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アルピナルックではダメ!? BMW「635CSi」が予想落札380万円にも達せず…当時物のエアロパーツを組み込んでも厳しい結果となりました

2万ポンド~2万4000ポンド(邦貨換算約380万円〜460万円)で販売が継続しているBMW「635CSi アルピナ仕様」(C)ICONIC AUCTIONEERS

アルピナ風スタイルの「世界一美しいクーペ」

1980~1990年代の「ヤングタイマー・クラシック」世代は、ボディやインテリアをドレスアップさせるためのアフターパーツが大人気を博した時代。そして、この時代から少しずつコンプリートカー生産にも進出していた有力チューナーたちも、内外装を独自のテイストで飾るエアロパーツやステアリングホイールなどをビジネスとして成功させていました。今回はその時代を物語る1台として、英国のアイコニック・オークショネアーズ社が2024年6月末にオンライン開催した「The June Online Timed Auction」に出品された、アルピナ仕様のBMW「635CSi」をピックアップ。そのモデル解説と、注目のオークション結果についてお伝えします。

ゴージャスな高級感と、ポルシェ911にも匹敵する高性能を目指して

BMWは1976年1月、元祖「6シリーズ」となった「E24」系を2ドアクーペ専用モデルとして発表。当時BMWに所属していたフランス人スタイリストのポール・ブラクは、そのキャリアにおいて数々の傑作を世に送り出した名匠として知られるものの、英語圏では「シャークノーズ(サメの鼻)」と呼ばれたフロントエンドを持つ「635CSi」ほどセクシーなデザインは、彼の作品の中でも少ないと評されている。

当初は2986ccの「630CS」にくわえ、3210cc+燃料噴射の「633CSi」の体制で発表されたものの、ほどなく633CSiのエンジンは改良型へとスイッチされ、パワーもわずかながら向上。さらに1978年7月にはエンジンを3453cc(M90型)に拡大した「635CSi」となり、5速マニュアルギアボックスと3速オートマチックが選択可能となる。

ブラックの一体型トランクリッドスポイラーを含むエアロダイナミクスの変更により、高速走行時の揚力が15%以上低減。スタビリティが大幅に向上したと評されていた。

マイナーチェンジで最高速度約230キロを実現

1982年に施行された1度目のマイナーチェンジでは、外観ディテールやエンジン、シャシー、エレクトロニクス系、インテリアにも手が入れられるとともに、エンジンは改良型3430cc・218psのM30B34型ユニットに換装。5速マニュアルまたは4速オートマチックトランスミッションとの組み合わせで、0-100km/h加速7.4秒、最高速度143mph(約230km/h)を実現した。

そのかたわら、インテリアはフラッグシップモデルとしての位置づけを反映しているものの、決して豪華なセレブ向け高級クーペなどではなく、ドライバーには「究極のドライビングプレジャー」感が際立つ仕立てとされていた。

さらにいうと、当時のグループAツーリングカーレースにおいて635CSiが獲得した輝かしい戦果が反映されたことにより、このクルマはスタイリッシュかつ快適にスポーツ走行を楽しみたい。よりありていに言えば、同時代のポルシェ「911」やイタリア製スーパーカーと渡り合うことを望むドライバーのためのクルマ、という位置づけにもなった。

それゆえ、「アルピナ」や「ハルトゲ」、「シュニッツァー」などのチューナー群が、635CSiをはじめとするE24系6シリーズをよりワイルドに演出するボディキットを続々と製作・販売したのだが、今回ご紹介するオークション出品車も、そんなキットを装着した1台だった。

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純正パーツでBMWアルピナ風のルックスをコンプリート!

アイコニック・オークショネアーズ社は、2011年に「シルヴァーストーン・オークション」として創業。2023年8月に現在の屋号に改組して再スタートを図ったという、自動車オークションビジネス界では比較的新興勢力ともいうべき会社である。同社では、毎月末に期間限定のオンラインオークションを開催しており、2024年6月のオークションでは20日に入札スタート。1週間後の27日の午後7時に締め切られる設定とされた。

今回の「The June Online Timed Auction」に出品されたBMW 635CSiは、英国ノーザンプトンで今もなおBMW/MINI正規ディーラーを営んでいる「ウォーラストン・モーターズ」社を介して納車されたもの。現在に至る3オーナーを合わせた走行距離は、38年落ちという年式を考えれば少なめと言えなくもない、9万4200マイル(約15万km)にとどまっている。

そして2021年、前後左右のウインドウをすべて取り外してブルー・メタリックに再塗装され、同時に内外装のドレスアップを施すことによって、BMWアルピナを彷彿とさせる姿に生まれ変わった。つまり冒頭で述べたような、1980年代当時からのアルピナ風ルックだったわけではなく、近年になって組まれたBMWアルピナ・レプリカだったようだ。

サービスブックやハンドブックも付属

それでも、エアロパーツはアルピナ純正品が装着され、ステアリングホイールやボディを1周する「アルピナストライプ」と正しいカラーリングでまとめられている。

ZF社製4速ATギアボックスは、英国ミッドランドのトランスミッション専門ショップによって、2019年に2500ポンドの費用を投じたオーバーホールを受けた。また、ステンレス製のサイレンサーを装備し、リアにはビルシュタイン製ダンパーとポリウレタン製ブッシュが取り付けられている。

さらに、燃料噴射装置のインジェクターは2021年にオーバーホールされ、その直後にBMW指定の総合点検整備「Inspection II」サービスが実施されたとのことである。

なお今回のオークション出品に際しては、ハンドブックとサービスブックとともに提供され、ヒストリーファイルには多数の請求書と古い英国「MoT」証明書が含まれている。

このクルマの3代目オーナーである売り手は、ボディワークやエンジンまわり、トランスミッションやペイントを「エクセレント」、最近追加されたリバースセンサーやBluetoothを含む電装品やインテリアトリムについては「ベリーグッド」と評価。その自信をうかがわせていたようだ。

そして今回のオンライン入札に先立ち、アイコニック・オークショネアーズ社と現オーナーは2万ポンド(約380万円)~2万4000ポンド(約460万円)という、かなりの自信を印象づけるエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが実際のオンライン競売では、1週間の入札期間では希望した最低落札価格に届かなかったため、残念ながら「Not Sold(流札)」。現在でも同額のエスティメートを保持したうえで、継続販売とされている模様である。

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