新開発の自動変速トランスミッションやいかに?
ヤマハ発動機が年内に国内発売予定である新型バイク「MT-09 Y-AMT」をメディアに公開しました。「MT-09」は、水冷DOHC 4バルブ直列3気筒 900ccエンジンを搭載したネイキッドスポーツで、2014年に発売を開始し、現在で3代目のモデルとなっています。このモデルが今回マイナーチェンジを受け、新たに自動変速トランスミッション「Y-AMT(ワイ・エーエムティ)」が備えられたモデルが追加されました。
ATモードには「D」と「D+」を用意
今回紹介するヤマハの新型「MT-09」が新たに搭載するのが、発進・変速操作等を高度な制御で行う新開発の自動変速トランスミッション「Y-AMT」である。車両はクラッチレバーとシフトペダルがなくなっており、ライダーをクラッチおよびシフトペダルの操作から解放し、意のままに2輪車を操る楽しさや人機一体感の向上に貢献するとしている。
といっても完全にオートではなく、シフト操作は手元に設けられたレバーで変速も可能。そのハンドシフトによるMTモードと、変速を自動化するATモードも備えている。ATモードには、「D」と「D+」の2種類のシフトプログラムを設定。街中や高速道路では穏やかな「D」、レスポンスのよい加減速を楽しみたいワインディングでは「D+」といった感じで、道路環境や天候、そしてライダーの好みやコンディションでモード選択が可能となる。
ヤマハでは、2006年に世界初の2輪車用自動化MTシステム「YCC-S」を開発・実用化して以来、継続的な開発を行ってきた。「Y-AMT」はその技術の発展による、高いスポーツ性と利便性を両立した新機構のものとなる。
カットモデルやバイクの外観からわかるのは、アクチュエータで作動する2つのユニットが新たに付け加えられている点だ。エンジンに背負わせる形でレイアウトすることでエンジン幅は変更することなく搭載。そしてECUやハーネス類を含め、このY-AMTの追加の重量増は2.8kgほどに収められたという。
ギアボックスの中身はボトムニュートラルとシフトの配置が変更され、クラッチ側ももっとシンプルな構造となってはいるが、基本的にY-AMTのための大きな変更はない。
走り出してしまえば違和感なくギアチェンジをする
操作系としては、ハンドル左にあるはずのクラッチレバーがなく、左ステップの周囲にレイアウトされていたシフトペダルもない。かわりに右ハンドルのスイッチボックス側にATとMTの切り替えスイッチが追加された。そして左ハンドル側のスイッチボックスの下にシフトアップ&ダウンのシーソー型のスイッチが加えられた。
「+」レバーでシフトアップし、「-」レバーでシフトダウンとなるが、人差し指1本の押し引き(シフトダウン&アップ)操作も可能。信号などで減速していくと車両側が判断し自動的にシフトダウンも行う。
今回実車の試乗の機会が設けられた。エンジンをかけるのは、ブレーキをかけながらセルスイッチを押すだけ。ニュートラル状態でエンジンをかけ、発進をするためにローギアに入れるわけだが、クラッチを握らずにギア操作をする。
通常のバイクと同じように「ガチャン!」とギアが入るわけだが、このシフトショックが若干きついという印象がある。そこからアクセルを開けていくと、絶妙な半クラ操作のようにスルスルっと走り出していく。走り出してしまえば、速度とアクセルの開閉具合によってそれほど違和感なくギアチョイスをしてくれる。
4輪であるとこういったものに学習機能を持たせ、自分好みのシフトパターンにしていく、という話がよくあるが、このY-AMTには、学習機能を持たせてはいない。
担当者にその理由を尋ねると逆に問われてしまった。
「自分の思った通りに操作したい人のためにMTモードを用意しています。例えばY-AMTに自分好みのシフトパターンを学習させたATモードでどんな乗り方をしたいですか?」
なんでもかんでもAIに頼る風潮のこの時代だが、何も考えずに乗れる「楽ちんモード」をあえて自分のシフトパターンに寄せる必要はないという考え方は、確かにそうだ、と肯いてしまう。ATモードの際は、その「D」と「D+」のモードをライダーが理解するべきなのだろう。
このクラッチレバーがなくオートマチック変速と指先マニュアル操作変速ができる「MT-09 Y-AMT(エムティーゼロナイン ワイ・エーエムティ)」は2024年9月30日に発売予定。ボディカラーは、「ブルー」と「マットダークグレー」の2色。価格は136万4000円(消費税込)となる。