トヨタ自動車と新明工業がレストアしたレンタカーの70スープラ
旧車好きな20歳の女性レーシングドライバー佐々木藍咲(ささき らみ)選手に、さまざまな旧車に試乗してもらって今どきの若者目線の素直なインプレをお届けする企画。今回は旧車のレンタカーサービスを展開する「Vintage Club by KINTO」の協力のもと、1992年式のトヨタJZA70型「スープラ 2.5GTツインターボ」に乗ってみました。
ブリスターフェンダーのスタイルに惚れ惚れ
女性だけのモータースポーツカテゴリー「KYOJO CUP」で2023年にレースデビューした佐々木藍咲さんは、2004年生まれの20歳。じつは大の旧車好きで、この企画を通してさまざまな旧車に触れてきたわけだが、毎回、その日試乗するクルマと初対面のときは、新鮮そうにそのクルマをまじまじと見ている姿が印象的で、本当に旧車が好きなのが伝わってくる。
今回は旧車のレンタカーサービスを展開する「Vintage Club by KINTO」の協力のもと、1992年式のトヨタ3代目JZA70型「スープラ 2.5GTツインターボ」を試乗してもらった。このクルマはトヨタ自動車と新明工業によってレストアされた個体だ。
1980年代から1990年代の高性能モデルには、さまざまなエクステリアの特徴がある。そのひとつがブリスターフェンダーであり、佐々木さんの心に刺さっている様子だった。
「この緩急のついたフェンダーのラインが好きです。オーバーフェンダーも好きですけど、こういうフェンダーも良いですね! なんていうんだろう……え? ブリスターフェンダーって言うんですか? 初めて知りました!」
なお、1986年にA70系スープラが登場した当初は、5ナンバーサイズとなる全幅1690mmとなっていたが、1987年以降に海外仕様と同じブリスターフェンダーを装着したワイドボディが追加されて、全幅は1745mmとなっている。3.0Lエンジン搭載車やターボエンジン搭載車などがワイドボディ仕様で、今回試乗した2.5GTツインターボも当然ワイドボディだ。なお、2.5GTツインターボは、1990年のマイナーチェンジで3.0Lエンジンと入れ替わる形で設定されたトップグレードとなる。
愛車の86との共通点も発見
そして、室内に座り込むとマイカーであるトヨタ「86」との共通点を見つけたようであった。
「ドア内装の取っ手が86と同じ感じですね。必要なデザインは現代のクルマにも受け継がれている感じがします。あと今のクルマに無いもので驚いたのが、コイン入れです。たしかに今だったらETCが当たり前ですものね。あと、インパネとかコラム類が、今日一緒に乗ったセリカXXと比べると、かなり現代的になっている感じがします」
なお、「この時代なのに電動でシート調整ができるんですか!?」と驚いていた装備がパワーシートだ。スープラはグループAレースなどで活躍したスポーツカーでもあるが、バブル真っ盛りの高級GTとして豪華な装備が求められた背景もあった。そんなこともあり、上級グレードにはこうした装備が備わっていたのだ。
大迫力のターボの加速感!
この時代のスポーツカーはターボという武器を手に入れて、パワーウォーズを繰り広げていた。そんなターボパワーな雰囲気を、この70スープラからもしっかりと佐々木さんは感じ取っていた。
「マフラーが変わっていて、低音の心地いい直6サウンドが耳に入ってきますが、それ以上にタービンが回っている音の主張が大きいのが、ターボカーな雰囲気があって良いですね! 4000rpmからターボがキタキター! って感じで、パワーと迫力を感じる加速感です! 短いストレートでもバッと加速してくれる印象ですね」
これくらいの時代から「280馬力自主規制」が登場したが、当時280馬力に達していた国産車の中で、このスープラは2.5Lという最も小さな排気量だった。なお、パワー感に驚かされていた佐々木さんに「280馬力あるよ」と伝えると、
「えっ! 純正で280馬力もあるんですか! 凄い!」
と驚いていた。この旧車試乗企画ではハイパワーなクルマは珍しいので、旧車=ローパワーなイメージもあったのかもしれない。
ハンドリングも楽しい!
試乗コースがワインディングに入ると、佐々木さんはしなやかなサスペンションが印象深かったようだ。
「少しソフトな印象もありますが、荷重がどこに乗っているか分かりやすくて、ハンドリングが楽しいですね。乗り心地もよくて結構ビックリです。でもやっぱりターボのフィーリングが一番かも。今どきのクルマにはない、ターボカー! っていうトルクの出方と音が好きです」
なお、ハンドリングが楽しいと感じたサスペンションだが、この70スープラはトヨタ「2000GT」以来、トヨタ車としては久々に4輪ダブルウィッシュボーンのサスペンションが与えられた。そして若干落とされた車高は、TEINの車高調キットFLEX Zによるもの。ホイールは当時人気だったBBS LMを装着していて、リアにホイール幅9.5J・タイヤ幅265というサイズを装着。ワイドでカッコいいが、これだけワイドなタイヤ&ホイールを履くなら、ある程度車高を下げなければサマにならないというわけだ。
佐々木藍咲選手のトヨタ 70スープラ 〇と×
好きなポイントは?
「タービンを含めたエンジンサウンドとターボカーな加速フィーリング」
マイナスポイントはある?
「純正だとステアリングが大きいので、小さな社外のものに変えたいですね。あと個人的にはもう少し車高を落としたい!」
* * *
今回試乗したVintage Club by KINTOの70スープラは、2024年9月29日(日)までの期間はトヨタカローラ静岡・三島店で「特選旧車レンタカー」として実際にレンタルが可能となっている。気になった人はVintage Club by KINTO公式サイトをチェックしてみよう。
佐々木藍咲選手とは
佐々木藍咲さんは富士スピードウェイで開催されている女性だけのモータースポーツカテゴリー「KYOJO CUP」で2023年シーズンに4輪レースデビューした、2004年生まれの若手女性レーシングドライバー。2024年8月18日のRd4では予選14位、決勝7位に。上位陣はフォーミュラでのレース経験もある強豪揃いなので、成長を感じさせるシーズンとなっている。また、今シーズンはGR86/BRZ Cupクラブマンシリーズにもスポット参戦。7月13日~14日に開催された富士ラウンドでは初参戦ながら予選44位、決勝37位で無事に完走するとともに、ルーキー賞を受賞した。
レーシングドライバーとして活動しながら、普段はフォーミュラドリフトジャパンを運営する会社である「MSC株式会社」に勤めていて、公私ともにクルマ漬けの生活を送っている。
■「令和女子旧車に乗る」連載記事一覧はこちら