イーストアリゲーター・リバーでいざ、バラマンディ釣り!
オーストラリア・ノーザンテリトリー州でトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー、アポロ「キャンパーバン」をレンタルして、釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅をレポート。釣り仲間と男3人、カカドゥ国立公園へ来ましたが、初日は予約ミスで筆者だけ釣りに行けず……。2日目、いよいよ満を持してお楽しみのバラマンディ釣りです。
1人用ワンポールテントが大活躍
アポロ号のベッドはキングサイズくらいの大きさがあり、ふたりは楽に寝ることができた。「寝心地はどう?」と聞くと、「けっこう、いいっすよ」という返事だった。それでも男3人は、やはりつらい。
そこで考えたのが1人用のテントだった。キャンプ場のルールもゆるく、自分のサイト内をどう使おうがご自由に、というスタンスだった。ケンさんとキクは車内に寝て、ぼくはテント泊。実際、これで就寝スペースは快適に確保することができた。
ぼくのテントはシックスムーン・デザインズの「ルナソロ」という1人用で、フレームがなくトレッキングポールひとつで建つのが特徴だ。2018年のジョン・ミューア・トレイル踏破に使用し、とても軽くて重宝した。以来、愛用してきたがファスナーが壊れてしまい、再び同じ商品を買い直したばかりだった。
6年のうちに改良が重ねられ、耐久性などが向上したそうだ。この夏には再びシエラネバダのハイクにチャレンジする予定になっており、その練習も兼ねての使用となった。
アポロ号の装備で事前情報と違ったのは、料理用の燃料だった。紹介ビデオではプロパンタンクが1個積まれていて、それを接続するようになっていたが、実際にはコールマンの2バーナーとキャンピングガス3個が載せられていた。とくに不自由はなかったが、火力が弱く風の影響を受けやすい欠点はあった。ガスは返却時にきれいに3本が空になった。
川は自然界の命をつなぐ血管のような存在
さて、釣り2日目、いよいよぼくのデビューである。この日のガイドはサイモン。「サーモン」と聞こえていたが、後でタイプされた名前を見るとSimonだった。寡黙なタイプだが、何かやってくれそうな雰囲気が漂っている。釣り人の腕はもちろん重要だが、やはりガイドの力は大きい。的確なポイント選びとアドバイスがなければ、大物には出会うことはできない。ボートは初日よりも小型で3人で貸し切り。これは、何かが起こりそうな予感がする!
キャンプ場から30分ほど走り、イーストアリゲーター・リバーのボートランプに到着。1mオーバーの大物がよく出る絶好のポイントだという。
それにしても環境が素晴らしい。熱帯を流れる自然の川は本当にきれいだ。かつて、C.W.ニコルさんが書いた、「川は自然の血管。護岸した川は動脈硬化を起こす」という言葉が忘れられない。森があり、川があり、海がある。たしかに川は自然界の命をつなぐ血管のような存在だ。すべての生物が健全に生きるためには、川が健康でなければいけない。護岸された都会の川には、生活習慣病の臭いがする。
その点、この川の環境は本当に素晴らしい。ここに来ることができて幸せです!
ぼくは大きく息を吸って、神様に感謝を捧げた。
バラマンディと格闘してボルテージ急上昇!
「まず、立木があるストラクチャーを狙ってみましょう」
サイモンが静かに作戦をぼくたちに伝えた。これはぼくたちが好む釣りのスタイルだ。スポーツフィッシングの醍醐味は、自分が選んだルアーを正確にポイントにキャストして誘うことにある。トローリングは効率がいいかもしれないがガイドまかせの釣りで、運がいいヤツが釣れるだけだ。
ボートが静かに進む。朝日が射し、川面には水蒸気が上がっている。
「水温が少し上がってきた。これはいいサインです」
サイモンが指差す木のストラクチャーに向かってルアーをキャストする。すると、キクの竿に、いきなりヒット! サイズは小さいが、第1投からバラマンディをキャッチした。これはいいぞ! 続いて、ケンさんにもヒット。渋いベテラン・アングラーも、満面の笑みだ。
そして、しばらく遅れて、ぼくのルアーにも元気なバラマンディが襲いかかってきた。小さくてもアタリは強く、ジャンプはするし、潜るし、よく引く。やはり、バラマンディはスポイーツフィッシングのターゲットとしては、A級の魚だ。
釣り開始から1時間ほど経ち、かなりの魚をキャッチしたが、いかんせんサイズが小さい。もっと大きい魚を釣りたい、という欲望がむくむくと沸いてくる。サイモンに聞くと、大物はいるのだが、小さい魚が先にヒットしてしまうのだという。
「チャンスはあります」
と、そのときだった。ケンさんのルアーに大きなバラマンディが飛びかかった。
「ビッグフィッシュ!」
静かなサイモンが大声を上げた。
しかし、フックアップせず、ケンさんのロッドはしならなかった。
「ちくしょう!」
ケンさんが残念がり、サイモンは「80cmはあった」と証言した。
「さあ、これからだ!」
誰かの声が上がり、4人のボルテージが一気に上がった。ウォーミングアップは終わったのだ。
これから! というところでボートが……
「岩が沈んでいるいいポイントがある。そこにいってみよう」
サイモンがそう言い、エンジンを始動させる。
ところが……。
カスカスカスと力ない音がしてエンジンがかからない。
「これはバッテリーのトラブルだ」
何度やってもエンジンはかからず、高価なフィッシングボートはただの筏になってしまった。
「クルマに戻れば、スペアのバッテリーがある」
サイモンが小さなオールを出して漕ぎ始めたが、ボートはほとんど進まない。ランプまで戻るのは不可能に思えた。
結局、30分後に通りかかった別のボートにランプまで牽引してもらうことに。ランプにいた人に「大きいのが釣れたね」とジョークで迎えられた。
その後、修理をしようとしたがエンジンはかからず、ジ・エンド。ぼくのイーストアリゲーター・リバーでの釣りは、不完全燃焼で終了してしまった。
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