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驚くのはコンセプトカーだけじゃない! ジャガー・ランドローバーが自動車業界初の新しいシートを開発…1シートあたり44キロ以上のCO2e排出量を削減

リサイクルされた素材は高性能を維持しながら、1シートあたり44kg以上のCO2e排出量を削減し、スマートフォン約3000台分の充電に相当するCO2を削減する

自動車業界初の新しいシートフォームを開発

ジャガー・ランドローバー(以下JLR)は、クローズドループリサイクルを可能とする素材を使用した自動車業界初の新しいシートを開発したと発表しました。これはJLRの循環型社会研究所によるもので、同研究所は高級車の素材を繰り返し再利用およびリサイクルすることで排出量を削減かつ廃棄物をなくし、供給の安定性を高めることを目標としています。この取り組みについて紹介します。

1シートあたり44キロ以上のCO2e排出量を削減

2024年11月27日、JLRは使用済み車両から回収したポリウレタン製シートを新しいシートで再利用することに成功し、クローズドループリサイクルの分野で大きな技術的進歩を遂げたと発表した。

業界パートナーのダウ社のモビリティサイエンスチームと自動車用シートの世界的リーダーであるアディエント社との共同開発により、クローズドループリサイクルが自動車生産に初めて採用された。JLRは現在、この方法を同社の全生産工程で採用し、2025年初頭に量産前の車両で試験的に使用することを目指している。

ポリウレタンはリサイクルが難しいことで知られており、耐久性を重視して設計されているため、最終的には埋め立て地行きとなり、数世代にわたって環境中に残留する可能性がある。JLRは、クローズドループリサイクルのサプライチェーンを構築することで排出量を削減し、廃棄物をなくし、自社の車両に低炭素シートを確実に供給できるようになる。

リサイクルされた素材は高性能を維持しながら、1シートあたり44kg以上のCO2e排出量を削減し、スマートフォン約3000台分の充電に相当するCO2を削減する。

JLRの循環型社会研究所が課題解決を目指す

この成果は、廃棄物の削減と高級車のリサイクル可能性の向上を目的とした、イギリス・ゲイドンにあるJLRの循環型社会研究所での継続的な研究と試験の成果である。従来、自動車は耐用年数が過ぎた後に解体し、素材を容易に分離することはあまり考慮されてこなかった。

この循環型社会研究所は各部門から構成される学際的なチームを結集することで、課題解決を目指している。チームはサプライヤーや素材の専門家と緊密に協力しながら、実践を通して学ぶ方法で車両分解が行われた。研究所から得られたデータは、ガラス、スチール、アルミニウム、ポリマーなどの素材をサプライチェーンに戻して再利用し、新車の生産に活用する技術的可能性をテストする際に直接活用される。

たとえば、フロントバンパーの初期テストではポリマーの使用量を減らしても同等の品質と性能を達成できることが判明し、1つのモデルで17万7500kgのCO2を削減して56万ポンド(約1億648万円)のコストを削減することができた。このアプローチにより、JLRは2025年から低炭素バンパーを新型車に搭載できるようになる。

エレン・マッカーサー財団ネットワークのパートナーに

JLRは、アルミニウム製ボディパネルの産業廃棄物をサプライヤーにリサイクルし、新しいボディパネルに再利用するという画期的なプロジェクトで受賞歴を誇り、すでにクローズドループの成功を収めている。

JLRは2023年よりエレン・マッカーサー財団ネットワークのパートナーとなり、産業転換を含め、事業活動のあらゆる側面に循環経済を適用している。産業転換では、数千台の機器を改修し、再配置することで、能力要件、エネルギー効率、CO2e排出量のバランスを取る取り組みが行われている。これは、完全な電気自動車の未来に備えるための取り組みである。

AMWノミカタ

クローズドループとは「循環型経済」を意味し、主に消費された製品を新たな資源として捉え再利用する仕組みである。新たな素材を加えず「閉じられた輪」の中で製造が循環することからそのように呼ばれている。使用済みポリウレタンは一般的には熱プレスで成型されてほかの製品として再利用されたり、燃料としてエネルギーに変換されたりするが、今回はおそらく粉砕したポリウレタンを分解剤と加熱し元の原料に戻す「ケミカルリサイクリング」の方法を確立したのだと思われる。

JLRの循環型社会研究所の役割は大きく、フロントバンパーの製造の例からも、品質とコストとCO2削減を同時に達成できる好例をJRLは確立することができた。今回のシートに採用される再生ポリウレタンフォームも同じくJLRを経済的にサポートし、持続可能なモビリティを推進する大きな力になるのではないだろうか。

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