寝耳に水のファイナルバージョンの発表
2024年11月28日、TOYOTA GAZOO Racingは、2シータースポーツカーである「スープラ(GRスープラ)」の3Lモデルの一部改良と、特別仕様車「スープラ “A90 Final Edition”」を発売することを発表しました。2019年に復活したスープラですが、突然のファイナルバージョンの発表に戸惑う人も多いでしょう。GRスープラの究極のモデルについて紹介します。
2019年デビューから熟成を重ねてきた
TOYOTA GAZOO Racingは2024年11月28日、「スープラ(GRスープラ)」の3Lモデルの一部改良と、特別仕様車「スープラ “A90 Final Edition”」を発売することを発表した。一部改良したスープラの3Lモデルは2025年初以降発売予定。また特別仕様車スープラ “A90 Final Edition”はグローバルで300台限定での発売を予定していて、発売時期は欧州が2025年春で、日本は検討中となっている。
2019年5月に日本市場に導入された現行型GRスープラは、卓越したハンドリングや安定したコーナリング性能を実現するため、「ホイールベース」「トレッド」「重心高」の3つの要素にこだわりピュアスポーツカーとしての理想を追求したパッケージが特徴。
GRスープラのボディサイズは、全長4380mm×全幅1865mm×全高1295mmと、日本で販売された歴代スープラの中で非常にコンパクトかつワイド&ローのフォルムで、ホイールベースは2シーターと割り切ることにより、初代トヨタ「86」より100mm短い2470mm。加えて、ホイールベースとクルマの中心から左右のタイヤまでの距離であるトレッド比では1.55という、他の量産スポーツカーと比較してもトップレベルの小さい数値を達成した回頭性を発揮する。
さらにGRスープラは重心高にも徹底的にこだわり初代トヨタ 86よりもさらに低い重心高を実現。同時にコーナリング性能にとって重要な要素である前後の重量バランスについてもスポーツカーの理想である50:50を達成している。
GRスープラは3グレードを用意。トップグレードのRZには歴代スープラに採用されてきた3L直列6気筒エンジンを搭載。そしてSZ-RとSZグレードは、2L直列4気筒ターボエンジンを搭載。同じ2Lターボエンジンだが、SZ-Rは最高出力258ps、SZは197psと出力が異なり、トランスミッションは全車8速ATが組み合わされ、駆動方式はFR(後輪駆動)のみだった。
2020年4月にGRスープラは、一部改良を実施。最上級グレードのRZに搭載している3L直列6気筒ターボエンジンの最高出力を387psへと従来モデルより14%向上。さらに、フロント部にブレースを追加し、ボディ剛性の強化を図っている。またサスペンションを再チューニングすることで、コーナリング時の安定性を高めている。
2022年7月には一部改良を行い、シャシー性能をさらに熟成させ、運動性能に磨きをかけるとともに、3L直6エンジンを搭載したRZに待望の6速MT車を設定した。
3リッター直6モデルはさらに走りに磨きをかけた
今回の一部改良でスープラの3Lモデルは、市街地からワインディング、サーキットまで存分に楽しめるよう「さらなる一体感のある走り」を追求。安心・安全のためのブレーキ性能の向上をはじめ、ボディ、サスペンション、シャシー剛性の向上およびチューニングの最適化、空力性能の改善を施している。
一部改良のポイントとして、まずシャシーは、リア床下ブレース構造を強化することにより、ボディ剛性を高めて、ダイレクト感やグリップ感、コントロール性を向上させている。さらにEPS(電動パワーステアリング)の制御を最適化し、ダイレクト感のあるステアリングフィールを実現した。
サスペンションは、状況に応じて減衰力を調整する電子制御ダンパーの特性を見直しつつ、フロントスタビライザーを強化することで走行性能を向上させている。また前後スタビライザーブラケットにアルミ強化品を採用。またフロントコントロールアームに強化ゴムブッシュを、リアサブフレームに強化ゴムマウントを採用することでサスペンションとボディの一体感を高め、正確なハンドリングに貢献している。
ドライブトレインは、シャシーセッティングの変更にともない、アクティブディファレンシャルの制御を最適化。旋回中のアンダーステアを抑制し、ハンドリングを改善している。またブレーキはフロントに大径化したブレンボ製ディスクブレーキを採用し、制動性能を向上させている。
外観では、マットブラックのアルミホイールをはじめ、ダックテールタイプのカーボンリアスポイラーを採用。インテリアではドライバーシートにGRロゴ刺繍を施したアルカンターラ+本革表皮を使用。シートベルトに赤色を採用し、スポーティさを強調している。
1000万円超え必至の究極の特別仕様車
続いては、特別仕様車スープラ “A90 Final Edition”。あまりにもポイントが多いので絞って紹介する。サスペンションは、GRスープラ GT4が採用しているKW製サスペンションを採用。伸び側16段、縮み側12段の減衰力調整を備えてさまざまな使用状況に対応し、前後スタビライザーを強化することで限界性能を向上させている。
エンジンは吸気経路の見直しや低背圧触媒を採用することで、圧力損失を低減。同時にエンジン制御を最適化することで、最高出力は435ps、最大トルクを570Nmまで向上させている。エンジン性能の向上にともない冷却性能も向上。ラジエター冷却ファンを強化するとともに、サブラジエターを追加している。
タイヤには10mm拡幅したハイグリップタイヤのミシュラン パイロットスポーツ カップ2を採用。フロント19インチ、リア20インチの軽量ホイールの中には、前後にフローティング構造のドリルドディスクを収めている。さらに、フロントにはブレンボ社製19インチブレーキと高μブレーキパッドを採用し、高出力化に合わせて制動性能も強化されている。
外観は、カーボン製のフロントスポイラー、フロントカナードを採用。さらにGRスープラ GT4を彷彿させるスワンネック構造のカーボンリアウイングを装備することで、前後の空力バランス、ダウンフォース、ドラッグを最適化し、接地性とハンドリング性能を向上させている。
インテリアでは、シートパッドにアルカンターラ素材を使用したレカロ製カーボンフルバケットシート「RECARO Podium CF」を採用。走行性能の向上によりドライバーにかかるGが増加する状況においても、しっかりと体をホールドし、正確なドライビングをサポートしてくれる。
この他にもさまざまなチューニングやアイテムの追加がされている特別仕様車スープラ “A90 Final Edition”。価格もそれなりに高くなりそうだが、最終モデルということもあり争奪戦になることは必至だ。
また、このアナウンスによりGRスープラの中古車相場もビビッドに反応しそうだ。とくにMT車は一気に価格が高騰する可能性もあるので、注視したい。