在のコミュニティバス市場

ちなみにポンチョの最大のライバル(?)ともいえる、三菱ふそうトラック・バスが製造していた「エアロ ミディME」というモデルは、排ガス規制などの観点から2007年に生産を終了している。エアロ ミディMEはポンチョとほぼ同じサイズでありながらトップドア仕様となっており、最小回転半径でも5.7mとポンチョよりも有利な構造となっていた。さらに交通バリアフリー法にも適合し、国土交通省ノンステップバス標準仕様にも準拠しており、リエッセとポンチョのいいとこ取りのバスとなっていた。

こうしてコミュニティバス用途などではライバル不在のままポンチョ一強の状態が続いており、全国で目にする機会も多くなっている。ちょっと特殊なバス市場では、なかなかライバルも現れにくい状況だが、エアロ ミディMEのようなモデルの登場や進化した3代目ポンチョの登場が期待される。

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