ハイソカーブームの大元はセリカXXにあり
トヨタの元祖スペシャルティカーとして、1970年に登場したのが「セリカ」です。初代はフルモデルチェンジを迎えるまでの約7年間で約41万台も生産されたほど大ヒット。その後、1977年に2代目へとフルモデルチェンジされ、そこから派生する形で1978年に「セリカXX」が登場します。その後に登場した「ソアラ」の源流だったはずなのに、あまりヒットしなかった不遇の初代セリカXX。「セリカ」シリーズとしても決して人気とはいえなかった、貴重な現存車を紹介します。
廃業したカーショップの倉庫で眠っていた希少車
オーナーの馬場博文さんはもともと、7年ほど前に手に入れた1967年式のトヨタ「コロナ」を所有していたそうだが、約2年前に、今回紹介するトヨタ初代「セリカXX」の話が舞い込んできたのだった。
「知人から、潰れたクルマ屋の倉庫に車両が残っているという連絡をもらったんです。でも、ライトがチラリと見える程度で、荷物が置かれたりしていて車種が判別できませんでした。いざその車両を確認しに行ったら、セリカXXだと分かったのです。私が20歳の頃に発売された車種で、当時はすごく憧れたけど、高すぎて購入できない車両でした」
このままだとスクラップになってしまう。そんな危機感と当時抱いた憧れの念が重なり、馬場さんはコロナと合わせてこのセリカXXを所有することを決めたのだった。しかし、長年放置されていたこともあり、車両のコンディションはボロボロの状態。それでも復活させ、この状態にまで修復したのだった。
内装はネズミが生息していた形跡が…
「ボディは錆あり、凹みありの状態でした。内装は破れやほつれなどは見当たらなかったのですが、ネズミが住んでいたような雰囲気ですごく汚かったのです。でも、それをなんとか復活させようと、できることは自分でやりつつも、プロにも修理を依頼して10カ月ほどかけて治しました」
外装に関しては、傷があった箇所を部分的に補修。しかし、外装色などは変更することなく当時のままを残した。内装は自分で外して、シートなどは高圧洗浄機を使って清掃。ボロボロだったトリムは採寸して復活。アルミホイールは、馬場さんいわく「海にいるフジツボが付いたようなボコボコな状態」だったものを、プロに頼んで研磨。その結果、ご覧の通りの美しさでセリカXXは復活を遂げたのだった。
「私は基本的に純正オリジナルにこだわりたいタイプなのです。だから、ホイールやシートなどもできるだけ改造をしたくない。そのため純正品を再生させるためのお金がかかってしまったけど、オリジナルのままで残せたので大満足です」
見た目だけではなく、エンジンが始動できる状態になるまでが大変だったと話してくれた馬場さん。錆だらけの燃料タンク内部は、切って中を洗浄して再生。オーバーヒートなども続いたため、ひとつひとつ原因を探っては修理を繰り返したことで、現在のコンディションまで復活させることができたのだ。
「修理してくれた業者さんが大変だったと思います。でも、この初代は滅多に見かけない希少車ですから、ずっと大切にしたいですね」
若かりし頃に憧れた車両を持つ喜び。今まで経験してきた苦労は、その喜びによって打ち消され、全てが良い思い出へとアップデートされているはずだ。
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