バラマンディ釣りの伝説的なガイドに会いたい!
オーストラリア・ノーザンテリトリー州でトヨタ「ハイラックス」ベースのキャンピングカー、アポロ「キャンパーバン」をレンタルして、釣り人としてバラマンディの大物を狙う23日間の旅をレポート。仲間と男3人でフィッシングを満喫するという旅の前半は終了し、次の1週間はノーザンテリトリーの国立公園を一人旅して徐々に南下するプランです。ダリー・リバーへドライブし、伝説的なバラマンディ釣りのガイド、ペリー氏が営むキャンプ場にやって来ました。
サイトから2分で釣り場に行ける美しいキャンプ場
アウトバックを数時間ドライブして、ようやくペリーズに到着。オ
「ここはどうかしら。たっぷりと日陰もあるし」
「最高ですね。ここにします」
チェックインしているクルマは、ほかに2台だけだ。大きな木がやさしく木陰を作っている。ゆったりとくつろげる環境も気に入った。思わず深呼吸をしていると、離れたところに、一輪車を押して作業をしている年配の男性が見えた。
「彼がディックよ」
これだけ広いスペースを維持するには、使用人も必要だろう。ぼくは手を挙げて、ディックに挨拶した。
「ところで、川はどこにあるんですか」
えんえんとジャングルのダート路を走ってきた。とても川が近いとは思えなかった。
「こっちよ」
案内されてキャンプサイトの端から見下ろすと、そこには美しいダリー・リバーが広がっていた。そして、階段の下には小さなピア(桟橋)がある。なんと、ぼくのキャンプサイトから2分で釣り場にエントリーできるのだ。こんなすごいことがあっていいのか!
しかも、たまたま眼下で釣りをしていた船がバラマンディをヒットさせたではないか! ビッグサイズではないが、60cmはありそうだ。これまでの釣りの経験上、人が見ている目の前で魚が釣れることは滅多にない。それほどまでに、この川はいいポイントなのだ。きっとウヨウヨ魚がいるのだろう。ぼくは70cm、いや80cmのバラマンディを抱いている自分の姿を思い描いた。
ペリーさんの正体は……?
「アポロ号」をキャンプ仕様にセットし、ぼくはキャロルのいる事務所兼食堂に戻った。
「2泊しようと思います」
ぼくが支払いをしようとすると、「何泊でもいいのよ。帰るときに精算してね。釣りもするんでしょ」という。
「もちろん、釣りもお願いします。今、ペリーは川に出ているんですか」
きっとお客さんをガイドしているのだろうと思って聞くと、「この人が主人よ」といって、隅にしょんぼりと座っている年配を指した。
え!? 彼はディックじゃないか!
「え、ディックがご主人? ペリーさんはどこですか?」
思わず聞くと、「ペリーは私たちの苗字よ」という。なんということだ、あの老人が伝説のガイドなのか!
その後、ディックのタックルショップでルアーを2つ買い、翌朝、8時に出船することで話がまとまった。どうやら、伝説のガイドとサシで釣りをすることになりそうだ。
30年かけて一帯をきれいに開拓
翌朝、朝食を済ませ、タックルの準備を整えていると、ディックがぼくのサイトの前にクルマを止めた。そして、乗れ、と合図をしている。
「そこからエントリーするんじゃないんですか」目の前の階段を指して言うと、「もっといいポイントがある」という。
ランクルに乗り込んで林の中を進むと、ワラビーがぴょんぴょん跳ねている。こんなにたくさんいるものなのか、と驚くばかりだ。
「30年前にここに来て、きれいに開拓したんだよ」
木陰を作っているマンゴーやバナナなどの木も、ほとんどは彼が植えたものだという。これだけの土地を維持するのは、大変な作業が必要だ。
しばらく走ると、湖というか、沼というか、とにかく水辺に出た。ノーザンテリトリーの乾季に現れるビラボング(三日月湖の一種)だった。
「ずっと昔は川の一部だったんだ」
ボートの用意をしながら、ディックが説明してくれる。
静かな水面にキャストをする。彼のアドバイスでディープダイバーを投げるが、すぐに藻に絡んでしまう。ポッパーに変えて誘うが、魚は反応しない。
その後、トローリングに切り替えて2時間ほど釣りをしたが、一度もヒットはなかった。
3泊で満喫した釣果ははたして……?
キャンプ場の釣り人は忙しい。散歩をして、朝食を食べて、釣りをして、昼飯を食べて、皿を洗い、洗濯をして、プールに入って、ビールを飲み、夕方、また釣りをして、夕食の準備をする。あっという間に1日が終わってしまう。
気がつくと、ペリーズ(Perry’s)に3泊もしてしまった。ダリー・リバーにも出たが、魚は1尾も釣れない。いや、伝説のガイドがロング・トムというダツのチビを1尾釣っただけだった。これなら釣らないほうがマシなような気もするが……。
隣のサイトに滞在するヴァーンとクリスティーンのカップルとも仲良くなった。
「どこに住んでいるんですか」と聞くと、「道の上さ(Live on the road)」。家は売ってしまった。キャンピングカーで暮らすようになって、もう4年になるという。ペリーズにも、あと1カ月以上、滞在するというからスケールが違う。
ちなみにビールの保冷ホルダーがオールブラックスだったので、「なんで?」と聞くと、「私たちはキウイ(Kiwi:ニュージーランド人)だよ」と笑った。
もっとここにいたいが、行かなくてはならない。
キャロルに精算を頼むと、「3泊よね? それから、釣りが3回、洗濯が1回、ルアーが2個、フローズンマンゴーがひとつ……」と電卓を睨んで計算をしていたが、「300ドルね」とやけにキリのいい数字だった。
また、来年、ここに来たい! 伝説のガイドと、今度こそ大物を釣りたい!
ぼくは心の底から、そう思った。
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