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5.9億円以上でなぜフェラーリ「F80」はV6エンジン? 実際にシートに座ったら…ハンパない密室感! 0-100キロ加速は脅威の2.15秒!!

フェラーリ F80:アクティブ・リアウイングやフロントウイングをはじめ、エアロダイナミクスを向上させるデザインや装備が採用された

フェラーリ80周年を記念したF80が登場

フェラーリがスーパーカーと呼ぶスペチアーレモデルの新型「F80」が発表されました。フェラーリ80周年となる2027年までに限定799台が作られます。360万ユーロ(約5.9億円)以上という価格をはじめ、良い意味で“開いた口が塞がらない”実力を備えています。

フィオラノのラップタイムはV8レーシングカー並み

少し長く思えたディヘドラルドアを開け、尻から滑り込むように乗り込んだ。助手席には香港からやってきた女性ジャーナリストが座っている。ドアを閉め、彼女にも同じことをお願いする。キャビンの感覚を掴みたかったからだ。

両ドアを閉めると、なるほど密室感が半端ない。隣が女性で良かったと心から思う。とはいえ、助手席の存在感は希薄で、スクエア形状に近くなったステアリングホイールを握ると、なるほどファイターなコクピット感覚だった。

冷静にコクピット周辺を見渡してみれば、そこに高級車的におもねったあつらえなど一切なく、どちらかというとレーシングカーを無理やりロードカーへと転用したような雰囲気さえ漂っている。物理スイッチが多く復活したのも嬉しい。ちなみに、このハンドルデザインは今後の市販車にも使われていくという。

マラネッロ産の新型“スーパーカー”(彼らはいわゆるスペチアーレモデルのことをそう呼んでいる)がフェラリスティの祭典「フィナーリ・モンディアーリ」にて華々しくデビューを飾った。その名は「F80」。その意味するところはもちろんフェラーリ80周年だ。生産が始まるのは2025年末だが、限定799台を2027年いっぱいにかけて作り続ける。その生産最終年が80周年アニバーサリーとなる、というわけ。

価格は驚愕の約5.9億円以上

いい意味で色々と“開いた口が塞がらない”クルマだったが、最も驚かされたのは価格。なんと360万ユーロ(日本円で約5.9億円。イタリア国内価格でVAT含む。すでに全量がアロケーション済み)以上。ハイパーカーインフレは止まるところを知らないようだ。

電気モーター×2のフロントeアクスルに3L 120度V6+IHI製電動ツインターボ+1モーターに8速DCTと2.28kWhバッテリーというハイブリッドパワートレインを積みこんだ。そのシステム総合の最高出力は1200psで乾燥車両重量が1525kgだから、パワーウェイトレシオは1.27kg/psになる。ちなみにEV走行はできない。

0-100km/h加速は2.15秒、0-200km/h加速5.75秒を誇る。最高速度は350km/h(リミッター作動)。また200-0km/h減速98m、100-0km/h減速28mと、その加減速スペックはもちろんマラネッロ史上最強のロードカーだ。エアロダイナミクス性能も秀でており、250km/h走行時にフロントで最大460kg、リア590kgで、合わせて1050kgものダウンフォースを得る。

もっとも、そんな数字を羅列しなくても、そのパフォーマンスを決定的に知る方法がある。フィオラノテストトラックでのラップタイムだ。なんと1分15秒3。「ラ フェラーリ」よりも4秒以上速く、「SF90XX」よりもまだ速い、というか、ほとんどスリックタイヤを履いたV8ミドシップのレーシングカー級のタイムだ。

V6の搭載はマラネッロの“理”にかなっている

ついにF80が姿を現した。上半身はシンプルこの上なく、下半身は空力モンスター。「F40」のモチーフもあれば、最新モデル「12チリンドリ(ドーディチ・チリンドリ)」風のマスクも目立っている(ちょっと無理やりっぽいけれど!)。リアからの眺めはまるでロボットだ。さらにキャビンの小ささとAピラーの傾斜、それゆえのサイドショルダーの大きさもユニークだ。明らかに“次世代カスタマー”を意識した空力デザインである。

個人的に感動したのはベアシャシー=ボディカウルのない状態、だった。ほとんど神々しいまでに美しい。まるでF1マシンのようなバスタブとアンダーシャシーに、前後のパワートレインは素晴らしくコンパクトにまとめられ、できる限り低い位置に配された。なかでもフロントeアクスルシステムは「SF90」用に比べても相当にコンパクトだったのが印象的。モーター含め自社で開発したからこそ可能になった小ささである。

アクティブサスペンションシステムは、マルチマティック社との共同開発品。目立っていたのは前後サスペンションのアッパーアームで、最近流行りの3Dメタルプリンター製だ。

心臓部がV6ツインターボであることを否定的に思うファンもいるだろう。もちろんマラネッロにとってアイコニックなエンジンはV12であり、それを積むこと自体はコンセプトさえ変えればさほど難しいことではなかったはず(この車台には流石に無理だ)。

けれどもあえてV6にこだわった。それが今、最高のパフォーマンスを得る唯一の手法であったからだ。同時にル・マン24時間レースを制したWECマシンの「499P」はもちろん、F1マシンも今やV6である。そうなれば499Pと同じ動力アーキテクチャーをロードカーに転用することは、レースの世界でブランド力を培ってきたマラネッロの“理”にかなっているというわけだった。

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