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映画『007/ゴールドフィンガー』60周年! 劇中にロールス・ロイスが登場したのを知ってた? ナンバープレート「AU 1」の秘密とは?

映画『007/ゴールドフィンガー』に登場したロールス・ロイス ファントムIIIの製作風景

ロールス・ロイス初のV12気筒を搭載した「ファントムIII」を振り返る

1964年に公開されたジェームズ・ボンドを象徴する映画『007/ゴールドフィンガー』が2024年で60周年を迎えます。この映画の中で敵役、オーリック・ゴールドフィンガーが金塊を密輸するために使用した1937年式ロールス・ロイス「ファントムIII」はブランド初のV12気筒モデルで、ヘンリー・ロイスが1933年に亡くなる前に開発されました。このクルマについて、そして映画の中でどのように使われたか振り返ります。

ファントムIIIが登場する『007/ゴールドフィンガー』が60周年

ロールス・ロイスのクルマは、これまでジェームズ・ボンド映画の歴史の中で十数作品に登場してきた。しかし、ロールス・ロイスが最も記憶に残る役割を果たしたのは、『007/ゴールドフィンガー』だ。このクラシックな作品は、デザイン、ロケーション、ガジェット、エキセントリックな敵など、その後のボンド映画の本質的な要素を定義し、2024年は1964年9月17日の初公開からちょうど60周年を迎えた。

この映画の中で、同名の敵役オーリック・ゴールドフィンガーは、子分のオッドジョブの運転によって、1937年製のロールス・ロイス「ファントムIII セダンカ・デ・ヴィル」でヨーロッパ中を駆け巡る。このクルマのボディワークには秘密が隠されており、それは2トンの純粋な18金でできていることであった。

ゴールドフィンガーはイギリスから大陸を横断し、難関のフルカ峠を越えてスイスへとこのクルマを密輸する。目的地のオーリック・エンタープライズに無事到着すると、彼はアルプスの製錬所を使ってロールス・ロイスを解体し、ボディパネルを溶かして金の延べ棒にする。そして元のボディワークに戻した後、イギリスにクルマを戻し、この悪事を繰り返すのである。

ゴールドフィンガーの基本計画は「グランドスラム作戦」と名付けられ、はるかに野心的であった。フォートノックスに保管されている金を原子爆弾で放射能汚染して無価値にし、自分の埋蔵金の価値を天文学的に押し上げようという計画である。

ゴールドフィンガーが金塊を密輸するためにファントムIIIを選んだのは、このクルマが金と同じくらい見事なことだった。そのゆったりとしたプロポーションは、かなりの量の密輸品を隠すことを可能にし、金の「神聖な重さ」は、厳しいアルプスの道でさえ、この強力なクルマの性能を妨げることはほとんどなかった。ファントムIIIは、ロールス・ロイス史上初のV型12気筒エンジンを搭載し、7.3Lエンジンから最大出力165psのパワーを発生した。前モデルの最大出力120psの「ファントムII」と比べて37.5%のパワーアップを実現したモデルである。

1901年にノッティンガムで初めて登録された

このファントムIIIは、ヘンリー・ロイスが1933年に亡くなる前に開発した最後のモデルでもある。このクルマには、ゴールドフィンガーの密輸に大いに役立つ数々の革新的技術が盛り込まれている。サスペンションシステムには、運転席からコントロールできるフルアジャスタブル油圧ショックアブソーバーが組み込まれており、オッドジョブは荷物に応じて乗り心地を微調整することができる。

ゴールドフィンガーが使用したファントムIIIは、コーチビルダーであるバーカーによる、フロントがオープンでリアが密閉された「セダンカ・ド・ヴィル」(タウンカー)のボディを備えている。その威風堂々とした存在感から、ボンドが「美しいファントムIIIだ……」と言い、金のゴルフクラブとハーレクインの傘を、ボンドと最初に出会ったストークパークの外でオッドジョブがトランクに積み込むシーンは有名である。

ゴールドフィンガーのファントムIIIには、元素周期表の金の化学記号にちなんだ「AU 1」というナンバープレートが付けられている。じつはこのAUというナンバーは、ノッティンガムで登録された自動車を示す英国独自のナンバープレートコードで、「AU 1」は1901年にこの地域で最初に登録された自動車の1台として発行されたものであった。この登録番号は映画で使用された後、スクリーンでのデビューに続き、ほかのロールス・ロイスのクルマに転用されたという。

10月25日をお楽しみに

映画に登場するこのファントムIIIはもともとアメリカ生まれのハットルストン・ロジャース・ブロート氏によって注文されたもので、後に彼はイギリスに定住し、アングルシー修道院の初代フェアヘブン卿となった。このモデルは当時の常識に挑戦し、ランプハウジング、バンパー、ホイールディスク、バックミラーの周囲に至るまで、ほぼ黒一色で塗装。

ボンネットのサイドとトップを際立たせるホワイトのコーチラインが施され、クロームのラジエーターシャッターはサンドブラスト仕上げでより落ち着いた仕上がりとなっていた。計器類には、フェアヘブン卿がイギリスやヨーロッパ大陸の道路で使用するため、英国単位とメートル法の両方が採用された。

その後、映画『007/ゴールドフィンガー』に登場するために、イエローとブラックのツートンカラー仕上げが施されたのである。2024年10月25日、ロールス・ロイスは「AU 1」のファントムの物語の新たな章の幕を開ける。ロールス・ロイスとジェームズ・ボンド映画とのつながりをさらに発展させる予定だ。

AMWノミカタ

1964年に公開された『007/ゴールドフィンガー』のボンドカーはアストンマーティン「DB5」であるが、敵役のクルマとして「ファントムIII」が使われていることを初めて知った。007の公式YouTubeチャンネルではフルカ峠でのカーチェイスの模様をダイジェストで観ることができるが、ロールス・ロイスを象徴する観音開きのドアを開けるシーンやフロントに屋根のないこのモデルの映像は、当時映画を見る人々を驚かせたことだろう。

その走る姿は余裕に満ちて優美であり、オーリック・ゴールドフィンガーが悪路の峠道であるにもかかわらず後席で居眠りをしているシーンは、いかにファントムIIIが快適であったかを、とてもうまい方法で表現している。あらためてこの『007/ゴールドフィンガー』を含めて007映画を再鑑賞したいと感じた。

【動画】フルカ峠を駆るロールス・ロイス「ファントムIII」を観る

 

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