いろいろとあった2021年を振り返る
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第48回は「2021年10月末からの稼働状態」お届けします。
業界人に初お披露目したゴブジ号
2021年オータムのゴブジ号は、ずいぶんとオーサムだった……みたいなこと、何度記しただろう? エンジンルームのオイルじんわり噴出問題を除けば何も問題らしき問題はなく、やたらと好調で……なんてことも、何度記しただろう? おかげで調子に乗ってあっちこっちに乗って出て……みたいなことも、何度か記した気がする。しつこいっちゃしつこいし粘着質っちゃ粘着質なんだけど、まぁ僕はそういう性格だし、何よりそれが真実だったのだ。フツーのクルマだったら何てことなく当たり前のことだけど、何せゴブジ号は1970年生まれ。当たり前のことが当たり前にできなくて当たり前なのだ。……ん? わかりにくいか。まぁいーや。
ともあれ、どれだけあっちこっちに乗っていったのか、報告済みの2021年10月16日〜17日の“プレミアムワールド・モーターフェア in 静岡”での展示の後から真冬に突入するまでの稼働状況をザッとお伝えすると……。
10月27日、日産「ノート」系試乗会。まぁ都内で行われた試乗会だからたいした距離は走ってないのだけど、初めてメーカー系のイベントに乗っていき、初めて同業諸氏だとか媒体の編集諸氏だとかカメラマン諸氏といった、言ってみれば業界関係の顔なじみな皆さんが集まる公式的な場に乗っていった記念すべき日、だ。そのわりに写真を撮ってなかった自分のマヌケさに呆れかえるけど、さすがはチンクエチェント。こういう場でもニコニコと迎えてもらえるキャラクターは、ジャイアンツ時代の長嶋茂雄さんと同じく永遠に不滅だと思う。
クルマのプロでさえおもわず訊いてしまう質問
10月28日、BMW「4シリーズ」試乗会。これもまた都内で行われた試乗会なのだけど、やたらと慌ただしい日でヒット&アウェイみたいにして会場を出ちゃったから、やっぱり写真ナシ。マヌケである。こうした試乗会の現場は専門的なプロの手によって運営されることがほとんどで、僕もずいぶん長いことこの業界にいるから、大抵のプロたちは顔見知りだったりする。彼らは当然ながらクルマが好きでそうした仕事に従事してるのだけど、ここで迎えてくれたプロはチンクエチェントを間近で見るのが初めてだったらしく、仕事の合間にあれこれ質問をしてくれた。
彼はモータースポーツの分野ではベテランともいえる人だけど、それでも最初に出てきた質問が“何キロぐらい出るんですか?”、“燃費はどれくらいですか?”、“壊れますか?”という、ごくごくフツーの人と同じようなモノだったのが面白かった。クルマは壊れるものだって思ってるから最後のひとつはともかくとして、考えてみたら最初のふたつは僕だって訊いちゃうことがあるもんね。思わぬところで“クルマ好きの性(さが)”みたいなものに気がついて、だから面白かったのだ。
10月29〜30日、軽井沢フィアット・ピクニック参加。これはすでにレポート済みだから、Vol.46を見てみてちょーだいまし。
>>>新型600eの情報満載! 11月29日発売のフィアット&アバルト専門誌「FIAT & ABARTH fan-BOOK」vol.09の予約はこちら(外部サイト)
チンクエチェントに触れて破顔
2021年11月6〜7日、ホンダ「ヴェゼル」試乗会。これは日本カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員を対象とした、最終選考前の確認試乗会のようなモノ。いや、こう見えて、実は僕もこの権威ある賞典の選考委員の末席に加えていただいてるのだ。素行が悪いからいつクビになるかわからないのだけどね。ともあれ、今回の試乗は栃木にあるホンダのテストコースで行われるということで、前泊である。その晩、僕が何のクルマで行くのか知らなかったからか、仕事の関係で遅めの到着となった僕がゴブジ号で栃木まで走っていったことに、広報部の皆さんは驚いたり喜んだりしてくれた。まぁフツーはカタギのクルマで行くもんね、こういう場には。でも僕は隙あらば乗っていっちゃう。
喜んでくれたのが嬉しかったから、翌日のヴェゼルの試乗が終わって解散になった後、広報部のスタッフさん男性ひとり女性ひとりにゴブジ号の試乗をしてもらった。走らせるだけなら簡単だけど、綺麗に動かすにはそれなりのコツがあることにまた驚きつつ、それでも未知のクルマを走らせることを「遅い(笑)」「難しい(笑)」と楽しんでもらえたようだ。そりゃ新しいクルマにしか乗ってないわけだから新鮮な体験だったと思うけど、とにかくチンクエチェントに触れて破顔といえるほどの笑顔を見せてくれたことが、僕はとにかく嬉しかった。
友人から車体の小ささに感動される
2021年11月8日と11月9日、それぞれ某クルマ雑誌のロケ。どちらの編集担当氏も親しくて、それ以前のロケでゴブジ号を見てるので、特筆すべきことは何もなし。どちらの編集担当氏からも異口同音に“最近は止まってないんですか?”と訊ねられて笑うしかなかったこと、ぐらいか。
11月13日、地元・埼玉の友人宅へ。ぶっちゃけ、1泊で宅飲みに出掛けたわけで、集まった友人のほとんどがすでにゴブジ号を見てるのだけど、この日は友人宅の駐車場で車体が小さいことにあらためて感動される。いわく、“おかげでもう1台停められるじゃん”。愛らしい姿も好評で、異口同音に“かわいい”、“かわいい”と老人エリアに片足を突っ込んでるオッサンが喜んでる姿は、ちょっとばかり不気味ではあった。
ゴブジ号はいつでも貸します!
11月24日、日本カー・オブ・ザ・イヤー10ベストカー試乗会のために。袖ヶ浦フォレストレースウェイへ。栄えある“今年の1台”を決めるための最終確認のための試乗会という場所に、栄えある“昔の1台”で行ってきた。知人からは“空気の読めないクルマで来るなよなぁ”と言われたが、その眼差しはとても優しい。10メーカー/ブランドの広報担当諸氏の多くも、“かわいい”、“雰囲気ありますねぇ”、“いいなぁ……”と、あたたかく迎えてくれた。同業諸氏のほとんども。中には空気を読まない僕に対してよく思ってない人もいたかもしれないけど、もしそうだったならアイアムソーリー。選考はとことんマジメに考え抜いて、それは当然。だけど、そうじゃない部分はもっとゆるーく愉快にやってく方が人生楽しいよ、きっと。ちょっとでも興味があるならいつだってステアリングを委ねるから、乗ってみてよ、ぜひぜひ。いろいろ気持ちの中で変わるモノがあるはずだから。
……っていうか、メディアの皆っすわーん、ゴブジ号はチンクエチェント博物館のデモカーでもあるので、いつでも声をかけてくださいねー! 喜んで貸し出ししますゆえ。
>>>新型600eの情報満載! 11月29日発売のフィアット&アバルト専門誌「FIAT & ABARTH fan-BOOK」vol.09の予約はこちら(外部サイト)
チンクエチェントでカウンターステア!?
2021年11月30日、マツダ試乗会。目黒の自宅を出発してから台場の会場までの間に何かを踏みつけたようで、見事にパンク。この日はウネウネした道を走りたい気分だったから首都高速2号線に入ったのだけど、途中で、“ん? 左のリア、ちょっとおかしくないか……?”と。停めてチェックしようにも、そこは首都高速。そんなことができる場所はどこにもない。軽い疑念は徐々に確信へと変わっていき、“えっ? このスピードで?”ってなぐらいに速度を落としてるのにジワジワムズムズとリアが落ち着きを失っていき、あろうことかスイーッとスライドしちゃったりもした。まさかチンクエチェントでカウンターステアをあてることになるなんて……と思いつつ、降り口がなかったから仕方なく様子を探りながら慎重に台場まで走り、まだタイヤの中にエアが残ってるのをいいことに試乗会場のホテルまでノタノタ走って駐車場にノタノタと飛び込んで(?)いく。おかげで試乗の時間には間に合ったのだけど……。
とりあえず試乗しないと原稿も書くに書けないわけだから気掛かりではあるけどデューティを先に済ませ、やることやって速攻でゴブジ号を停めたところに戻る。フロントフードの中の最も前側にあるスペアタイヤを取り出し、右サイドの奥の方にある純正ジャッキを取り出して、タイヤ交換を試みる。リフト式の純正ジャッキをかまそうとしたら……動かないじゃん! 完全に固着しちゃってて、何をどうやってもダメ。昔のままの未使用品っぽいのだけど、こりゃもうまったくお手上げ……。
クラシケサービス・ネットワークのありがたみを知る
そこで頼りにするのはチンクエチェント博物館の深津館長。電話をすると、“そこからだとガレーヂ伊太利屋さんが近いから、行ってもらうように連絡を入れますよ”と速攻で手配をしてくれる。こういうとき、チンクエチェント博物館のクラシケサービス・ネットワークのありがたみをヒシヒシと感じるのだ。どこで故障してくれちゃってもぜんぜんオッケ!……なわきゃないけど、そのくらいの安心感がある。20分くらい経ったらガレーヂ伊太利亜屋のメカさんが来てくれて、ちゃんと動くリフト式のジャッキでパッパとタイヤを交換してくださり、一件落着。おかげで帰り道にはスペアタイヤがない、ということ以外は問題がなくなった。……助かったー!
12月3日、Vol.44のメイン写真がそうなのだけど、某『LE VOLANT』誌の大型SUVの撮影&試乗で都内。あらためて小ささに感動したことは、そこでも記したとおり。小ささってホントに武器なのだよな、とは今でもゴブジ号に乗るたびに感じることなのだ。
そして翌12月4日〜5日、毎年恒例「あいちトリコローレ」というイベントでトークをするために、愛知県の大府市へ。また例によって仕事の関係で早い時間には出発できず、到着は運営スタッフたちとの夕飯&一杯がスタートする時間を過ぎてしまった。いつもながら申し訳ない!……と思う気持ちはあるにはあるのだけど、いや、実際はそれどころじゃなかった。いつもどおりサービスエリア/パーキングエリアにふたつおきぐらいで入り、オイルの具合をチェックしながら向かっていたのだけど、このところ下道を走っていても感覚的に“……増えてる?”と思えていたオイルのじんわり噴出が、高速道路を走行する負荷で目に見えるカタチになって現れてきたのである。エンジンフードのルーバーから黒い涙が流れてきて、それを発見したときには焦ったの焦らないのって! いや、焦ったのだけどね。
走ってるときのフィーリングには変化がないので、深津館長と相談した上でオイルをちょいちょい継ぎ足しながら愛知まで走っていくことにして、あとはどうするか現地で相談しましょ、という流れになったわけだけど、心臓によくないよねぇ……。さすがにこういう状態が続くようだとデモカーとして貸し出すのもちょっと難しい。そろそろタイミングが来たのかも……というところで、以下、次回!
■協力:チンクエチェント博物館
https://museo500.com
■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら
>>>新型600eの情報満載! 11月29日発売のフィアット&アバルト専門誌「FIAT & ABARTH fan-BOOK」vol.09の予約はこちら(外部サイト)