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注目度はスーパーカー並み! 宇宙船のような「ネコ目」と呼ばれたシトロエン「DS」ならば、500万円で旧車泥沼生活が送れるかも!?

2万ポンド~3万ポンド(邦貨換算約380万円〜約570万円)で現在も販売中のシトロエン「DS20 パラス」(C)Bonhams

フランスの象徴、シトロエン DSが英国内オークションに登場

2024年9月、英国の名門「ボナムズ」社が開いた「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia 2024」オークション。今回紹介するのはフランス車ながら、イギリスでも絶大な人気を誇るシトロエン「DS20 パラス」。このモデルとしては最終期に属する、1973年式のDS20 ベルリーヌです。

自動車史上屈指のマスターピース、シトロエン DSシリーズとは?

シトロエン「DS」シリーズは、誰もが認める自動車史上屈指の名作。これに匹敵する存在感を持つクルマは、おそらく皆無に等しいだろう。

1955年のパリ・サロンにて、文字どおりセンセーショナルなデビューを果たしたこの未来的モデルは、開幕日にパリの会場を訪れたクルマ好きたちを熱狂させ、ショー初日だけで1万2000台ものオーダーを受けたといわれている。

昔日の絵本やマンガに登場する宇宙船を思わせるようなレトロフューチャー的なスタイリングは、イタリア出身のスタイリスト兼芸術家、フラミニオ・ベルトーニが手がけたものだが、その革命は表面的なものにとどまらなかった。

革新的なスタイリングは、テクノロジーやメカニズムの進歩に裏打ちされたものであり、それはのちのシトロエンの後継車に受け継がれることになるほか、ロールス・ロイスやローバーなど外国の高級車にも絶大な影響を与えることになる。

同様に称賛されるシトロエンの名作「トラクシオン アヴァン」系の後継モデルとして開発されたシトロエン DSは、当初は空冷のフラット6エンジンを搭載する予定もあったそうだが、結局はトラクシオン アヴァン時代から引き継いだ直列4気筒OHV 3ベアリングに軌道修正。

排気量は1911ccの「DS19」からスタートし、中途で新世代の4気筒OHV 5ベアリングに移行。1975年に生産を終えるころには、2347ccの「DS23」まで進化を遂げていた。

全世界のファンを魅了したDS

そしてDSと廉価版の「ID」は、流線型のボディやシングルスポークのステアリングホイール、「プッシュボタン式」と呼ばれるゴムボール状のブレーキペダル、油圧アシストステアリング、油圧によって調整可能な車高、セミオートマチック式「Cマティック」ギアボックスなど、まぎれもないフランスの未来像であり、当時の購入者のみならず全世界のファンを魅了したのだ。

ちなみに1967年モデル以降のDSシリーズは、日本のファンの間では「ネコ目」と呼ばれるヘッドライトを持つマイナーチェンジ版に移行した。今回のオークション出品車も、この「ネコ目」時代最終期の1台である。

フランス本国生産のシトロエン DS

この時代のシトロエンは英国ロンドン近郊スラウにも工場を設けて、大規模な生産を行っていた。しかし、このほどボナムズ「The Beaulieu Sale Collectors’ Motor Cars & Automobilia2024」オークションに出品されたDS20 パラスは、2000年代初頭にフランスから英国に輸入されたもので、良好なメンテナンス履歴が残された1台である。

ハイドロニューマティックを利用したセミオートマチック・トランスミッション「Cマティック」+左ハンドル仕様のシトロエン DS20パラスは、「グリ・パラディウム」と名づけられたグレーに「タバク(タバコ色)」の本革インテリアという、とてもクラシックでエレガント、そしていかにもフランス高級車的なカラーコンビネーションで仕上げられている。

また、1970年以降の全面に樹脂製ソフトパッドを巻いた純正ステアリングホイールは、同じシングルスポークでも、よりエレガントな1970年以前の純正品に交換されている。

今回の出品者でもある現オーナーが4年にわたって所有する間に、このDS20は愛情を込めてメンテナンスされ、1万5000ポンド以上に相当する整備をシトロエンのスペシャリストに依頼したとのこと。その際の請求書は、ドキュメントファイルとして車両に添付されている。その成果をアピールするためか、2023年にはまったく問題なく英国とフランスをツーリングしたという報告が添えられていた。

メーターは1周している可能性が高い

また、イギリスに輸入されてからの車両履歴は添付された「V5C」ドキュメントに記されているものの、それ以前のヒストリーは不明。オドメーターは約5万9000kmを示しているが、少なくとも1周は「時計回り」をしている可能性が高いとのことである。

ボナムズ社の公式オークションカタログでは、あちこちに小さな瑕疵があることを正直に認めているいっぽうで「素直なクルマで、見た目も乗り心地もよく、走りも美しい。魅力的なカラーコンビネーションを誇る素敵な例は、幸運な次のオーナーに何年もドライビングを楽しんでいただけることでしょう」と主張。そして2万ポンド~3万ポンド(邦貨換算約380万円〜約570万円)という、昨今の市況におけるこのモデルとしては比較的リーズナブルなエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが当日の競売では、売り主およびオークショネア側が予測していた以上にビッド(入札)が伸びなかったようで、結局リザーヴ(最低落札価格)にも届くことなく流札。オークション終了後は、ボナムズ社営業部門によって継続販売とされているようだ。

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