カメラを持っての飛び込み取材は楽しい!
世界の自動車博物館を巡ることをライフワークとしている原田 了氏。2024年夏の旅では北米の自動車博物館を取材することができました。第4弾は、ちょっと趣向を変えて、博物館のようで博物館でない、まるで大喜利のような施設を紹介してみます、ベンベン。
博物館に行く道中で見かけた施設を訪問
まず1軒目は前回訪ねた歴史博物館にクルマが展示されてなくて受付で、近くに自動車博物館がないか訊ねて紹介された経緯を紹介した「トラッカー・パーキング – ラッセル・トラベルセンター(Trucker Parking -Russells Travel Center)」。そしてもう1軒は翌日、シャパラルのレーシングカーを展示してあることで有名で、今回のツアーの目玉のひとつだった「石油博物館(Petroleum Museum – Chapparal Cars)」を訪ねた後、次の目的地である博物館である「米国トヨタ自動車博物館(Toyota USA Automobile Museum: TOYOTA EXPERIENCE CENTER)」に向かって走っている途中で見かけた「サークルHオートセールスINC. “THE HOUSE OF HOTRODS”(CIRCLE H AUTO SALES INC.“THE HOUSE OF HOTRODS”)」。
ラッセル・トラベルセンターは一応博物館を名乗っていたが出入り自由で観覧も無料、言ってみればクラシックカーの展示コーナーだった。とはいえ展示車両は20台を超え、しかも1925年式の「Fuel Delivery Tanker」(ガソリン輸送用のタンカー)など戦前のクルマもあったが、多くは1960年代から1970年代にかけてのクルマで、排気ガスによる公害問題やオイルショックによるガソリン不足が社会問題となる以前の、まさにイケイケでアメリカ車が我が世の春を謳歌していた時代のクルマたち。少し狭いスペースに多くを詰め込み過ぎた感もあり、また展示エリア全体が少し華やかさに欠けていたのが残念だったが、本格的な博物館に引けを取らない展示場だった。
ヘリテージアメリカンの品揃えが半端なかった!
その一方で翌日訪ねたサークルHオートセールスは、その名が示しているように、明らかにクルマの販売店、もう少し詳しく言うなら中古車販売店だ。しかしその「品揃え」が半端なかった。じつは高速道路を走っていて左手、つまり反対車線の向こう側にデカい看板が立っていて、その下に旧い「マスタング」が2台、そして看板に連なる駐車場に「マーキュリー」や「ベルエア」、「インパラ」といった旧車が並んでいたのを発見。約1マイル(約1.6km)先の出口でI20(インターステーツ=州間連絡道路20号線)を降り、アンダーパスで折り返して側道を引き返す。
こんな場合にアメリカの、インターステーツも含めて高速道路は便利。基本的に通行料は無料だから料金所を設置する必要がなく、結果的にインターチェンジ=出入口の間隔が短く、多くの場合側道も整備されているから、引き返すのも容易だ。こうして辿り着いたサークルHオートセールスには旧車だけでなく、チョップドルーフのクルマも少なくなかった。またアメリカではベストセラーとなっているピックアップも多く在庫していた。
正直言ってこれまでは、その世界にはあまり見向きもせずに育ってきたから知識もデータも多くはないのだけれど、1941年式フォードの2ドアクーペをベースにピラーを切ってルーフを下げたチョップトップの格好良さにはひと目惚れしてしまった。またGMC「シエラ」の後輪ダブルタイヤの迫力も好感だった。
もちろん現実のクルマとしての評価ではなく、コレクション的な評価としては100点満点のレベル(さまざまな理由から自分で手に入れるならミニチュアカーにしか可能性がないのが残念だが)となっている。それはともかく彼の地でもクラシックカーの愛好者が増加しているのは事実のようで、急遽立ち寄ったこの日は平日だったにもかかわらず、何組ものお客さん(購入希望者)が店員から説明を受けていた。
そんな状況の中でカメラを持って飛び込み取材したのは、1970年代に都内環八沿いにあったスーパーカーのディーラーにカメラ小僧が駆けつけたようなもの。もっとも時代が半世紀ほど進み、カメラ小僧が六十路の坂を一気に駆け下りてきた爺さんジャーナリストとなった違いはあるけれども、クルマが魅力的なことは古今東西を問わず共通していることを再確認した次第だ。