ひとつ間違えれば甚大な事故につながる
セルフ化が進むガソリンスタンド。サービスを簡略化することで燃料の価格を抑えることができ、現在の日本では40%弱がセルフ式になったともいわれています。しかし消防法で「危険物」と定められた燃料を扱うからには、事故を防ぐためタブーとされる行為がいくつか存在するのです。
ガソリンの取り扱いには注意が必要
セルフ式ガソリンスタンドでのタブーの代表が、オートストップ機能で給油が停止した後、手動で小刻みに燃料を追加する「継ぎ足し給油」で、すべてのガソリンスタンドで禁止事項となっている。最大の理由は吹きこぼれを防止するためで、給油機にはその旨を記したシールが貼ってある。では吹きこぼれがなぜ危険なのかを考えてみよう。
説明するまでもなくガソリンや軽油は引火しやすい性質を持ち、吹きこぼれた燃料が原因で火災が起きることも十分にあり得る。とくにガソリンは小さな静電気ですら爆発を引き起こす可能性があり、気化しやすいので取り扱いには細心の注意を払わなければならない。
さらに熱膨張によって体積は増加する。公式の「元の体積×温度差×体膨張率」に当てはめて計算すると、ガソリンの体膨張率が0.00135で給油時との気温差が10℃、ガソリンの量が45Lと仮定すれば、増加する堆積は0.6075L=約608cc。
それを踏まえたうえで燃料タンクの形状を設計しているとはいえ、車両火災や爆発などのリスクをわざわざ背負う理由はないだろう。たまに「オートストップ機能が早く働きすぎて満タンにならない」との声も聞くが、その大半はノズルを差し込む角度が甘く給油口の奥までしっかり届いていないため。本当にボディ形状のせいで満タン前に自動停止するにせよ、たかだか数Lのために危険をおかす必要はないと思われる。
吹きこぼれた燃料で塗装がダメージを負う
ちなみにガソリンスタンドでは継ぎ足し給油と同様、少量だけの給油も禁止されているとご存知だろうか。給油機に備わっているオートストップ機能の仕組みは、ノズル先端の検知口が燃料で塞がれると満タンだと判断。あまりに少量の給油だと検知が正しくできず、やはり吹きこぼれの原因となってしまうからだ。
ここでいう「少量」とは燃料タンクのサイズによって異なるが、燃料計の針が少し動いた程度では給油しないほうがいいだろう。給油機で選べる5Lなどはバイクや軽自動車といった、容量が小さい燃料タンクを想定していると考えればいい。
もうひとつの継ぎ足し給油をやめるべき理由は、吹きこぼれた燃料で塗装がダメージを負うこと。すぐに剥がれ、変色する心配はないものの、だからといって放置していいわけではない。ウエスがなければティッシュペーパーでも構わないので、ボディに付着してしまった燃料はすぐ拭き取っておこう。
最後に正しい給油の方法を紹介したい。エンジンを停止し支払いの方法と油種を選択したら、給油口のフタを開けて燃料タンクのキャップを外す。続いてノズルを給油口の奥まで差し込み、レバーを引いて自動で停止するまで給油。止まったら絶対に継ぎ足し給油はせずノズルを元の位置へ戻し、燃料タンクのキャップと給油口のフタを確実に閉めて終了だ。
ガソリンスタンドは火災を防ぐためにあらゆる対策を講じており、給油機には継ぎ足し給油を禁止するステッカーが貼り付けてある。ひとつ間違えれば甚大な事故に繋がることを再認識し、ルールを遵守しセルフ式ガソリンスタンドを利用しよう。