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1億円オーバー! 予想を上回る価格のRUF「BTR III」は「フラットノーズ」「カブリオレ」「ターボS用リアエアダクト」の3つの特徴を備えたレアな1台でした

75万3000ドル(邦貨換算約1億760万円)で落札されたRUF「BTR III フラットノーズ カブリオレ」(C)Courtesy of RM Sotheby's

最も過激でユニークなBTRシリーズの1台

2024年5月31日〜6月1日にRMサザビーズがカナダ・トロントで開催したオークションにおいてRUF「BTR III フラットノーズ カブリオレ」が出品されました。オークションに姿を現したBTR IIIは、きわめて特徴的な仕様を持つモデルで、フラットノーズにカブリオレ、そしてポルシェ「911 ターボS」用リアエアダクト付きというパーツに現れています。

RUF初のコンプリートモデルは1977年に誕生

1939年、現在の社長であるアロイス・ルーフ・ジュニアの父親である、アロイス・ルーフ・シニアが、ドイツのプファッフェンハウゼンという田舎町で自動車のサービス工場である「アウト・ルーフ」社を創業したことが、現在のルーフ・アウトモービル社(RUF)の歴史の始まりだった。

RUFは1940年代になると独自の設計によるバスの製造やVW「タイプ1」(ビートル)のチューニングにも着手し、その事業は順調に拡大した。息子のアロイス・ルーフ・ジュニアは、その成功を背景にポルシェの整備とレストアのビジネスを始め、父の死によって1974年、自身が24歳の時には事業の主導権を握ることになった。

その後のRUF社が、ポルシェのホワイトボディから製作された、独自の高性能モデルをプロデュースするに至ったのは、同社の歴史に詳しい人にはお馴染みのストーリーといえるだろう。

RUF初のコンプリートモデルは1977年に誕生した。それはストロークアップされた自然吸気の水平対向6気筒エンジンから215psの最高出力と275Nmの最大トルクを発揮させた「911SCR」で、このモデルにはより高性能な「911」を求める顧客からの多くのオーダーが寄せられた。そしてRUFの存在をさらに世界に知らしめる大きなトピックスとなったのが、1987年に発表された「CTR(グループC・ターボ・ルーフ)」だ。

当時フェラーリが持っていた世界最高速車としての記録を塗り替え、339.6km/hを記録したCTRは、469ps仕様の3.4L水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載。後期型ではミッションもそれまでの5速MTから6速MTに変更され、さらに最高速は342km/hにアップ。RUFはスーパースポーツの頂点を確実に極める存在となったのである。

内外装はブラックで統一されている

今回RMサザビーズがカナダのトロントで開催した、「デール・トゥ・ドリーム・コレクション」オークションに出品されたRUFは、CTRとともにスーパースポーツのファンから熱い視線が注がれる「BTR(グループB・ターボ・ルーフ)」。そのネーミングからも想像できるように、それはFIAのグループBレギュレーションにインスパイアされて開発・製作されたもので、1984年に発表された「BTR I」から、最後期型の最も過激な「BTR III」が生産を終了する1993年まで一貫して進化を遂げていった。

同オークションに姿を現したBTR IIIは、きわめて特徴的な仕様を持つモデルだ。1990年12月5日にRUFカナダ社からデリバリーされた記録が残るこのモデルの特徴は、まずはその独特なボディ構成、すなわちフラットノーズ、カブリオレ、そして「911 ターボS」用リアエアダクト付きというパーツに現れている。

ボディやレザーシート、ホイールフェイス、ソフトトップはすべてブラックで統一されているが、これはオリジナル・オーナーにリクエストされたもの。いかにもBTR IIIの速さをイメージさせるかのような造形とカラーリングは、異彩を放っているのは確かだ。

リアに搭載されるエンジンは、もちろんルーフによってチューニングされた3.4Lの水平対向6気筒ターボ。巨大なKKK製K27型ターボとボッシュ製のDMEモトロニック・エンジンマネージメント・システムによって、最高出力では408psを発揮する。

走行距離は約3315キロとローマイレージ

さらにBTR IIIには6速MTが組み合わされているのも見逃せないところだ。そしてこのBTR IIIに対してRUFが発行した生産証明書には、エアコン、レカロCSEシート、SONYサウンドシステム、パワーウインドウ、アラーム、17インチ・スピードライン軽合金ホイール、105L燃料タンク、スポーツミラー、革巻きスポーツステアリングホイール、RUF製計器類が装備されていることが記されている。

納車から現在までの走行距離は、わずかに2072マイル(約3315km)というBTR IIIフラットノーズ・カブリオレ。RUFの製作したモデルには、同じものはふたつとないとは良く聞かれる言葉だが、このモデルはまぎれもなく最も過激でユニークなBTRシリーズの1台といえるだろう。

オークションでもその注目度は高く、エスティメート(推定落札価格)は、40万ドル〜50万ドル(約5737万円〜7170万円)だったが、最終的には75万3000ドル(邦貨換算約1億760万円)での落札となった。年間に生産される台数を考えれば、まさしく世界最小の自動車メーカーともいえるRUF。その作品は今後も、オークション・シーンで熱い視線を集める存在であり続けるのだろう。

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