スーパーカー界でも王者となることを宣言した1台
マクラーレンが50年前にF1で初めて王者となった記念すべき日、2024年10月6日に、新たなスーパースポーツ「W1」が初公開されました。伝説のスーパーカー「F1」「P1」に続く“スーパーカーの究極形”のアンベールの瞬間を目撃した自動車ライターの西川 淳氏が紹介します。
世界限定399台ですでに完売御礼
2024年10月6日、マクラーレンから全く新しいハイパーカーが降臨した。その名も「W1」。Wとはワールドチャンピオンを意味する。じつをいうとちょうど50年前のこの日に、マクラーレンはF1選手権において初めて“王者”となったのだ。しかもドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルをWで獲得した。F1チャンピオンの常連が改めてその功績をアピールする。要するにスーパーカー界においても世界チャンピオンになることを宣言したというわけだ。
W1は、もはや伝説というべき世界最高のスーパーカー「F1」(3シーターのロードカー)、新生マクラーレンオートモーティブが送り出したハイブリッドスーパーカーのはしり「P1」に続くアルティメットシリーズだ。価格は2ミリオンポンド以上(MSOによるオーダーメイド次第)、つまり約3億9000万円以上。世界限定399台で、すでに完売御礼である。
後輪駆動を貫いた“空力モンスター”
その加速性能で「スピードテール」を上回り、トラックタイムで「セナ」より速いというW1。正式発表に先駆けて、限られたメディアをMTC(マクラーレン・テクノロジー・センター)に招待し、スニークプレビューを行った。
アンベールになった瞬間、じつにマクラーレンらしいハイパーカーだと思った。オレンジとブラックに塗り分けられたそのクルマが、一見してとてもシンプルなスタイルだと思えたからだ。フロントマスクに複雑な表情はなく、リアフェンダーまわりはP1のそれを発展させたかのよう。キャビンフォワードなシルエットそのものがじつにマクラーレンらしい。
けれどもよくよく目を凝らせば、空力モンスターであることが分かる。とくにドアまわり。まるで最新のF1 マシンのようだ。こんなにタイヤが剥き出しになっているパートの多いロードカーも初めて見る。
デヘドラル式をやめ完全なガルウイングドア(アンヘドラル式という)となった。その断面を見てさらに驚く。まるで最新F1マシンのフロントウイングのように3枚のパネルが結合していたからだ。リアエンドは30cmも後方へと伸びる可動式ロングテールになっていたし、巨大なリアディフューザーを収めるスペースを稼ぐためにパワートレインを3度傾けたというから、その空力へのこだわりに言葉を失う。
システム総合出力は1200馬力超え
そのパワートレインだが、次世代を担う新たな4L V8ツインターボエンジンを開発した。型式名をMHP-8という。エンジン単体で928psを誇り、これに347psのアキシャルフラックスモーターを加えたシステム総合出力はじつに1275psだ。最大トルクに至ってはなんと1340Nm。しかも新開発の8速DCT(バックは電気式)とEデフを通じて、このハイスペックが後2輪へとデリバリーされる。ピュアな後輪駆動をマクラーレンは貫いた。ちなみに車重は1399kgでP1と同程度に収め、パワーウエイトレシオは驚異の1.1kg/ps!
新カーボンモノコックをコアとした軽量化とF1譲りのエアロダイナミクス、そしてV8ツインターボ+電気モーターの高性能スペック、さらには進化したアクティブサスペンションシステム、などなど。語るべきところが多すぎる最新ハイパーカーの登場だ。現時点では間違いなく世界最高峰のトラック性能を誇るW1。間もなく発表されるマラネッロ製ハイパーカーとの対決が早くも楽しみでならない。