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なくならない「あおり運転」…もし遭遇しても「急ブレーキ」は違反です! 正しい大人の対処法を伝授します

あおられることで感情的にならず、できるだけ冷静に、スピードを落とし、相手を先に行かせることで、無駄な争いを避ける方がいい

ドライブレコーダーは大事な証拠になる

最近、SNSなどで、「あおり運転の仕返しに急ブレーキをかけてやった」などのコメントをたまに見かけます。でも、どんな理由があるにせよ、いきなり急ブレーキをかけることは事故につながる可能性が高く、とても危険な行為だといえます。しかも、急ブレーキをかけた方が交通違反で処罰を受ける可能性もありますし、事故が起こるとより重い責任を負う場合もあります。では実際に、あおり運転を受けた場合、どのような行為が正しい対処法なのでしょうか?

あおり運転とは

従来、いわゆる「あおり運転」については、道路交通法に明確な規定がなかったが、交通死亡事故などの悲惨な事件が社会問題化した。これにより、2020年(令和2年)6月の道路交通法一部改正により、あおり運転が「妨害運転」として定義され、罰則も創設されている。

ここでいう妨害運転とは、危険の度合いにより以下2つの要件がある。

1:妨害運転(交通の危険のおそれ)
他の車両などの通行を妨害する目的で「一定の違反行為」をし、その行為が道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法であること

2:妨害運転(著しい交通の危険)
1の違反行為の罪を犯し高速道路で他の車両を停止させるなど、道路における著しい交通の危険を生じさせたこと

なお、上記1の「一定の違反行為」とは、例えば、以下のような行為を指す。

・必要な車間距離を保たず前車を追走する
・対向車線に出る
・具体的な危険がないのに急停止したり、急ブレーキをかける
・正当な理由がないのに複数の車線をまたぎ「ジグザグ運転」や「蛇行運転」などをする
・前車を左側から追い越したり、後方や対向を走行中の車両に危険を及ぼすような方法で追い越す
・前方に走行車がいるのにハイビームで追走する
・「警笛鳴らせ」の標識のない場所で、具体的危険がないのにクラクションを鳴らす

また、妨害運転の罰則は、以下の通りだ。

1:妨害運転(交通の危険のおそれ)の場合
・3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑事罰)
・基礎点数25点(行政罰)
2:妨害運転(著しい交通の危険)の場合
・5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(刑事罰)
・基礎点数35点(行政罰)

行政罰では、1と2のいずれも免許は取り消し。欠格期間は1で2年、2で3年となり、どちらの場合もかなり重い処罰が下されることになる。

あおり運転の仕返しで急ブレーキは違反

あおり運転は、このように厳罰化されているが、なかなか無くならないのも現実。誰もが被害にあう可能性は十分にある。だが、もし被害を受けたからといって、仕返しに急ブレーキをかけるのは、道路交通法24条(急ブレーキの禁止)に違反する場合も考えられる。

以下が道路交通法24条の規定だ。

「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」

そして、後方からかなり接近をされるなど、あおり運転を受けたからといって、急ブレーキをかけることは、当規定にある「危険を防止するためやむを得ない場合」には該当せず、道路交通法24条の違反とみなされる可能性がある。

そして、もし道路交通法24条の違反に該当すると、下記のように課せられるので注意したい。

・反則点数:2点
・反則金:大型車9000円、普通車7000円、2輪車6000円、原付5000円

もちろん、例えば、「歩行者や自転車が突然飛び出してきた」「天候が急変して急に視界が悪くなった」「動物が突然飛び出してきた」などのケースでは、急ブレーキをかけても違反とならない場合もある(常にではなく、個別のケースで判断されることが多いので一概にはいえないが)。

ただ、少なくとも、後方の車両からあおり運転を受けた場合は、「危険を防止するためやむを得ない急ブレーキ」とは解釈されにくい(急に前方を塞がれた場合などは別だが)。そのため、急ブレーキをかけた方が違反とみなされる可能性は十分にあるといえる。

違法な急ブレーキで事故になると責任が重くなる

さらに、あおり運転の仕返し目的で急ブレーキをかけると、それにより追突事故などが発生する可能性もある。

通常、追突事故の場合、追突した側が責任を負うことが多いが、追突された側の急ブレーキが原因の場合、追突された側も一定の責任を負うケースもある。しかも、ケースや状況によっては、あおり運転をした側よりも、仕返しに急ブレーキをかけた側の責任の方が重いと判断される可能性もあるようだ。

そう考えると、あおり運転の仕返しで急ブレーキをかける行為は、本来は被害者になるはずなのに加害者扱いされる場合もあるため、やらない方がいいといえるだろう。

あおり運転にあったら

では、実際に、あおり運転にあったらどうすべきだろうか? それは、まず「できるだけ関わらず道を譲る」ことだ。あおられることで感情的にならず、できるだけ冷静に、スピードを落とし、相手を先に行かせることで、無駄な争いを避ける方がいい。

だが、それでも追い回してきたら、クルマを路肩などに一時停止してやり過ごす。停まる場合は、必ずドアをロックし、もし相手がクルマから降りてきてもドアは開けない。また、相手の車のナンバーを控え、110番に通報する方がいい。

ちなみに、最近、装着率が高くなっているドライブレコーダーだが、もし愛車が未装着であれば、できるだけ付けることをおすすめする。あおり運転の被害を受けた時の録画映像が証拠となり、警察で法的な罰則を科してもらえるからだ。

あおり運転の仕返しは、その場で急ブレーキをかけるなどより、後日、こうした法的手段を取る方がクレバー。くれぐれも、一時の感情に流されずに、冷静な判断と行動を行うことが重要だといえる。

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